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第2話 おやつはスイカ

 ヴェーヌの部屋でノアとトルリ、フェネ、アニマがおやつを待っていると、ドアからノックの音がする。入室の許可を待たずに入って来たのはヴェーヌ、プレヤ、セルクだ。プレヤが右手を上げて元気よく口を開く。


「やあ、冒険者ギルドから帰って来たよ。とても面白い依頼があったよ」


プレヤたちはB級冒険者への昇格を目指して、役立ちそうな依頼を探しに冒険者ギルドへ行っていたのだ。アニマが目をキラキラさせてプレヤに聞く。


「ねえねえ、面白い依頼って何? 早く教えてよ」

「モグラ型魔獣だよ、C級魔獣のモグラ型魔獣だよ。地下に潜っていて滅多に見ることができない魔獣だよ。地表に出て来たところを討伐するんだ」


プレヤが勢い込んで説明するが、レアが手を上げる。


「モグラ型魔獣はいつ地表に出て来るんですか? 出て来るまで待っているんですか? どこから出て来るのか分かるのですか?」

「あっ、それは知らないよ。そこまで考えていなかった。まあ、現地の冒険者ギルドで教えてもらえばいいと思うよ」


ふぅとため息をついてレアは次の質問をする。


「いやいや、討伐方法は考えておくべきだと思います。それで現地ってどこですか?」

「リチウム公国だよ。センプロ帝国と山脈を隔てて南側にある国で南は海に面している国。リチウム塩で有名な国だね」

「リチウム塩ってなあに?」


アニマが質問すると、ヴェーブが言いにくそうに答える。


「花火の色を赤くするのに使う塩よ」

「ああ、聞いたことがあるわ。タイリア伯爵領の花火大会で打ち上げられたそうね。とってもきれいな真紅の花火だったようね」


ノアが思い出して続くと、プレヤがガックリとうなだれる。


プレヤは父親の許可が出ずにタイリア伯爵領に行けなかったのだ。プレヤの様子を見て、ヴェーヌとノアがどう慰めようかとおろおろしていると、ドアからノックの音がする。入って来たのはワゴンを押してパシファ。パシファが言う。


「みなさん、今日のおやつはスイカですよ。とっても美味しいスイカです」

「わあ、スイカだ~~~。私、スイカ大好きなの」


アニマが大喜びだ。他のみんなも笑顔だ。そんな中、スイカと一緒に配られた小皿に入っている白いものを見て、プレヤが疑問を口にする。


「この白いものは何?」


答えを待たずにアニマがそれを指につけて口に入れる。そして叫ぶ。


「うわー、しょっぱいー。塩だよ塩、これ」


パシファが微笑んで答える。


「そうです。塩です。スイカに少しつけて食べてください」

「えっ、スイカは甘いのにわざわざ塩をつけるの。スイカが甘くなくなるよ」

「いいえ、逆です。スイカの甘さが強くなります」


パシファの言葉にコクコクしたのは、フェネとセルク、ノアでヴェーヌ、プレヤ、トルリ、アニマは首を傾げている。試しに食べてみましょう、ヴェーヌがそう言うと、プレヤ、トルリ、アニマはコクコクして塩を少しだけ摘まんでスイカに振りかける。そして、恐る恐るスイカを少しだけ口に入れる。


「「「「あま~い!」」」」


4人は同時に大声を上げる。そして、スイカをパクパクと食べて、あっという間に食べ終えてしまった。残りの4人は生暖かい目で見守っていたが、自分たちもすぐにスイカを食べ終える。トルリが興奮して叫ぶ。


「ねえねえ、どうして塩をかけたのに甘味を強く感じるの? 誰か教えて」


その問いに全員が首を傾げる。しばらくしてッパシファがおずおずと言う。


「倭国にお汁粉という甘い食べ物があるのですが、これにも少しの塩を加えると甘味が強くなるそうです。そして、この塩のことを隠し味というそうです」


すると、ヴェーヌが口を開く。


「多分だけど、塩味を感じる食べ物と甘味を感じる食べ物が一緒にあると、お互いの味を強め合うのではないかしら? この場合は塩が少ししかないから、甘味だけが強く感じられるのではないでしょうか?」


プレヤが首を捻りながら言う。


「真っ暗な所から急に明るい所へ出ると、眩しく感じるのと同じかな?」

「少し違うけど、反対の性質のものはお互いの性質を強め合うという意味では同じね」


室内に納得感が広がる。しかし、アニマが口を開く。。


「じゃあ、バナナも塩を振ると甘くなるの?」

「いいえ、あまり甘くなりません。私は試してみました。止めた方がいいです」


パシファが控えめに、冷静に答える。ヴァーヌが少し考えて言う。


「スイカは大部分が水よね。お汁粉も水分がたくさんあるわよね。バナナはスイカほど水を含んでいないわ。だから、水がたくさんないとダメじゃないかしら?」

「なるほど。私がそれを確認してみます」


パシファの一言で塩を少し加えると甘味が増すという話は終わりになった。


パシファが食べ終わったスイカの皿を片付けていると、アニマが口を開く。


「それでモグラ型魔獣の討伐方法はどうするの?」

「そうよ、モグラ型魔獣は地下に潜っているのでしょう? まずは発見する方法が問題ね。それから、そのまま地下で討伐するのか、地表に追い出してから討伐するのか、いろいろあるわ。プレヤ、何か考えているの?」


レアも続く。すると、プレヤが胸を張って答える。


「考えるのは僕の仕事じゃない。作戦を考えるのはヴェーヌの仕事だよ。ねえ、ヴェーヌ」


突然話を振られたヴェーヌは一瞬キョトンとするが、すぐにニッコリ笑って答える。ヴェーヌは昔、軍師とか参謀と言われる仕事をしたくて、兵法書を読み、将棋やチェスなどのボードゲームに熱中していたのだ。


「そうよ。私は作戦を考えるのは好きだからね。それで、モグラ型魔獣を地表に追い出す方法は1つ思い当たるわ。地表に追い出すというよりは、姿を露わにする方法かな? レアに頑張ってもらうのよ」

「えっ、私なの?」


名前を出されはたレアは驚くが、ヴェーヌは続ける。


「レア、庭師のイアペトさんを知っているわよね」

「ええ、赤いバラの屋敷の門から屋敷の玄関までのバラを植えた人ですよね」


そこにフェネが嬉しそうに話に割り込む。


「それは赤のだんだん道って名前があるのよ。アイーダお姉様が名前を付けたのよ。いい名前でしょう?」


ヴェーヌはニッコリするが、名前のことを軽く流して話を続ける。


「ええ、いい名前ね。それでイアペトさんはバラを植える時に穴を土魔法で穴を掘ったらしいの。それと同じよ。土魔法で穴を掘ればモグラ型魔獣の姿を露わにできるわ」

「なるほど、でも穴を掘る土魔法はあまり得意じゃないから、これから練習しておきます」


レアは納得するが、プレヤが疑問を口にする。


「穴を掘るのはわかったけど、穴を掘る場所はどうやって決めるんだい?」

「それはこれから考えるわ」


ヴェーヌが困ったように言うと、フェネが手を上げる。


「それなら私に任せてください。ただし、犬が必要ですけど」

「えっ、どうして犬が必要なの?」


首を傾げてヴェーヌが尋ねると、フェネはニッコリして答える。


「フフフ、それはその時まで秘密です」

「え~~~、フェネのケチ。いいじゃない減るわけでもないし」


横からアニマが口をとがらせて言うと、パシファが手を上げる。


「犬なら牧場長のガウシアさんに相談してみます。牧場には牧羊犬がいますから、一匹なら貸してもらえるかもしれません」

「牧羊犬ってなあに?」


アニマが尋ねると、パシファが説明する「。


「牧場で散らばっている羊を集めたり、誘導したり、外敵から羊を守ったりする犬のことです。では、早速ガウシアさんの所へ行ってきます」


そう言うとパシファは部屋を出て行く。それを全員がポカーンと見送った後、それまで無言だったセルクが口を開く。


「恥ずかしいことですが、私はリチウム公国のことを何も知りません。出発するまでに薬草のこととか調べるつもりですが、いつ出発するのですか?」


「そうだね。僕もリチウム公国については何も知らない。他のみんなも興味のあることを調べたいよね。そうだね、リチウム公国には転移陣で行けるから、明後日の昼前に出発しようか。お昼ご飯はリチウム公国の名物料理を食べたいからね」


ヴェーヌも同意する。


「リチウム公国の南にある港には東方の国々からたくさんの貿易船がやって来るから、いろいろな物や文化が集まっているわ。調べることは多いはずよ」


リチウム公国は、この大陸の東方への海の玄関と呼ばれているのだ。多くの東方の国々の商人や観光客が訪れる国である。しばらくすると、パシファが帰って来る。その胸には小さな白い子犬が抱かれている。


「ガウシアさんが、この子犬を貸してくださいました。生まれてから1年近く経っている女の子だそうです」


パシファの言葉が終わると、子犬がクーンと鳴く。まるでよろしくと言っているようだ。


「「「可愛いーーー」」」


全員の声が揃った。その後、全員でかわるがわる子犬を抱いて可愛がる

『星とバラの妖精』であった。


お読みいただきありがとうございます。

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