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第3話 統制補助の大納言との会話

  午後3時、聖なる響きの館の前に集まっているのは、音楽魔法一族の族長と巫女長、弦楽部族と打楽部族の部族長と巫女長。そして、巫女のアイーダとフェネ、アニマ、トルリとアースがいる。族長のヴェル、アイーダの父が話を始める。


「全員揃ったようだな。すでに今回の件についての事情は知っていると思うが、何か質問はあるだろうか?」


全員が無言だ。すでに十分な説明を受けて、理解しているようだ。ヴェルが再び口を開く。


「統制補助の大納言への質問は、まずアイーダ1人で行う。それが終わってから質問したい者がいれば、各自で質問をする。それでいいだろうか?」


全員が首を縦に振る。ここも無言だ。かなり緊張している様子である。それを確認して、族長は聖なる響きの館の中へ向かう。


「ようこそいらっしゃいました。族長様、部族長様方、巫女長様、巫女様方、アース様」


聖なる響きの館に入ると、統制補助の大納言の声が出迎える。アイーダが1歩進み出て話しかける。


「こんにちは、大納言。今日はあなたに尋ねたいことがあって来ました。いいかしら?」

「はい。なんなりと」


アイーダは深呼吸をしてから最初の質問をする。


「倭国に天孫降臨の伝説があるようだけど、音楽魔法一族と関係があるのかしら?」

「はい。遥かなる昔、音楽魔法一族は船に乗ってこの星へ来ました。調査用の小型船が最初に着陸したのが倭国南部の土地でした。実際は草原だったのですが、オンラク山の山頂、ホシフルミネに記念となる品を置いたために、そこに降り立った、と誤って伝えられたようです」


その場にいる者は、初めて知らされる事実に口をポカーンと開けたり、目を大きく見開いたり、無言である。アイーダは続ける。


「なぜ音楽魔法一族はこの星に来たの?」

「それまでに住んでいた星の太陽に寿命が来て、爆発することがわかったのです。ですから、何百万隻もの移民用の船を作り、宇宙のいろいろな星へと移民しました。その中の一隻がこの星へ来たのです」


「なぜ倭国だったのかしら?」

「当時、倭国の自然環境が住むのに最適だったからです。移民用の船に乗っていたのは人間だけではありません。バラやサクラ、お茶、稲などの植物や牛やブタなどの動物、みそやしょうゆ、お酒を造るための微生物も多くの種類を乗せていました。それらの植物や動物、微生物を育てるためにも最適な環境でした。


現在この星に存在している植物や動物の中には、音楽魔法一族が連れて来た植物や動物を祖先に持つものもたくさんいます。倭国南部ではお茶が大量に生産されていることや黒ウシや黒ブタなどが名産品となっていることは、その名残です」


音楽魔法一族の者がバラやサクラ、お茶を好きな理由は、先祖の記憶のためかもしれない、とアイーダは思う。そしてさらに質問をする。


「私たちの祖先はどの星から来たのかしら」

「この場での回答はできません。倭国南部にある天岩戸を訪れてください。そこに答えがあります。天岩戸が存在する限り、我々が回答することは禁止されています。ただ言えることは、現在使っている転移陣での長距離転移を何百万回も行わなければいけないほどの遠い星です。星々の間に満ちているブラックエネルギーの使用量もかなりの量になります。この星で使用されている転移陣はその転移魔法の効果を限定して魔導具にしたものです」


この回答は気になったが、アイーダは更に質問を続ける。


「倭国に声楽部族が残っているそうだけど、何か知っている?」

「火山の大爆発が原因で日巫女様が倭国を離れた時に、声楽部族は旅に出ていて不在でした。それ以降のことは分かりません。ただ、声楽部族の子神殿は、火山噴出物に埋もれてしまうのを防ぐために、移民用母船に収納しました。


移民ための船には、長距離移動のための移民用母船、星に着陸するための館船、部族ごとに与えられる緊急避難用の子神殿船の3種類あるのです」


アイーダは驚いてしまい、慌てて尋ねる。


「えっ、館船って、この聖なる響きの館は船なの?」

「そうです。管楽部族はこの船に乗り、弦楽部族と打楽部族はそれぞれの子神殿に乗り、倭国から出発しました。そして、空を飛び移動しましたが、弦楽部族と打楽部族は、それぞれの楽器を作るための良い素材が得られる場所で別れました。管楽部族だけが、ここアルタイルの森に辿り着いたのです」


「管楽部族の子神殿は見たことがないけど、どこにあるのかしら?」

「管楽部族は常に聖なる響きの館の傍で暮らしていますから、移民用母船に保管されています。移民用母船は、いつもこの場所の真上、距離は月までの距離の2倍の位置にあります。その子神殿はいつでもここに呼ぶことができます」


アイーダは、声楽部族に会いに行くために倭国へ行く時に管楽部族の子神殿が使えないかと考えて質問する。


「子神殿で飛べば、倭国までどれくらいで行けるのかしら? 子神殿を飛ばすにはどうしたらいいの?」

「ここから倭国まで1時間くらいです。子神殿の統制補助の小納言に命じるだけで倭国まで行けます」


とりあえず、知りたいことは知ることができた、と判断したアイーダは族長たちの方を見る。誰も手を上げず、首を横に振るのでアイーダは言う。


「ありがとう、大納言。みんなで相談してから、また来るわ」


そして、聖なる響きの館を後にした。



アースとアイーダ、フェネと族長、巫女長、部族長たちは話し合いをするために族長の家に行き、トルリとアニマはヴェーヌの部屋へ帰って来る。そこでは『星とバラの妖精』のメンバーたちが待っていた。プレヤが話しかけて来る。


「ねえ、どうだった? 何かわかった?」

「うん。声楽部族が倭国にいることは確からしいわ。それからね、音楽魔法一族は他の星からやって来たようよ。どこから来たのか知りたければ、倭国に行けばいいらしいわ」


アニマが言うと、メンバーたちは驚くが、ヴェーヌが首を捻りながら口を開く。


「ということは、倭国に行くことになるのかしら? 私たちも連れて行ってもらえるのかしら?」


その言葉にメンバーたちはハッとする。パシファが遠慮がちに言う。


「私は倭国に行きたいです。特に南部はお茶の葉の生産量が倭国でも最も多い地域の1つです。是非、お茶畑を見たいです」

「パシファさんは倭国のことに詳しいのね。倭国南部で美味しい食べ物を教えて、教えてよ」


トルリがパシファに近寄り、両手でパシファの肩を掴んで言う。


「黒豚と黒牛の肉でしょうか? 焼いて食べたり、しゃぶしゃぶにして食べたりすると甘くて美味しいようです。あとはカライモと呼ばれるイモは、石焼きイモにすると、とても甘いと本に書いてありました」


「本当ですか? 私は黒豚の肉も黒牛の肉も食べたい! 甘い肉を絶対食べたい」


興奮するトルリ。そのトルリとパシファにレアが言う。


「しゃぶしゃぶとはどんな料理でしょうか? 聞いたことがないのですか」

「私は知らないわ。肉ならどんな食べ方でもいいの」


そんなトルリを見て、苦笑いしてパシファが言う。


「お肉を薄く切って、熱湯にくぐらせた後、タレにつけて食べる料理です。薄く切ったブリなどの魚肉でもいいそうです。それから、黒豚の肉の焼き方には、ミソをつけてから焼く料理方もあって、これも美味しいようです」


レアは続ける。


「たしかに美味しそうね。でも倭国のどこで食べられるか知っているの?」

「そんなこと行ってから誰かに尋ねればいいのよ」


とにかく美味しい肉を食べることだけしか頭にないトルリの言うことに、アニマがハッとして言う。


「天岩戸の場所は誰も知らないわ。それに、埋もれてしまっているだろうし。どうやって探すのかな?」

「あっ、そうね。案内人は必要だわ」


トルリが我にかえり、コクコクして同意すると、プレヤが尋ねる。


「天岩戸ってなんだい?」

「音楽魔法一族の故郷の星を教えてくれる場所らしいいわ」

「それは誰か知っている人に教えてもらうしかないね。それに倭国って、遠い国だよ。行くのに船で何ヶ月もかかる。行くだけでも大変だよ」


それに対して、アニマが得意げに言う。


「子神殿で飛んで行けば1時間くらいでいけるそうよ」

「えっ、……」


絶句するプレヤたち。それに構わずアニマは続ける。


「私は前から不思議に思っていたの。どうして音楽魔法に空を飛ぶ魔法がないのかな、って。だけど、子神殿が飛べるから必要なかったのね」


それに対してトルリが首を横に振る。


「高い所のブドウやリンゴのような果物を取るために、子神殿を飛ばすわけにはいかないわ。やっぱり空を飛ぶ音楽魔法、いや、ちょっとだけでも空に浮かぶ音楽魔法は欲しいわ」

「そうよね。やっぱり必要だわ。できるかわからないけど、作ってみようかな」


そんな会話をアニマとトルリがしていると、フェネが部屋に入って来る。


「みんなー、倭国に行けるわよー」

「「「おー」」」


フェネの報告にメンバーたちは喜ぶ。それを見て満足げにフェネは続ける。


「アース様、バービレ様、レジェラ様とアイーダお姉様だけで倭国に調査に行くことに決まりそうだったの。だけど、私は頑張ったわ。私たちも一緒に連れて行って欲しいって。そうしたら、倭国に行けることになったのよ」


「フェネ、よくやった」「フェネ、偉いわ」「フェネ、頑張ったわね」「美味しいお肉が食べられるわよ」「フェネ、あなたは英雄よ」「フェネ、あなたは世界一可愛いわ」「フェネさん、ご苦労様でした」


メンバーたちは口々にフェネを誉め称える。しかし、ヴェーヌが冷静に言う。


「天岩戸の場所を教えてもらう必要があるわ。アイーダお義姉様は分かっていらっしゃるかしら?」

「たぶんだけど、分かっていないわ。伝えてくる」


そう言うと、フェネは急いで部屋を出て行った。


お読みいただきありがとうございます。

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