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第4話 モグラ型魔獣討伐

 町を出て、南へ歩くこと20分くらいで、一面畑が広がっている場所に到着する。畑では多くの農夫たちが作業している姿がある。プレヤが周りをキョロキョロと見回して呟く。


「冒険者ギルトの地図だと、この辺りにモグラ型魔獣が出るはずなんだけど」

「そうね。普通の畑だよね。モグラ型魔獣が出ている雰囲気はないね」


トルリが同意するが、アニマが言う。


「あっちに街道近くで作業している農夫さんがいるわ。あの人に聞いてみようよ」


その言葉に『星とバラの妖精』はゾロゾロと農夫に近づいていく。農夫は黄色の花の1つを摘み取り、逆さにして別の黄色い花に押し付けている。プレヤが明るい調子で話しかける。


「こんにちは。私たちはモグラ型魔獣を討伐に来た冒険者パーティです。モグラ型魔獣はどこにいるのか知っていたら教えて欲しいのですが」


農夫は『星とバラの妖精』をジロジロ見て言う。


「あんたたちは本当に冒険者なのかい? まだ子どもの女の子のように見えるのですじゃが」

「ああ、そうだよ。僕たちはC級冒険者パーティだよ」


プレヤは答えると、火球を空に打ち上げる。それを見た農夫は驚いたのか、無言で空を見上げていたが、しばらくして口を開く。


「凄い火魔法じゃ。いやいや疑ってすまんかった。モグラ型魔獣が出ている場所はもう少し先ですじゃ。畑にたくさんの穴が開いている場所ですじゃ。そこではもう野菜を作ることができないから、放棄された土地ですじゃ。


そんな土地がどんどん増えていて、みんな困っておるのじゃ。モグラ型魔獣はワシらが丹精込めて作った野菜をダメにしているんじゃ。とても悔しいのじゃ。是非ともモグラ型魔獣を討伐してくだされ。お願いしますじゃ」


「任せてください」


胸を張ってプレヤが言って、その場を去ろうとすると、レアが農夫に尋ねる。


「農夫さん、黄色の花で何をしていたのですか?」


農夫はキョトンとしたが、すぐに口を開く。


「ああ、見なされ。この畑にはたくさんのスイカがありますじゃ。ここはスイカ畑ですじゃ。スイカの人工受粉をしていたんですじゃ。スイカはおしべのある雄花とめしべのある雌花がありまして、何もしなくてもかなりの確率で受粉して、おしべの花粉がめしべにくっついて、実がなるのですじゃ。


でも受粉する割合を少しでも上げるために、この手でおしべの花粉をめしべの頭につけているのですじゃ。ほら、そこにスイカの小さい実がなっているじゃろう」


農夫が指さす先には、緑に黒縞模様のスイカの模様があるとても小さい実があった。


「わあ、可愛い~。食べたら美味しいのかな?」

「ハハハ、いやいや、甘くなるのはもっと大きくなってからじゃ」


アニマの問いに農夫が答えると、レアがお礼を言う。


「わかりました。教えてくれてありがとうございます」


そして、モグラ型魔獣のいる場所を教えてもらったことのお礼を言って、『星とバラの妖精』は歩き出した。



スイカ畑から10分ほど歩くと、先頭を歩いて畑を見ていたアニマが声をあげる。


「ほら見て。畑に穴がたくさんあるわ。きっとここがモグラ型魔獣に荒らされている畑よ」


畑には地面の穴だけではなく、食べ散らかされたスイカの残骸もたくさんある。そして、穴の1つから何かが頭を出す。それを見たトルリが剣を抜いて走り寄るが、それはすぐに穴の中に引っ込む。穴の中を覗き込んだトルリが言う。


「穴の中にはいないわ、穴は深いのね。たぶん、あれがモグラ型魔獣よ」


次の瞬間、別の穴からモグラ型魔獣が顔を出す。トルリがそちらへ向かうが今度も取り逃がす。すると、また別の穴からモグラ型魔獣が顔を出す。今度はアニマが向かうが、これも失敗する。それを見てフェネが呼びかける。


「トルリ、アニマ、こちらへ来て。私とポチの出番よ」


トルリとアニマが帰って来ると、フェネは他のメンバーも近くに集めて説明を始める。


「私が音楽魔法でモグラ型魔獣のいる場所を見つけるわ。別の言い方をすると、ポチが見つけるわ。だからレア、あなたの土魔法でそこを掘って、モグラ型魔獣を追い出して。そのモグラ型魔獣を残りのみんなで討伐するのよ」

「わかった。フェネの作戦でいくよ」


プレヤが言い、他のメンバーもコクコクする。それを見てフェネが言う。


「じゃあ、パシファさん、抱えているポチを地面に下ろして。これからみんなが知っている曲を演奏するから、良かったら歌ってね」


パシファがポチを地面に降ろして、ポチの頭を撫でてモグラ型魔獣を探すように頼むと、フェネは横笛を携帯魔法で取り出して詠唱する。


「音楽魔法 花咲爺」


横笛の演奏が始まると、みんなが歌い出す。


♪うーらのはーたけで ポーチがなくー しょうじきじいさん ほったれば―

おおーばん こばんが ザークザク ザクザク


するとポチが畑へ走り、ある所で止まり右足で地面を叩いて吠える。


「ワンワン ワンワン」


そして、また走り出す。ポチが教えてくれた場所にサターンワンドを持ったレアが土魔法を打ち込むと、土と一緒に体長20センチくらいのモグラ型魔獣が打ち上げられる。


トルリの水魔法が、アニマの風魔法が放たれる。すると、モグラ型魔獣は煙になって魔石を落とす。


「トルリ、私の水魔法がモグラ型魔獣を討伐したわ」

「いいえ、モグラ型魔獣を討伐したのは私の風魔法よ」


2人が言い争いをしている間にも次々とモグラ型魔獣が空に打ち上げられる。ヴェーヌとプレヤ、パシファは水魔法でそれらを煙に変える。それを見たトルリとアニマはハッとして言い争いを止める。そして、慌ててモグラ型魔獣に魔法を放つ。


畑の上に魔法が飛び交うこと20分ほど、レアの魔力が少なくなり、土魔法を放つ間隔が長くなる。するとヴェーヌが言う。


「レア、竜王丸を使って。私はふだん土魔法は使わないから、レアほど上手じゃないけど、私も土魔法を使ってモグラ型魔獣を追い出すわ」


ヴェーヌが土魔法を放ち始めると、レアはコクコクして竜王丸を口に入れる。少しして、レアの魔力も回復して、レアも土魔法を放ち始める。そこからは、レアとヴェーヌが土魔法を使いモグラ型魔獣を地下から追い出す。それを魔法で討伐すること20分ほど、ポチが吠えることはなくなった。


「フゥ、やっと終わったようだね。疲れたよ、もう魔力もほとんど無いよ」

「私も魔力がほとんど空よ」


プレヤが言うとヴェーヌも言い、他のメンバーも魔力が残っていないと言う。その時、ポチがこれまでにないほど大きな声でワンワンと吠える。そちらを見ると、地面が盛り上がり、体長2メートルほどのモグラ型魔獣が飛び出してくる。口には大きな牙が1本あり、手と足には鋭い爪がある。プレヤが剣を抜いて叫ぶ。


「剣で討伐するよ。行こう」


ヴェーヌとセルク、トルリが剣を手にモグラ型魔獣が突撃する。4人でモグラ型魔獣を取り囲み剣で切り、刺す。モグラ型魔獣は誰を相手にすればいいのか分からなくて、体をグルグル回して、手を振り回す。


しかし、時間が経つにつれてモグラ型魔獣の傷は増えていく。最後は隙をついてプレヤが飛び上がり、頭に剣を振り下ろすと、モグラ型魔獣は煙になり、魔石を落とした。


討伐が終わった後の畑一面には穴が開き、魔石が散らばっている。


「討伐は終わったようだね。お疲れ様。みんな疲れていない?」


プレヤの言葉に、レア以外が平気だと答える中、レアが答える。


「疲れました。魔力がほとんど残っていないわ」

「うん、レアは一番頑張ったからね。しばらく休んでいて。パシファさんはポチに食事をさせてあげて。2人以外は落ちている魔石を拾うよ」


パシファがポチを呼ぶと、ポチはすぐに帰ってくる。パシファはポチの頭を撫でて言う。


「ポチ、よく頑張ったね。少し遅くなったけどご飯よ」


フェネが携帯魔法でポチ用の食べものを出すと、ポチはシッポを振りながら食べ始める。レアは平らな岩の上に座り込みフゥと息をつく。他のメンバーは魔石を集めに散って行く。


しばらくすると、魔石集めも終わりメンバーが集まる。畑を見ながら休んでいたレアがポツリと言う。


「畑が穴だらけになってしまいました。放棄された畑とはいえ、このままでは畑として使えません。平らな土地に戻したいわ」


それを聞いたプレヤが言う。


「このたくさんの穴をなんとかできる? 平らな土地に戻した方がいいからね」

「ええ、できるわ。土魔法を使ってね。でも竜王丸は1回使ったから、もう魔力が足りないわ」」

「じゃあ、私も手伝うわ。竜王丸を飲むから少し待っていて」


プレヤが尋ね、レアが答えるとヴェーヌも言う。そして、ヴェーヌは竜王丸を飲み、レアの手を繋ぐ。ヴェーヌの魔力をレアに提供するのだ。レアがサターンワンドを手にして詠唱する。


「土魔法 整地」


すると、たくさんあった穴に周囲の土が吸い込まれていく。特に畝だった場所からは土がどんどん吸い込まれていく。しばらすると、一面平らな土地が広がった。

レアが言う。


「フゥ、これで大丈夫ですね」

「凄いよ、レア。後は農夫さんたちに任せれば、立派なスイカ畑になりそうだ」


平らになった土地を見てプレヤが誉めると、レアは照れたように笑顔を見せる。


トルリも言う。


「これでまた、みんなが美味しいスイカがたくさん食べられるようになるわ」


その言葉にみんなが笑うと、プレヤはみんなに言う。


「さあ、次の目的地の湖に向けて出発だ」



お読みいただきありがとうございます。

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参考

「花咲爺」  作曲 石原 和三郎  作詞 田村 虎蔵 

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