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174話 奏、接敵する

 ここに来る経緯の説明も済んだところで、いよいよ本格的に攻略を始めていく。だが配信を付ける前にそもそもどう進もうか悩んでいた事を思い出した。


「道が分かんないんだけど…どうやって進めばいいのかな」


 :光ってるから壁とか天井は分かるけど…。

 :これどう進んだのか分からなくなるな。

 :前に進んでぶつかったら右とか左とかって決めて行くのは?


「よし、それでいこう」


 正に行き当たりばったりという言葉が似合う作戦に賛同し、コツコツと硬質な音を響かせながら漸く前へと進んでいく。すると早速敵が現れる気配がして、冷ややかな金属音を響かせながら刀を抜く。


「さぁどんな…へっ?」


 少しワクワクしながら敵を待ち構えていた奏だったが、満を持して現れたその敵の姿に思わず目を丸くした。

 奏の目の前に現れたのは、掌程のサイズ感がある色とりどりに光る宙に浮いた物体。


 :あれは…

 :アレだな?

 :アレだねぇ。


 困惑する奏とは裏腹に、リスナーは訳知り顔でコメントを残す。何処か顔がある様に見える角張った特徴的な形。それは少し昔のゲームを知る人からすれば、とても良く知る形で。


 :ちなみに名前はインベーダー。

 :まんまじゃねぇか!


「なんかいつもと系統違う、ね…?」


 普段であれば瑠華がコメントを拾い上げていただろうが、今回は奏だけの為コメントを見るにはスマホを見るしかない。なので奏はコメント欄で正解を教えられても、それを知る事は出来なかった。

 とはいえ戦いにおいて名前などは重要ではない。問題なのは、今まで奏が遭遇してきた敵とはまるで姿が違い、その攻撃手段が不明であるという事だ。


(まずは様子見…)


 答えを教えてくれる存在はいない。であればここで手をこまねいているより、実際に動いて確かめる他無い。

 十分な警戒をしつつインベーダーの元へとにじり寄る。するとインベーダーの一体に動きがあり、ピチュンと気の抜けるような甲高い音が響いた。


「遠距離攻撃!? ……あれ?」


 その音から何かが発射されたと思い一瞬飛び退こうとした奏だったが、何かに気づき思わずポカンとしてしまう。


「えっと…」


 確かに何かは発射されていた。そしてその正体とは、まさにレーザービームの様な光の線だった。……しかしその速度は非常に鈍足で、警戒したのが馬鹿らしくなる程だった。

 困惑しつつも警戒は怠らずにそのレーザーを躱し、スパンと上段からインベーダーを一刀両断する。現れたのは一体だけ。数が増える様子も無い。


「お、終わり…?」


 :呆気ない。

 :ま、まぁ最初だし。


 不完全燃焼感を覚えながらも先へ進もうとした奏の耳に、突如として場違いなファンファーレが響き渡る。


『1th stage clear!』


「ふぇっ!?」


 ファンファーレと共に奏の眼前へと浮かび上がった文字に、思わず素っ頓狂な声を上げる。状況が飲み込めないまま浮かんだ文字は暗闇へと消え去り、残されたのは未だポカンとした表情を浮かべる奏だけ。


「……説明っ!」


 流石に放置して進むのはナシだろう。そう思って切実にリスナーに説明を求めた。


 :説明しよう! このダンジョンは独自の“stage”という階層構造を持っている! そしてボスフロアを含む全六階層構造を持ち

 :(瑠華)そこまでじゃ。

 :あっ、瑠華ちゃんストップ入った。

 :気になるけどお預けか。

 :…誰も他人のコメントをぶつ切り出来た事に対して驚かないの草。

 :だって瑠華ちゃんだもの。

 :魔力通信に干渉出来るって言ってたし、まぁこれくらいは……。


「瑠華ちゃんのケチ」


 :(瑠華)ほぅ…?

 :あ。

 :あ。

 :あ〜あ。

 :瑠華ちゃん怒らせた。

 :(瑠華)この程度で怒る程狭量では無いわ。


「意外と瑠華ちゃんってノリ良いからね。でもホントに駄目? ちょっとだけ…」


 :(瑠華)駄目じゃ。

 :草。

 :取り付く島もないとはこの事か…。

 :あっ、あれの名前だけは教えていいよね?

 :(瑠華)構わんぞ。


「あの変なモンスター?」


 :そうそう。名前はインベーダー。攻撃手段は…ここまで言っていい?

 :(瑠華)構わん。というより妾から説明した方が早そうじゃな。あやつは先程見たビーム攻撃を主に行ってくる。近接攻撃は今のところ確認されておらんが、直接触れると痺れる様な感覚に陥るそうじゃ。


「成程。つまり蹴ったり殴ったりは駄目で、極力触れないよう立ち回ればいいんだね」


 :そゆこと。

 :聞くだけなら簡単そうなモンスターなんだが……。

 :まぁそれで終わる訳ないよな。ここ一応Eランクだし。

 :(瑠華)雑談はこれくらいで切り上げるとするかの。時間は有限じゃ。


「ん。じゃあ頑張るね」


 知りたかった事全てを知る事は出来なかったが、収穫はあった。瑠華が敢えてリスナーの言葉を遮る程隠したがる事は何なのか興味は尽きないが、このまま進めば自ずと分かるだろう。


「よしっ」


 スマホを仕舞って気持ちを切替える。リスナーの話の通りならば、後階層のようなものがあと五つあるのだろう。先は長そうだが、ここで折れるようならばそもそも初めから諦めている。


「頑張るぞーっ!」


 :可愛い。

 :可愛い。

 :……まぁそれがこのダンジョンの()()なんだけど。

 :(瑠華)ふふふ。

 :やっぱり瑠華ちゃん悪魔では?

 :悪魔というか小悪魔。

 :奏ちゃんを乗せるの上手いよね……。






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