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第13話 眠れる森の美女のワルツ(第五章最終話)

 宿の部屋のリビングルームに集まって、お茶を飲んでいる一行。アースはオープンしたばかりのサウナ風呂へ行っている。


「旅の一座『銀色の星』との商談はどうなりました?」

「4月の1ヶ月間、アルタイルホールで公演することになりましてよ」

「そうですか。じゃあ、ミュージカルの公演は5月ですね」

「そうよ。余裕を持って準備ができますわ」


ヴェーヌの質問にレジェラが答えている。その隣ではセルクとバービレが会話をしている。


「どうして、回復魔法で海の赤色が青色に戻ったのでしょうか?」

「赤色は顕微鏡でしか見えない小さい魔獣の色ニャ。その赤色の魔獣が原因で海が病気になったから、その病気を回復魔法で治療したと考えればいいニャン」

「なるほど。でもあれだけの回復魔法を使うための魔力量は私にはありません」

「セルクも何年かすれば、使えるようになるニャン」


一方、少し離れた場所でフェネが尋ねるとアイーダが答える。


「お姉様、あんなに太い水槍、私も出したいです。どうすれば私にも出せるとうになるでしょうか?」


フェネの問いにアイーダは、う~んと考えてから答える。


「そうね、フェネも大人になればできるようになると思うわ」

「それは大きな魔力量が必要ということですね?」

「そうよ。フェネならキチンと訓練を積めば、できるようになるわ」


そんな雰囲気の中、『コラール』のメンバーであるヴィーヴロ、リエーロ、ドルチラ、アレグラの4人が入室して来る。彼女たちにレジェラが声をかける。


「ご苦労様。まずは座って。この国の美味しいお菓子があるわよ」


レジェラが指さす先にはチーズパイやサフランパン、ジャムクッキーが山盛りになっている。他の5皿の上には、すでに何も残っていない。そこにパシファが

お茶を差し出すと、4人はお茶を1口に飲み、お菓子に手を伸ばす。


「このチーズパイは美味しいです」

「ジャムクッキーもかなりのものです」


などと言って、すぐにお菓子の皿を空にしてしまう4人。それを見計らったレジェラが口を開く。


「それで、ファッションショーとはどういう催し者だったかしら?」


4人はセンプロ帝国の帝都ベロインにファッションショーを視察に行っていたのだ。代表してアレグラが答える。


「貴族令嬢や夫人、裕福な平民向け春用のドレスやワンピースの発表会でした。ドレスやワンピースを着たモデルと呼ばれる人たちが、流れる音楽に乗って舞台や仮設舞台を歩きます。時々立ち止まって、ポーズを決めたりします」


「なるほど。お客様の入りはどうでした?」

「ほぼ満員でした。五百人くらいだったでしょうか」

「ふむ、アルタイルホールでの公演に使えそうね」

「はい。大丈夫だと思います」


そこでレジェラはアイーダとバービレを見ると、2人はコクコクする。


「では、お屋敷に帰ってから、ゆっくり検討しましょう」


レジェラが言うと、待ちきれなかった様子でアイーダが提案する。


「さあ、私たちもサウナ風呂に行きましょう」



「「「暑~い!」」」 


『星とバラの妖精』の全員が、サウナ室から飛び出して来て、冷水で満たされている浴槽に飛び込む。


「ふぅ~、気持ちいい~」


プレヤが年齢プラス20才くらいの女性のようなことを言う。それに応じるのはアニマ。


「そうよね~、どうしてだろうね。なんか癒されるというか、融けそうというか。ふつうなら、こんな冷水に入ると震えるだけなのに」


それに全員がコクコクして、しばらく無言で恍惚の表情していた。その沈黙を破ったのは、パシファの大きな胸をジーと見ていたトルリ。


「ねえ、大人になると保有魔力量が増える理由だけど、わかったような気がするわ」

「えっ、本当? 聞かせて、聞かせて、早く」


レアが喰いつくと、トルリがメンバー中ただ1人のパシファの大きな胸をピシッと指さす。メンバーたちがパシファの大きな胸を凝視すると、パシファは顔を赤くして、腕で胸を隠す。どうやらパシファは胸が大きいことを気にして、恥ずかしく思っているようだ。それを見てトルリが言う。


「大人になると胸が膨らむでしょう? きっとあそこに魔力が蓄えられるのよ。

だから、大人になると保有魔力量が増えるのよ」

「なるほど。トルリは凄いわ。そんなことに気がつくなんて」


アニマが同意すると、トルリが胸を張る。そこにヴェーヌの冷静な声が響く。


「それは間違いよ。だって男の人は、大人になっても胸が膨らまないわ」


その言葉にハッとしたトルリはうなだれる。しかし、すぐに立ち直る。


「なんか寒くなってきた。サウナ室に行くわ」


それを聞いた全員がコクコクして、サウナ室に行くのであった。



全員がサウナ風呂から帰って来て、リビングルームに集まっている。カップのお茶を一口に飲んだアースが言う。


「さあ、そろそろオーロラを見に行くか。オーロラが出現すれば良いが」

「どこへ行きますか?」

「城壁の外は魔獣が出るかもしれなくて、危険だから、城壁の上でいいだろう」


アイーダが尋ねると、アースが答えて立ち上がる。一行はアースを先頭にゾロゾロと歩いて、城壁の上に立つ。空を見上げてヴェーヌが言う。


「雲一つない星空ですね。今日は新月で月も出ていなくて、星がよく見えます。あっ、北極星があんなに高く見えます」

「本当だ。僕たちは北極点の近くに来ているんだね」


プレヤが答えると、アニマが首を捻って言う。アニマは星のことには詳しくないのだ。


「北極点ってなあに?」

「この星の一番北の地点よ。そして、北極星は北極点の真上にあるの。また、北極星は動かなくて、他の星は北極星中心に空をグルグル回っているの」


それに答えたのはレアだ。それにアニマが質問を重ねる。


「じゃあ、その星のある方向が北ってことね。夜に方角を知るのに便利な星ね。今は教えてもらったからわかるけど、ふだんは分からないわ。どうやって探すの?」


「ほら、あそこに柄杓の形の7つの星があるでしょう。大熊座の一部で北斗七星と呼ばれる星よ。それから、Wの形をした5つの星がこちらに見えるでしょう。カシオペヤ座、神話の王妃様、アンドロメダ姫の母の星座よ。この2つから北極星を探すことができるわ」


その後、アニマに北極星の探し方を詳しく教える。隣でトルリとパシファ、フェネも神妙な顔をして聞いている。レアの説明が終わると、レジェラが叫ぶ。


「あっ、青や緑のカーテンが。まるでそよ風に揺れるように、ほら」


レジェラの声に夜空を見上げたプレヤが叫ぶ。


「オーロラだ」


その一声だけで、ただ空を見上げるだけのプレヤ。オーロラの美しさを表す言葉を見つけられなかったのだ。一行の他の者も誰一人として言葉を口にしない。そんな時が長く続いたが、フェネが沈黙を破る。


「とても美しいわ。バレエの『眠れる森の美女』のオーロラ姫もきっとこのように美しかったのだわ」

「そうかもしれないわ。いいえ、きっとオーロラ姫も美しいお姫様だったのよ。なんだかバレエの『眠れる森の美女』の曲を演奏したくなったわ。フェネ、横笛とアナマのヴァイオリン、トルリのピアノを出して」


アイーダに言われて、フェネは3つの楽器を携帯魔法から取り出すと、アイーダが言う。


「『眠れる森の美女』のワルツを演奏するわよ」


アイーダとフェネが横笛の、アニマがヴァイオリンの、トルリがピアノの準備をして、アイーダの合図で演奏が始まる。1分間にも満たない出だしの演奏が終わると優雅なワルツが夜空に流れる。その曲に合わせてオーロラが揺れる。音楽とオーロラの競演は5分ほど続いて終わった。しかし、もっと音楽を奏でて欲しいのか、オーロラはゆらゆらと揺れ続けるのだった。



お読みいただきありがとうございます。

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参考

「眠れる森の美女」 作曲 チャイコフスキー



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