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第12話 クジラ型魔物ハクゲイ

 アニマが叫んだように、海の沖、遠い場所に何か黒いものが見える。それが近づくにつれて、その姿がはっきりしてくる。さらに、その後方には白いものも見えるようになってくる。それを見てマーシャが、少しだけ怯えを感じさせる声で言う。


「あ、あれはB級魔獣のクジラ型魔獣、それが10体も。その後ろにいるのは、まさかB級魔物のハクゲイ。どうしたらいいの。いいえ、私には海神ポセイドンのトリアイナがあるわ。しっかりするのよ、私」


それを聞いてプレヤが尋ねる。


「クジラ型魔獣は強いのか? それにハクゲイってどんな魔物?」

「クジラ型魔獣は強いわ。沿岸の海が赤くなってから、遠くの海に魚を採りに行く船が増えたわ。だけど、クジラ型魔獣に襲われる船も多くて、海軍が出動したけど、なかなか討伐できないの。ハクゲイは私も初めて見るけど、水魔法を使う魔物らしいわ」



「そうなのか。ここで大人しくしていた方がいいかな?」

「そうよ。ワシに乗って攻撃しようとしてはダメよ。相手はB級の魔獣と魔物、相手のことがよくわからないのに戦ってはいけないわ。お兄様とお義姉様たちに叱られるわよ」


ヴェーヌに言われて、プレヤはコクコクして言う。


「わかった。ここにいて魔法で討伐しよう」


そんなやり取りをしていると、1体のクジラ型魔獣が海岸に近づいて来て、潮を吹く。真上ではなく、斜め上に吹き上げられた海水が海岸近くに建てられた建物に降り注ぎ、これを破壊する。


それを見たマーシャがギリギリと歯を鳴らして言う。


「おのれクジラ型魔獣、よくも私の国を。討伐してくれる」


そして、海神ポセイドンのトリアイナを持った右手を後ろに引いて、叫びながらトリアイナを投げる。


「行っけえーーー、トリアイーナ」


手を離れた聖槍は一直線に高速でクジラ型魔獣に向かい、命中して煙に煙える。そして、次の瞬間マーシャの右手に戻っていた。マーシャは右手の聖槍を見つめて呆然としている。初めて聖槍海神ポセイドンのトリアイナを使って、その性能に驚いたのだろう。そのマーシャをプレヤが賞賛する。


「凄い、凄いよ、マーシャ」


その言葉にマーシャは首を横に振り言う。


「いいえ、違うわ。凄いのは私ではなくて、この聖槍よ。そして、これを私に譲ってくれたあなたたちのお陰よ。それにまだ魔獣は残っているわ」


マーシャが指さす方を見ると、クジラ型魔獣9体とクジラ型魔物1体がいる。


「君の聖槍で討伐すればいいじゃないか」

「いいえ、私の力ではこの聖槍をあの場所まで投げることはできないわ。聖槍が私に教えてくれているの」


マーシャが悔しそうに言って、沖をみると、白いクジラ型魔物が潮を噴き上げている。吹き上げられた海水は、巨大な水球となりこちらへ飛んで来る。


「危ないわ。水魔法の巨大な水球が飛んで来るわよ」


マーシュの叫びに、海の方を見たプレヤがあわてて言う。


「フェネ、結界を張って、早く」

「バリア オン」


フェネは、慌てて全員が結界の中に入ることを確認して、結界を張る。巨大な水球はもう目の前だ。巨大な水球と結界の衝突に備えて、身体を強張らせ目を瞑る。しかし、何の衝撃もなかったし、音もしない。恐る恐る目を開けると、そこにあったのは、空に浮かぶ10枚の透明な盾。ヴェーヌが叫ぶ。


「お兄様の星魔法の盾だわ。近くにお兄様がいるのね」



「星魔法 たて座」


アースが詠唱すると、『星とバラの妖精』を守るように10枚の透明な盾が現れる。魔物の放った巨大な水球は、盾に衝突すると霧散する。それを確認してアースは詠唱する。その声には怒りを含まれている。


「星魔法 ケンタウルス座の槍」


槍が現れると、アースはそれを右手に握り投げる。槍は魔物ハクゲイに向かって高速で飛び、命中してハクヘイを煙に変える。アースのいつもと違う様子を感じたアイーダが言う。


「アース様、いかがなされたのですか?」

「ああ、『星とバラの妖精』を魔法で攻撃されて、頭に血が上ってしまった。誰でも大切な人たちを攻撃されると、そうなるだろう?」

「ええ、その通りですわ。それで、槍の魔法は初めて見ましたが、どうして槍だったのですか?」 


「鯨を狩る道具はモリだろう? だが、星魔法にモリはない。だから、槍を使ったのさ。モリと槍は似ているからな」

「なるほど。では、私も槍でクジラ型魔獣を討伐しましょう」


そう言うとアイーダは右手を上げて、詠唱する。


「水魔法 氷槍3本」


3本の氷の槍がアイーダの頭上に現れる。アイーダが右手を振り下ろすと3本の槍は、それぞれクジラ型魔獣に向かって飛び、命中してクジラ型魔獣を煙に変える。



それを見たバービレが右手を上げて、詠唱する。


「火魔法 火槍3本」


3本の火の槍がバービレの頭上に現れる。バービレが右手を振り下ろすと3本の槍は、それぞれクジラ型魔獣でに向かって飛び、命中してクジラ型魔獣を煙に変える。


続いてレジェラが右手を上げて詠唱する。


「風魔法 風邪槍3本」


3本の風の槍がレジェラの頭上に現れる。レジェラが右手を振り下ろすと3本の槍は、それぞれクジラ型魔獣に向かって飛び、命中してクジラ型魔獣を煙に変える。


すると、アースは、海面をグルリと見渡して言う。


「3人とも見事な魔法だ。それに仲良く3体ずつ討伐したのもいいことだ。ところで、もう魔獣も魔物も見当たらない。討伐は終了したようだ。後は赤くなった海だけだな。アイーダ、頼めるか?」


「はい、では『交響詩 海』で」

「ちょっと待つニャン。私の回復魔法も試してみたいニャ」

「いいわよ。お手並み拝見するわ」


アイーダの返事を聞き、バービレは右手の手のひらを赤い海面に向けて詠唱する。


「回復の光」


海面の一部が白く輝く。輝きが収まると赤い海面は青い海面に変化していた。

それを見たアースが言う。


「なるほど。あの赤い小さい魔獣らしき奴が海を病気にしていたようだな」

「アース、白鳥でゆっくりと海上を飛ぶニャン」


バービレの要望で、白鳥がゆっくりと海上と飛び回り、回復魔法の光で赤色の海を青色の海に変えていく。10分ほどで海は青一色になる。アザラシ型魔獣の討伐を終えて観戦していた冒険者たちと騎士団から歓声が上がる。


「「「おおー」」」


城壁の上のヴェーヌが言う。


「さすがお兄様とお義姉様方だわ。さあ、城門で迎えましょう」


『星とバラの妖精』が門へと去った後、マーシャは呆然として呟く。


「1本目の槍は何の魔法なのかわからないけど、氷槍、火槍、風槍はとても太くて速く飛んだわ。あんな槍は初めて見たわ。それに赤い海を青い海に戻した魔法、あれは何なのよ、本当に。あんな凄い人たちが身近にいるから、自分たちはC級パーティだと思っているのね、『星とバラの妖精』は。あっ、いけない。シャーチ様に報告に行かなきゃ。シャーチ様の魔力切れは大丈夫かしら?」


そして、マーシャは町の中へ走り去った。



着水して海岸に着いた白鳥からアースたちが降りると、1人の体格の良い冒険者が近づいて来る。


「この町の冒険者ギルドマスターのエリックだ。魔物と魔獣の討伐、感謝する。冒険者だと思うが、冒険者カードを見せてもらえるか?」


アースがポケットから金色の冒険者カードを取り出して、エリックに渡す。受け取ったエリックは、冒険者カードを見て驚く。


「A級冒険者! この大陸に3人しかいないA級冒険者!」


固まってしまったエリックの肩を軽く叩き、アースは冒険者カードを返してもらい、城壁の門へ歩き出す。すると、我に返ったエリックは叫ぶ。


「おーい、恩人のA級冒険者様のお通りだ。道を開けろ」


クジラ型魔獣と魔物を討伐した英雄を一目見ようと集まって来た冒険者たちの群れが割れて門への道ができる。その道をアースたちが進む。


「おい見ろよ。あの男が白鳥に乗っていた男だ」

「いい男だな。それに連れている女も3人全員が絶世の美女だぜ」

「あー、俺もあんな美女を連れて歩きたい」


そんな声がする中を歩き、城壁の門に到着すると『星とバラの妖精』が待っていた。駆け寄って来て抱きついたプレヤが言う。


「アース様お帰りなさい。助けていただきありがとうございます」


そんなプレヤをレジェラが引きはがす。その隣ではヴェーヌがアイーダに抱きついている。こちらはバービレに引きはがされた。それを見たフェネが呟く。


「私のお姉様なんだから、抱きつくなら私の許可を取って欲しいわ」


そんな一幕の後、合流した一行は宿へ向かった。


お読みいただきありがとうございます。

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参考

「交響詩 海」 作曲 ドビュッシー


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