第1話 かごめかごめ
お昼前、照り付ける太陽の日差しの届かないアルタイルの森の公園で、3人の女の子が手を繋いで回りながら歌っている。
♪かーごめかごめ かーごのなーかのとーりーは いついつでーやる
よあけのばーんに つーるとかーめがすーべった うしろのしょうめんだーあれ
歌が終わると、青髪の女の子が言う。
「3人じゃかごめかごめの遊びはできないわね。オニがいないもの」
「そうね。1人がオニになると残りの2人じゃ輪ができないからね」
答えたのはジルダ。フェネの妹で黒髪青目の6才の女の子である。青髪の女の子はラム、トルリの妹で6才。もう一人の女の子は赤髪緑目の6才のチコラ、アニマの従妹だ。チコラが言う。
「他の子たちも勉強が終わって、速く遊びに来ればいいのに」
「そうよね。たくさんで遊ぶ方が楽しいわ。」
「ただ待っているのもつまらないから、音楽魔法の練習でもしようか?」
ジルダが同意すると、ラムも続く。ラムの提案にジルダが尋ねる。
「練習って何をするの? いつもの歌を歌うの?」
「そうよ、『鳩』を歌うのよ。今日こそ5羽以上のハトに来てもらうわ」
そして、3人の女の子たちは歌い始める。
♪ぽっぽっぽー はとぽっぽー まーめがほしいか そらやるぞー
みんなでいっしょに たべにこいー
すると、どこからかハトが3羽飛んで来る。それを見て、3人の女の子たちは再び歌い出す。すると、更に2羽が飛んできて合計5羽のハトが地面を歩く。
「「「やったーーー」」」
女の子たちは抱き合って喜ぶ。目標の5羽のハトが飛んで来たのだ、それは嬉しいだろう。そこにポッポ、ポッポと幼女の声がする、声のする方を見ると、幼女を抱える10才くらいの女の子が歩いて来る。その女の子にラムが話しかける。
「アレリ姉さん、遅かったわね。どうしたの?」
「それがね、勉強は速く終わったのだけど、サーヤが離してくれなかったのよ」
「そうなのね。サーヤはアレリお姉ちゃんが大好きだからね。そうだ、かごめかごめの遊びをやろうよ。3人だとオニがいなくて遊べなかったのよ」
すると、それまで地面を歩いているハトを指さしてポッポ、ポッポと言っていた幼女が首を傾げて言う。
「オニってなあに?」
「魔物のことよ。倭国では魔物のことをオニと言うのよ。『かごめかごめ』のトリは空を飛ぶ魔物のことなの」
「マモノってなあに?」
「人間を襲う怖い生き物よ。だから、空を飛ぶ魔物を取り囲んで討伐する様子を歌った曲がこの歌の元になったの。囲め、囲めがかごめ、かごめに変わったのよ。魔物は怖いの、ガオー」
ラムが両手の人差し指を頭の横で立てて、怖い顔を作ってサーヤに近づくと、サーヤはアレリの胸に顔を押し付けてプルプル震える。それを見て、アレリはサーヤの背中をポンポンと軽く叩きながら言う。
「大丈夫よ。お姉ちゃんが守ってあげるからね。あっ、そう言えば、そろそろフェネお姉ちゃんが帰ってくるかな? お土産がたくさんあるといいな」
「私はお菓子のお土産が欲しいわ。甘いお菓子がいいわ」
そこにラムとチコラも加わる。
「そうよね。トルリお姉ちゃん、買ってきてくれるかな? まさかテンブリ王国の時のように木剣とか買ってこないよね」
「アニマお姉ちゃんは大丈夫かな? あっ、私は髪飾りでもいいわ」
アレリはコクコクしてから提案する。
「お土産はお姉ちゃんたちが帰って来るまでの楽しみにしようよ。さあ、かごめかごめの遊びをやろうよ」
*
翌朝、赤バラの屋敷のヴェーヌの部屋にアニマとトルリがいる。
「やっぱりアルタイルの森のご飯は美味しいわ。どこの国の宿屋のご飯より美味しいわね」
アニマが欠伸をしながら言うと、トルリも眠そうな目をして頷く。
「そうよね。それに魔力が増えるように、ちゃんと考えられているようだし。おかげで、ピーマンもニンジンも美味しく食べられるようになったわ。特にニンジンは甘く感じられるようになったわ」
『星とバラの妖精』は昨日帰って来たのである。昨日は実家で妹たちにお土産を配って、旅の話を夜遅くまでしていたのだ。アニマが話を続ける。
「お土産にバクラヴァを選んだのは正解だったわ。やっぱり本場のオリーブオイルを使っているから美味しかったのかな?」
「そうね。みんなお喋りを止めて、パクパク食べるのに夢中だったわ」
トルリが思い出し笑いをしながら同意する。お土産に選んだバクラヴァは、オリーブオイルを使ったフィロ生地にクルミを挟んで焼いたお菓子である。そこにフェネが部屋に入って来た。フェネがガッカリした様子で口を開く。
「アイーダお姉様はアース様やバービレ様、レジェラ様と出かけていて、いつ帰って来るのか分からないらしいわ。執事のサタールさんが言っていました」
フェネは倭国の声楽部族について、アイーダに相談するつもりだったのだ。これまでは、倭国にいた音楽魔法一族は全員ソーミュスタ王国にやって来ていて、声楽部族が倭国に残っているとは考えられていなかったのである。
声楽部族と連絡をとるのか、とらないのか、連絡をとるとしたら、その後どうするのか、考えなくてはいけないことが多すぎる。また、倭国は遠い。往復だけでも何ヶ月もかかるし、『星とバラの妖精』だけでは行かせてもらえないだろう。
フェネがどうしようかと考えていると、プレヤとヴェーヌ、セルク、レアが入ってくる。プレヤが手を上げて挨拶をする。
「おはよう。疲れはとれた?」
「おはよう。疲れはとれたけど、大変なのよ。聞いてくれる?」
それからフェネは、執事のサタールから聞いたことを話す。その内容は、アースはS級魔物の討伐を父親である軍務大臣と競っている。早くS級の魔物を発見しようと、東の騎馬民族の国の更に東を探したが発見できなかった。
次にソーミュスタ王国の南にあるウサス海、その先にある南大陸のプトーシェ帝国の付近を探しに行ったのが1週間前で、まだ帰ってきていない。そのアースと一緒に行ったのが、アイーダとバービレ、レジェラ。
それを聞いたプレヤが言う。
「え~、僕も一緒に行きたかった~。S級の魔物と戦いたいよ」
「それは無理よ。S級の魔物を発見したら、アース様が1分もかからずに討伐しちゃうからね」
アースにとって、S級の魔物の討伐とは、発見することと同じなのだ。ヴェーヌが微笑みながら言う。
「昔からお兄様は魔物討伐に出かけると、しばらくの間帰って来ないわ。お兄様が帰って来るまで何をするか決めた方がいいわ」
そこにパシファがワゴンを押して入って来る。
「おはようございます。みなさんお揃いのようですから、お茶をお持ちしました」
そして、お茶を配ってから尋ねる。
「あの~、『イルカ亭前のビーチで恋をしよう』の作曲はいつ頃できますか? 作詞担当の私としては気になるのです」
「あっ、そうだったわ。それがあったわ。急いで作るわ。イメージは固まっているから、そうね、1週間くらいかしら?」
フェネが顎に右手の人差し指を当てて、首を傾げて答えると、パシファが安心したような顔をして言う。
「わかりました。私もイメージはありますから、作詞を頑張ります」
パシファの話が終わったと判断したレアが口を開く。
「新曲に合わせて新しい舞台衣装を作るのはどうですか? スコリントで買った巫女服をアレンジする案もありましたよね?」
「アレンジするって、音楽魔法一族の巫女服と同じようにするの?」
ここでフェネとアニマ、トルリが考え込む。音楽魔法一族の巫女服は小袖と袴は同じ色だ。ただし、地位によって色が定められている。音楽魔法一族の巫女長であるアイーダの母親は紫色、副巫女長と管楽部族の巫女長を兼ねるアイーダが青色、部族の副巫女長のフェネとトルリ、アニマ赤色である。なお、部族の副巫女長は2人いる。しばらくの時間が経って、アニマが口を開く。
「袴の色はピンク色で揃えて、小袖の色は1人ひとり違うのはどうかしら?」
「そうね。袴の色でグループのまとまりを表して、小袖の色で個性を出すのね」
トルリが同意するとフェネも言う。
「うん、いい考えだわ。もう1つ小袖の背中に各自好きな絵柄を入れるのはどうかしら? 私は横笛の絵がいいわ」
すると、アニマはヴァイオリンの絵、トルリは交差するバチ、プレヤはふたご座の絵、 ヴェーヌは金の星の絵、セルクはいて座の絵、レアは土星の絵がいいと言い出す。しかし、パシファは口を開かない。
「パシファさん、どうしたの? 好きな絵柄はないの?」
「あります。ただ、お茶の葉にするかカラテア・サンデリアーナの葉にするか、迷っているの。私らしいのはお茶の葉だけど、舞台衣装として映えると思うのはカラテア・サンデリアなの」
パシファにはゆっくりと絵柄を決めてもらうとして、背中に絵柄を入れることは決まる。そこでプレヤが口を開く。
「さて、アイーダ様たちが帰ってくるまで、何をしようか?」
すると、みんなが希望を口にする。
「私はマーシャに負けないように風魔法の練習をしたいわ」
「私は雷神の威力が上がるように、修行を励むわ。フェネ、手伝ってね」
「私は騎士とお姫様の恋物語を書きます」
「私は病気の勉強をして、たくさんの病気を治せるようにしたいです」
「僕は剣術の修行をしたい。ヴェーヌ、付き合って」
「私は衣装の背中の絵柄を考えます。それから『イルカ亭前のビーチで恋をしよう』の作詞をします。
全員が前向きな希望を述べる『星とバラの妖精』のメンバーたちであった。
お読みいただきありがとうございます。
いいなと思ったら、評価等お願いします。
参考
「かごめかごめ」 日本のわらべ歌
「鳩」 作曲・作詞 文部省唱歌




