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第9話 首都テネア③ 

 歌声の聴こえて来る方へ進んで行くと、野外コンサートの会場があった。会場入口には「音楽発表会」の看板がある。入口にいた係員にプレヤが尋ねる。


「ここでは何が行われているのですか?」

「各国対抗戦を盛り上げるためのイベントです。入場は無料ですから、どうぞ空いている席にどうぞ。これがプログラムです。お一人様1部になります」


席に座ると、ちょうど合唱曲が終わる。プログラムを見てフェネが言う。


「♪ ラララ ラララ ラララ って、この曲は倭国の歌の『花』だったわね。ということは、・・・・・・・」


フェネの言葉が途中で止まる。不思議に思ったトルリが尋ねる。


「フェネ、どうしたの?」

「今舞台にいるのは倭国からの修学旅行生らしいわ。学生にしてはとても上手だったからビックリしたの」

「確かに上手だったね。ということは、彼らが着ているのは制服かな?」


舞台の上には、白い小袖に赤紫色の袴を着用した女子が5人ずつ2グループ、白いシャツに黒いズボンを着用した男子が5人ずつ2グループの合計4グループ。年齢は『星とバラの妖精』と同じくらいだろう。1人の女子生徒が一歩前に出て大声でアナウンスする。


「次は引率の先生方も参加されて、オペラの中の曲で『乾杯の歌』です」


アナウンスが終わると、30代から40代と思われる男性3人と20代らしき女性1人が舞台に出て来る。そして、楽団の前奏が始まり男性の1人が歌い始めると、観客たちは口をポカーンと開けて動きを止める。


理由は、男性の声が素晴らしくきれいで、とても豊かな声量だったからだ。他の3人の先生方も同様で観客はただただ聞き惚れていた。


合唱が終わると、音楽発表会は1時間の休憩に入った。座席に座ったままでアニマが言う。


「先生方の歌は凄かったね。あんな歌は初めて聴いたわ」

「うん、とても人間の声とは思えなかった。まるで人間の体が楽器になったみたいに感じたわ」


トルリが答えるが、フェネは何やら考え込んでいるようで、下を向いている。心配したアニマが尋ねる。


「フェネ、どうしたの? 具合が悪いの?」


フェネは首を横に振って口を開く。


「大丈夫よ。ただ、女の先生の歌声に魔力を感じたの。音楽魔法とは言えないほどのほんの僅かな魔力だけど。それについて考えていたの」

「えっ、音楽に魔力を乗せることができるのは音楽魔法一族だけのはずよ」

「そうなのよ。それに私の気のせいかもしれないし」


その時、他の観客が会場から出て行くのを見たプレヤが言う。


「さて、これからどうしようか? 行きたい場所がなければ、モグラ型魔獣討伐の依頼完了を報告に冒険者ギルドにいこうよ」


誰も希望を言わなかったので、『星とバラの妖精』は冒険者ギルドに向かった。



冒険者ギルドでモグラ型魔獣の討伐の依頼完了を報告して、報酬を受け取った『星とバラの妖精』は依頼掲示板を見に行く。掲示されている依頼をざっと見てプレヤが言う。


「ほとんどがF級やD級の魔獣だね。C級魔獣は大イノシシ型魔獣ぐらいかな。みんなどうする?」


トルリが勢いよく手を上げる。


「私の威力アップした魔法を試すにはC級魔獣はちょうどいいわ。是非討伐に行きたいわ」


反対をする者はいなかったので、プレヤは討伐依頼を受けるために受付に行き、事務手続きを完了させる。そして、さあ出発という時にパシファが提案する。


「狩場は近いのですが、帰りが遅くなるかもしれません。宿屋を予約してから行きませんか? 今は宿屋の予約も取りにくいようですから」


狩り場はポスオリン山の麓で、ここから歩いて20分くらいの場所だが、大イノシシ型魔獣を発見するのに時間がかかるかもしれないのだ。パシファの意見はもっともなのだ。


予約を取りに行くと、最初の宿屋は満員で断られる。それから、宿屋を回ること5軒目でやっと予約を取ることができた。やはり8人がまとまって泊まるのが難しいのだ。その後、テネアの城壁から外へでた。


ポスオリン山はリチウム公国で一番高い山で、城壁からも見えている、。ポスオリン山を目標に街道を進むと、高さが8メートルから10メートルくらいの木の林があり、たくさんの農夫たちが緑色の実を取っている。それを見てプレヤが尋ねる。


「何を採っているのですか?」

「オリーブの実ですよ、お嬢さん。今が収穫の時期でして村人総出で収穫しているのです」


答えてくれたのは、30代くらいの女の農夫だ。


「へえ~、これがオリーブの実なの。オリーブってオリーブオイルが取れるオリーブですか?」

「そうです。神殿から灯り用や料理用の大量のオリーブオイルの注文が入っているのです」


初めてオリーブの実を見た『星とバラの妖精』たちは興味深く見ていたが、アニマが呟く。


「オリーブオイルって、サラダドレッシングや炒め物に使うだけかと思っていたけど、灯りにも使うのね」

「そうよ。他にもセッケンや化粧品の原料だったり、髪につけたり、スキンケアに使ったりするわ」


アニマの呟きをレアが広い、本から得た知識を披露する。


『星とバラの妖精』が初めてオリーブを見たと思った農夫が言う。


「お嬢さんたち、この先の畑にはオリーブより珍しいものがありますよ。綿畑です。もう少しすると綿の収穫時期ですから、珍しい風景を見ることができますよ」

「ありがとうございます。それでは」


プレヤがお礼を言い、『星とバラの妖精』は歩くスピードを少し上げる。布団やぬいぐるみに入った綿をみたことはあったが、自然の綿を見たことがなかったからである。5分ほど歩くと、ふわふわした白い花が咲いているように見える畑があった。トルリが花に顔を近づけてジーと見て言う。


「これ綿だよ。綿って綿の花から取れるんだね」


ここも自分の出番だと思ったレアが口を開く。


「花じゃないわよ。それは綿の実がはじけて出て来た綿毛よ」

「そうなの。本当にレアって物知りだわ」


ひとしきり綿畑を見物した後、しばらく歩くと道が終わり、広い草原に出る。草原の向こうには森があり、その先にはポスオリン山がそびえている。


「冒険者ギルドによると、ここからが大イノシシ型魔獣が出る狩場だね。草原に大イノシシ型魔獣が出て来るのを待っていても時間の無駄かもしれない。ポスオリン山の方の森に入って行こう」


プレヤがそう言うと、パシファが抱いていたポチが、ピョンと草原に下りて走り出す。


「ポチは運動不足だったのでしょう。ふだんは羊たちを追いかけていますから」

「そうかもしれない。じゃあ、僕たちは羊に乗って進もうか」


プレヤは右手をヴェーヌの左手とつなぎ、左手にロータスワンドを持つ。ヴェーヌは右手にスターワンドを持つ。そして、同時に詠唱する。


「「星魔法 おひつじ座 8体」」


羊が8頭現れると、すぐにアニマが羊の背に触れて叫ぶ。


「うわー、柔らかーい。モフモフだわーーー」


それを聞いて、他のメンバーたちも羊の背中に触れて笑顔になる。ひとしきりモフモフを楽しんだプレヤが、みんなに声をかける。


「さあ、羊に乗って進もう」


メンバーそれぞれが羊に乗ると、ポチもパシファの乗る羊の横にやって来る。『星とバラの妖精』は2列縦隊で草原を進む。レアがセルクに話しかける。


「ねえ、セルク。馬より羊の方が乗り心地がいいわ。私たちもおひつじ座の魔法を使えるように練習をしない?」

「賛成です。帰ったら2人で練習しましょう。是非使えるようになりたいです」


のんびりと進んでいると、前方の林からブタ型魔獣30体ほどが飛び出して来る。それを見て、プレヤが手を上げて叫ぶ。


「羊から下りて、応戦態勢をとって」


メンバーたちはすぐに羊から下りて横一列に並ぶ。左からプレヤ、フェネ、トルリ、レア、セルク、アニマ、パシファ、ヴェーヌの順番である。万が一、魔法攻撃をすり抜けて接近してくる魔獣がいても、対応できるように剣を武器とする者同士が隣り合わないような配置である。


狼型魔獣との距離が100メートルになった時、プレヤが叫ぶ。


「魔法攻撃開始」


ヴェーヌとフェネ、アニマが詠唱する。


「「「風魔法 ウインドボール」」」


プレヤとセルク、トルリ、パシファが詠唱する。


「「「「水魔法 ウォーターボール」」」」


レアが詠唱する。


「土魔法 クロッドボール」


30秒後、すべてブタの型魔獣は煙になり魔石を落とした。


「さあ、魔石を拾おう。せっかく魔獣を倒したのだから。B級冒険者になるためには、コツコツと実績を積まないといけないからね」


メンバーたちは散開して魔石を拾い始める。ポチも魔石を加えてパシファに持って来る。パシファに魔石を渡したポチが、森の方を向いてワンワンワンと吠える。その森からバキバキと木々が倒される音が聞こえて来る。そして、大イノシシ型魔獣が姿を現し、こちらに突進を始める。体高が5メートル、体長が10メートルはある。それを見たパシファが叫ぶ。


「みなさん、大イノシシ型魔獣です。こちらに突進して来ます」


トルリが嬉しそうに言う。


「やったー。向こうから出て来るなんて、探す手間が省けたわ。みんな、手を出さないで。あれは私とフェネが討伐するわ」


メンバーがコクコクすると、フェネが携帯魔法で横笛とシンバルを取り出す。横笛を口に当てて、トルリがシンバルを両手に持つ。そして、2人は同時に詠唱する。


「「音楽魔法 雷神」」


フェネが横笛で『行進曲 雷神』をトランペットの音色で演奏を始める。トルリが両手に持ったシンバルを強く打ち合わせて、両手を左上と右上に開き大きく鳴らすと、突進してくる大イノシシ型魔獣に雲1つない空から稲妻が突き刺さる。すると、大イノシシ型魔獣は煙になり魔石を落とした。それを見てトルリが叫ぶ。


「よし、一撃で討伐できたわ。みんな、見た? 一撃よ、一撃」


フェネとトルリ以外のメンバーは盛大な拍手を送った。


パチパチ パチパチ パチパチ パチパチ 


拍手が終わるとプレヤが元気よく言う。


「さあ、魔石を拾って宿に帰ろう。お祝いのパーティーをしよう」

「「「「「「「「オー」」」」」」」」


お読みいただきありがとうございます。

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参考

「花」  作曲 瀧廉太郎  作詞 武島羽衣

「乾杯の歌」 オペラ「椿姫」より 作曲 ヴェルディ 訳詞 徳永 政太郎

「行進曲 雷神」 作曲 ジョン・フィリップ・スーザ


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