183話 ドラゴンさん、ガッツリやらかす 裏
ダンジョンが世界中で突然現れ、その後起こったダンジョンブレイクによって政府主要機関は壊滅した。その悲劇を決して繰り返さない。それを目的として構築されたのが、魔力探知警戒網である。
そもそもダンジョンブレイクとは何か。それはダンジョンにて処理しきれなくなったモンスターが外へと溢れ出る現象の事だ。そしてそんな溢れ出したモンスターをいち早く探知する。その為に作られたのが、魔力探知警戒網という訳だ。
魔力探知警戒網は現在の主要機関に張り巡らされており、魔力を持つ存在が通り抜けた瞬間にその存在を探知する事が出来る。……の、だが。
「警戒網に感あり! 数一、南西方向から侵入したものと思われます!」
ダンジョンブレイクに備えて作り上げられたとはいえ、未だにその警戒網が実際に感知した事は無かった。故に初めての侵入警報が鳴り響き、かなりの大騒ぎとなる。
だがそれでも日頃から厳しい訓練を受けている者たちだ。呆気にとられたのは一瞬の事で、直ぐさま迎撃態勢を整えていく。
「現在哨戒中の機は?」
「ウィザード2、3が哨戒中です。現在地点は反応があった場所から五キロの地点です」
「ならその二機も向かわせろ。トレボー1を出せ! スクランブルだ! 対魔力装備を準備させろ!」
魔力探知された以上、敵はまず間違いなくモンスターだ。その為の装備を整え、一機の戦闘機が基地から発進する。
『こちらトレボー1。目標と思しき存在を視認。ですが正体不明です。レーダーも認識しません』
「トレボー1。魔力通信を試みろ。基地へ誘導、強制着陸せしめよ」
『了解』
基地司令からの命令に従い、未確認飛行物体……まぁ、瑠華に対して魔力通信による警告を行う。だが当然ながら返答はない。……というか実は見付かった時点で瑠華が全遮断結界を展開してしまっているので、届きようがなかったりする。
『反応ありません。やはり戦闘機ではなくモンスターの類いかと思われます』
「了解した。危険存在と判断し射撃を許可する。ただし威嚇程度で良い。ウィザード隊との合流を優先せよ」
敵はたった一体。だがモンスターである以上油断する事は出来ない。そういった判断からまずは威嚇射撃で様子見を行う。
ちなみに機関砲に装填されているのは、ダンジョンから取れた素材を用いて作られた弾丸だ。これは一般的な銃火器ではロクにモンスターに対してダメージを与えられないからである。
その後合流したウィザード隊と共に本格的な格闘戦へと入るも、瑠華は飄々とした様子で弾幕を躱していく。戦闘機達は瑠華の姿を認識は出来ないが大きさや存在自体は認識出来ているので、一切命中していない事も分かってしまう。
そうこうしている内に今度は瑠華からの反撃があり、突然出現した炎の渦に大慌てで回避行動を取る。従来の戦闘機であればそんな咄嗟に回避は出来ないが、この戦闘機もまたダンジョン由来の素材で作られていた故に何とか反応出来た。
それと同時に事態を重く見た本部はミサイルの使用を許可し、隙を見つけた一機が瑠華へ向けてミサイルを発射した。
だが元々変則的な飛行をしていた瑠華には命中率が下がるだろうと判断し、他の二機は機関砲により瑠華の進路を妨害し始める。それによりだんだんとミサイルは距離を詰め、これで漸く終わりかと思われた……その時。
『っ!?』
突如として瑠華を追尾していたはずのミサイルがぐるんと進路を変更し、なんとそのミサイルを発射した機体へと返ってきた。これには流石に他の機体も驚きを隠せなかったが、正面からだった事もあり何とか機関砲で撃墜する。
『何処に…!?』
だがそれにより発生した黒煙で視界は遮られ、ミサイルに含まれていた魔力素子によりレーダーも使えなくなった事により瑠華の姿を見失う。……まぁそもそも瑠華はレーダーに反応していなかったので、見えていたとしても意味は無かっただろうが。
『対象を見失いました。そちらの探知は?』
「こちらにも反応は無い。ステルス性能を持っているのか……一先ずウィザード隊は帰投せよ。トレボー1はそのまま哨戒任務に移行。十分後帰投せよ」
そうして先に哨戒任務についていたウィザード隊を帰投させてトレボー1に瑠華の行方を探させるも、当然見付かるはずもなく。ただ自衛隊全体に警戒感を高めさせただけに終わったのだった。
◆ ◆ ◆
「魔力追尾型のミサイルが追尾出来なくなって、突然方向を変えて返ってきた、と……」
「おまけにその姿は認識出来ず、カメラにも写っていない。炎の渦のようなもので反撃してきた事、そして戦闘機を振り切るだけの高機動で飛行していた事から人間ではなくモンスターである事は確定だそうだ」
「戦闘機のエンジンには確かに魔力が使われているけれど、ロックオンした対象を見失った挙句に返ってくるなんて事は有り得ない。そしてこのミサイルには魔力通信技術による制御が行われていた……なにやってるのかしらね、ほんと…」
「ははは……」
慣れない内容で書くのが遅れました……