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132話 ドラゴンさん、フラグを立てる

「ところで瑠華ちゃん…その、刀? がさっきから矢鱈とバチバチしてるんだけど…」


「ん?」


 奏に言われて瑠華が視線を向けると、確かにバチバチと激しく白い雷が弾けていた。元々じゃじゃ馬な大太刀ではあるものの、戦闘が終わって尚その状態というのは少し違和感があった。


「どうしたのじゃ? 嬉しいという感情ではないようじゃが…」


 その瑠華の言葉に、何やら不服そうな様子で雷が走る。それを見て、奏が随分と感情豊かな刀だと内心驚いた。


 :もしかして意思ある武器的なやつ?


「そうじゃな。思念を飛ばす程ではないが、そこそこの自我は持っておる」


 レギノルカの鱗から作られた大太刀である為、当然他の武器とは一線を画す性能を持っている。それが自我という形で現れているのだが、鱗の加工が不完全になってしまっているせいでそれ程強い自我は持っていないのだ。


「ほぇぇ〜…」


 バチバチッ!


「なんでっ!?」


 奏が感心するような声を上げつつ大太刀へと目線を向けると、まるで見るなと言わんばかりに激しく雷が弾けた。その反応に納得出来なかった奏が抗議するも、当の本人たる大太刀はバチバチと雷を滾らせるのみだ。


 :草。

 :奏ちゃん嫌われてるwww

 :なんで?

 :何となくだけど、嫉妬っぽい。

 :武器が嫉妬するって何さ…。


「嫉妬って…」


「ふむ…まぁ久しく構っておらんかったからのぅ。この先は朧を使って攻略しようかの」


 瑠華がそう口にすれば、激しかった雷が少し収まる。どうやら正解の選択肢だったようだ。

 収納しておいた鞘を取り出して刀身を納め、背中に担ぐ。どうせ鞘は収納して抜刀する事になるのだから、問題はない。


 しっかりと固定出来た事を確認してから、黒狼のドロップ品を回収する。今回落ちたのは、中くらいの大きさの魔核と白い牙だった。


「結局私何もしてない…」


「ここまでの道中で存分に戦ったのじゃから、それで良かろう」


「うーん…なんだかなぁ…」


 確かにここまで来る道中に遭遇した敵の殆どは奏が対処していた。だがボスモンスターである黒狼の動きを見て、もし自分が相対したのならばどうなっていただろうかという思いは奏の中に渦巻いていた。


(動きは、多分対処出来る。でも…)


 黒狼が瑠華の攻撃を躱した時の動き。あれをされた場合、果たして自分は攻撃を当てる事が出来ていただろうか。


「奏」


「…ん。なぁに?」


「主に妾のせいである事は理解しておるが、もう少し自分に自信を持つべきじゃ」


「自信、ねぇ…」


「大方先程の黒狼と自分が戦ったらどうなっていたか等と考えておったのじゃろうが、問題無く勝てておったと思うぞ」


「え?」


「黒狼はウルフの上位種。奏がその程度の相手に勝てぬ道理など無いわ。そも速さや硬さという点では、式神の魔狼の方が上じゃしの」


 奏としてはそう言われても納得出来ないものの、瑠華からのその評価は純粋に嬉しいもので。思わずニヤけそうになる顔を見られないよう手で覆って逸らしてしまう。


 :瑠華ちゃんからの信頼嬉しいねぇ(・∀・)ニヤニヤ

 :瑠華ちゃんって奏ちゃん自身より実力認めてるよね。

 :まぁ比較対象が桁違いだから自信無くすのは分かる。

 :瑠華ちゃん褒め上手。

 :照れてるの隠しきれてないの可愛い。


「そこ煩いよっ!」


 :やべっ。

 :まぁまぁ(((ノ´ー`)ノ

 :これで瑠華ちゃんへのお仕置も帳消しに……


「ならないから。お仕置はするからね? 勿論」


「………先に進もうかのぅ」


 実は若干期待していた瑠華であった。


 ◆ ◆ ◆


 奥の階段を降り、遂に十一階層に到達する。渋谷ダンジョンはここから異なる顔を見せる事で有名であり、今までの洞窟型から森林立ち並ぶダンジョンへと変化する。


「ここからはゴブリンとゴブリンライダーだっけ?」


「基本的なモンスターはその二体じゃな。後はホーンラビット、ラムクロウと言ったモンスターが出現するぞ」


「ラムクロウ?」


(カラス)型のモンスターじゃ」


「飛ぶ系かぁ…」


 奏が渋い表情を浮かべる。以前戦った魔鳥程の面倒くささは無いだろうが、やはり空を飛ぶ相手は苦手意識が強かった。


「ガウッ!」


「ん? 美影は自信あるの?」


 そんな奏の様子を見て、何やら美影が尻尾を振ってアピールする。奏はそれがラムクロウに対する自信の現れかと思ったが、実際は最近はずっと文字通りの影のような状態が続いていたので、ここで活躍して褒められたいというだけである事を瑠華は看破していた。


(何かと共に戦うのは未だ慣れんのぅ…)


 今でこそ奏との戦闘にも慣れてき始めたものの、やはり全てを自分だけで対処してきたという経験が邪魔をする。


「…妾は少し後方で待機しようかの。その方が美影も共に戦い易かろう」


「え? その()()()()使いたいんじゃないの?」


「朧ちゃん…?」


「自我があるなら、そう呼んであげた方が自然じゃない?」


 その言葉に対して、バチンッと雷の弾ける音が響く。それだけでは否定なのか肯定なのか分からず首を傾げるが、瑠華は理解出来たのか苦笑を浮かべた。


「気に入らぬようじゃ」


「えー? じゃあ…雷華ちゃん!」


 ならばと呼び名を変えれば、今度は雷が弾ける事は無かった。


「それで良いのかお主…」


「あれじゃない? 瑠華ちゃんと名前が似てるからじゃない?」


「…確かに似ておるのぅ」


 :主と似た呼び方されるのが嬉しいのか…

 :可愛い。

 :配信に出る名前が増えるね。

 :でもその内薙刀まで自我を獲得しそう。

 :フラグだからやめれ。


「あー…実際どうなの?」


「長く使い続けた武器には魔力が馴染むからの。それの影響で武器が変質する事は間々あるぞ。まぁ自我を獲得する程の変質は極稀じゃがな」


「……へー」


 奏は思った。瑠華に対して“極稀”という言葉ほど似合わない物は無いと。






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