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23話 ドラゴンさん、話を受ける

 放課後。瑠華達は雫に言われた通り教室に残り、雫の話を待った。


「いやごめんね、時間取らせて」


「構わん…と言いたいところじゃが、手短に頼む」


「あはは…じゃあ端的に言うね―――」




 ――――スポンサーに興味有る?


「スポンサー?」


 聞く事は多くあるが、その当事者になるなど想像すら出来ない言葉。それが雫の口から出てきた事に瑠華は首を傾げるが、対して奏は何処か納得した様な表情を浮かべていた。


「しずちゃん私達の配信見たんだね?」


「うん。それでかなっち達のチャンネル伸びそうだなぁって思ったから、少し話を通したんだ。勿論無理にとは言わないよ」


「成程ねぇ…」


「……のう。先程から話が見えんのじゃが?」


 自分の知らぬうちに話が進んでしまい、少々その言葉に不機嫌さが滲んでしまう。


「あれ、言ってなかったっけ?」


「何も聞いとらん」


「あー…まぁ簡単に言うと、しずちゃんってお金持ちなんだ」


「すっごい省いたね!?」


「だって瑠華ちゃんに説明するならそれが一番分かりやすいかなって」


「えぇ…まぁ時間無いしそれでいいや。兎も角スポンサーの話を続けようか」


 少々納得はいかないものの、時間は有限なのでそのまま話を進めることにした。


「スポンサーって言っても、何すればいいの?」


「何か強制するような事は無いよ。ただ()()を使ってくれれば」


「……つまり雫の生家は商家であり、妾達に製品とやらを配信に流して宣伝を手伝って欲しいと?」


「おー、正解!」


 雫の両親は【八車重工業】と呼ばれる会社を経営しており、現在はダンジョン向けの武器防具の生産、販売を行う大手である。なので奏のお金持ちという評価は、あながち間違っていなかったりする。


「瑠華っちは着物似合いそうってコメントされてたから、一応用意はしてみたけど……」


 そう言って雫は目線を瑠華ではなく奏へと向けた。するとその眼差しに込められた意味を理解した奏が、小さく首を横に振る。それを確認して、雫は予想通りとでも言う様に苦笑いを浮かべた。


「それはかなっちが瑠華っちに買ってあげたいと思うから、私からの提供は武器にしようかなって」


「武器か」


「かなっちは今の実力的に性能高すぎるやつは駄目だろうけど、瑠華っちは今の武器合ってなさそうだからね。結構良い奴用意しておいたよ」


「ふむ…」


 正直武器が壊れた場合は爪を使おうと思っていたが、配信するのであればその戦い方は避けるべきだろう。であれば、性能の良い武器を提供して貰えるのは純粋に有難いと思える。


「ねぇねえ瑠華ちゃん」


「なんじゃ?」


「私って、あとどれくらい頑張ったら今の武器ランク卒業出来ると思う?」


 奏自身も、自分の実力があまり高くない事は自覚している。だからこそ、雫から提供して貰えるような武器を使えるようになるまで一体どれだけ掛かるのかを、実力者である瑠華から教えて欲しかった。


「……妾の主観じゃが、奏は未だに武器に振り回されているように思う。刀を自らの腕の延長の様に扱えるまでになれば、振り回される事も無くなろうて」


「腕の延長…」


「サッカーで言う、ボールと友達になる的なやつ?」


「それは何処か違うようにも思うが…」


「ありゃ? まぁ取り敢えず私の話はここまで。それでどうする?」


「んー…有難い話だけど、しずちゃんに利点があまり無いように見えるのがちょっと疑問かな?」


「おぉ…かなっちが珍しく真面目だ」

 

「私だってこれくらいなら分かるからね!?」


 甚だ心外である。


「ふふっ、ごめんごめん。それで利点がどうのって話だけど…単純な話だよ。二人が私の友達だから」


 至極当然といった様子でそう言い切る雫に、奏は困惑した表情を浮かべる。確かに損得勘定で付き合っている訳では無いと言ったのは奏だが、それはあくまで当人同士にしか関係が無いからだ。今回の話は雫の両親の会社の経営にも影響があるのだから、友達だからというのは少々無理があった。


「というか、私が見たいんだよ」


「見たい?」


「かなっちや瑠華っちが、()()()()()()()()武器を使って戦う姿を見たいんだよ」


「デザイン!?」


「そだよ。今時は性能だけ追い求めても売り上げは伸びないからね」


「ほぇぇ…」


 奏は雫が社長令嬢である事は知っていたが、まさか実際に会社の製品に携わっていたとは露程も思っていなかった。


「これで納得した?」


「納得…まぁ少し?」


「少しなんだ…」


「けどスポンサーを受けるって言う事に否定的では無いよ。瑠華ちゃんが良いなら受けたいかな」


「妾の意見次第という事かえ?」


「だって大きな恩恵を受けるのは、今のところ瑠華ちゃんだけだしね」


「ふむ…まぁ妾が断る理由も無いがの。雫の迷惑にならぬのであれば、その話有難く受けさせて貰いたいのう」


「迷惑なんて思わないよ。寧ろこっちからお願いしてる事だしね。それじゃあ詳しい話は瑠華っちのスマホに送っておけばいいかな?」


「頼む」


「契約書も送付しとくねー」


 スポンサー契約は口約束で出来るものでは無い。雫の実家である【八車重工業】の様な大企業ならば尚更だ。瑠華は【柊】の管理をする中で契約書の書き方や注意点も学んでいるので、その点は問題が無い。この龍何でも出来るな……。


「かなっちは刀で、瑠華っちは薙刀…で良いんだよね?」


「うんっ」


「それで構わぬ」


「オッケー。むふふ…期待しといてね?」


 心底楽しげな笑みを浮かべながら教室を出ていく雫を見送り、二人が顔を見合わせる。


「妾達も帰ろうかの」


「そだね。意外と時間経っちゃった」


「じゃがその分の価値は有った様に思うぞ?」


「だね。しずちゃんがデザインした武器楽しみっ!」


 ……年頃の女の子が武器に思いを馳せるのは如何なものかと思わなくもない。今更だが。







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