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102話 ドラゴンさん、やらかしかける

 サナが【柊】に遊びに来てから数日後。瑠華達は送られてきた経路を元に電車とバスを乗り継いで、群馬の山奥にあるダンジョンへと向かっていた。


「あ、こっちよこっち」


 到着すると既に準備を整えていたサナが待ち構えており、招かれるままに側へと駆け寄る。


「お待たせしちゃいましたか?」


「大丈夫、私が心配で先に来ただけだもの。それじゃあ早速確認するけれど……此処なの?」


 そう言って瑠華へと目線を向ける。問われた瑠華はといえば、おもむろにダンジョンの方へと目線を向け……気まずげに頷いた。


「恐らくは此処じゃ」


「え、瑠華ちゃん夜中にどうやって此処まで来たの…?」


「……まぁ、色々とな」


「そっかぁ、色々かぁ…」


「……えっ、これ平常運転なの?」


 簡単にそれで納得した奏を見て、思わずサナがツッコミを入れる。明らかに流していい話の内容では無いだろう。


「瑠華ちゃんが黙る時はとことん教えてくれませんから。でもそれは私達を思っての事なので、問題無いです」


「えぇ…それで奏ちゃんはいいの?」


「良くないです」


 はっきりとそう答えた奏に、サナが目を丸くする。てっきり仕方ない等の諦めの言葉が返ってくるとばかり思っていた。


「良くないですけど、それは私のせいだから」


「奏ちゃんの?」


「瑠華ちゃんが教えても問題無いって思って貰える程、私はまだ強くないですから」


 そう言って笑う奏の表情は何処か寂しく、それでいて確かな決意を滲ませていた。そんな表情を見せられては、サナとしてもそれ以上口を挟む事は出来ない。


 このやり取りはここまでだと気持ちを切り替え、配信の準備を始める。今回はコラボということもあって、配信は双方のチャンネルで同時に行う予定だ。


「こんにちは! …あれ、おはようの方が合ってる?」


「はぁ……」


 :草。

 :これは草。

 :瑠華ちゃんが思わず呆れてるwww

 :おはよー!


 初っ端からグダグダになるその様子に、サナはカメラに映らない場所で苦笑を零していた。


「ほれ。早う名乗りをせんか」


「あっ! 奏だよ!」


 :うん知ってるwww

 :なんか今日奏ちゃんテンション高い?


「そうなの! 今日はね、なんとコラボです!」


「……流れで飛ばされたが、瑠華じゃ。そして凪沙もおるぞ」


「ん。よろしく」


 :グッダグダだなぁwww

 :でもそれがわちゃわちゃ感あって良き。

 :それでコラボとな?

 :まぁ予想はつくけど…誰なのー?


 視聴者は瑠華達がそう横との繋がりが多くない事を知っているので、コラボと聞いて浮かぶ存在はほぼ一人しか居なかった。


「という訳でどうぞ!」


「…なんというか、奏ちゃんって勢いで生きてるのね。ダンジョン配信者のサナよ。今日はよろしくね」


 奏から手招きをされた事で、苦笑を浮かべながらサナがカメラの画角に入り込む。


 :やっぱりサナちだった。

 :奏ちゃんはそこが可愛いんだぞ。

 :元気っ子は良い。

 :誰も勢いで生きてる事否定してなくて草。


「私そんな無鉄砲じゃないよ!?」


「無鉄砲ではないが、思い切りと行動力はあるのぅ。……それを補佐するのは大変じゃが」


「分かる。一緒に居て楽しいけど、ちょっと思うところもある」


「………」


 :味方がいないwww

 :ま、まぁでも瑠華ちゃんはそれが好きでしょ?


「嫌いではないぞ。昔から誰かの世話を焼くのは好きじゃからの」


「……それってつまり妹みたいに思われてるって事?」


 ―――瑠華は優しく微笑んだ。


 :あーあwww

 :瑠華ちゃん、せめて否定してあげて…


「これは私にもチャンスある…?」


 ふと凪沙がそんな事を呟いた時。サナが手をパンパンと打ち合わせて話の流れを断ち切った。


「はいはい。そろそろ今回の事について説明するわよ」


「はーい」


 :サナが保護者だwww

 :誰か止めないと無自覚にイチャイチャしてるからな…


「今回私達がやってきたのは群馬の山奥にあるダンジョンよ」


「その名も榛名(はるな)ダンジョン! 榛名山の近くにあるからこの名前が付けられたそうだよ」


 サナの説明を奏が引き継いでいく。これは元々予定されていた流れだ。順調に進み出した事で満足気に頷くサナを後目に、そのまま奏が説明を続ける。


「なんでもこのダンジョンはあまり人気が無いらしくて、なので今回ダンジョン協会からのお仕事でここに来てます!」


 :おぉ。

 :奏ちゃんがちゃんとしてる。

 :人気が無いの? 榛名山の近くなのに?


 待ち望んでいたコメントが流れ、それに奏が反応を示した。


「そうなの。なんでもダンジョンの修復機能が山全体に及んでいるらしくて、ここまでの道の整備が出来ないんだって」


「だからアクセスが悪くて、人気が無いの。まぁ他にも理由はあるけれど…それは入ってから説明するわ」


「あれ? アクセスだけじゃないんですか?」


 事前説明では聞いていなかった内容に、首を傾げる。対してコメント欄は気付いた人が居たらしく、少し騒がしい。


 :あwww

 :ちょっと分かったかも。


「分かったの? …って待とうか瑠華ちゃん」


「ん?」


 コメントを眺める視界の端にチラリと映った瑠華を見て、思わず制止する。


 :なんだなんだ?

 :瑠華ちゃんが薙刀の石突で地面コンコンしてたの。

 :え…あーwww


「何をしようとしたのか教えて?」


「少し状態を把握しようとしただけじゃよ」


「うんそれは分かるんだ。その後何しようと思ってた?」


「仮に不人気の原因が取り除けるものならば、取り除いた方が良かろう?」


「出来るからって軽率にそういう事するの辞めて!?」


 :草。

 :瑠華ちゃん…www

 :環境保全ヨシ!

 :何も良くないんだよなぁwww






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