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第10話 旅の一座『銀色の星』 

 アースとアイーダ、バービレ、レジェラは、ノルデンランド王国の王都ロホヘルムの転移陣から出て来た。旅の一座『銀色の星』の公演を観て、良いものであれば、アルタイルホールでの出演交渉をするためだ。


ロホヘルムの街には、自然環境と調和したシンプルなデザインの美しい建物が立ち並んでいる。その中を王立中央公園へ向かう。中央公演はとても広くて、巨大なテントがいくつもある。あるテントではアイススケートショーが公演され、あるテントではサーカスが興行されている。


アースたちは、その中の1つに入る。旅の一座『銀色の星』の公演が行われているテントだ。中は千人ほどの観客で満員だ。出し物の第一部は、この国や近くの国の民謡と踊りで、『イエヴァンポルカ』や『森へ行きましょう』が披露される。第二部はバレエ音楽と踊り。『葦笛(フランスの踊り)』、『トレパック・(ロシアの踊り)』などが演じられた。


公演が終わり、十分な集客が見込まれると判断して、座長との面会予約を取ろうとしたら、すぐに座長と面会がセッティングされる。面会室に現れた『銀色の星』の座長は青髪茶目の中年の男性だった。彼が深々と礼をして、挨拶をする。


「初めまして。この一座の座長のタスヘルです。『流れ星』の座長からの話で、アルタイルホールの設備の良さ、観客の質の高さ、宿や食事の豪華さは、旅の一座の間では評判になっています。


もちろん、報酬の高さは言うまでもないですけど。どの旅の一座もアルタイルホールからのお声がけを待っている状況です。そんな中、我々の一座の公演をご覧いただきありがとうございます」


座長の挨拶に答えたのはレジェラ。


「初めまして。アルタイルホールの支配人のレジェラですわ。公演を拝見しましたが、レベルが高いですわね。公演の内容について、2つほど質問してよろしいでしょうか?」

「もちろんです。なんでも聞いてください」

「では、まず第一部の曲ですけど、選曲の基準は何でしょうか?」

座長のタスヘルは即答する。


「よく知っている曲の方が、お客も盛り上がりやすいのです。ですから、公演する土地の国や周辺の国、地域の曲を選んでいます。アルタイルホールで公演する場合は、ソーミュスタ王国の民謡が中心になるとおもいます」


「なるごど、では次の質問です。バレエ音楽を上演する旅の一座は珍しいと思うのですけど、何故バレエ音楽を上演しているのですか?」

「この周辺の国では、有名なバレエ団もいくつかあり、バレエ音楽は身近な音楽なので、お客にも喜ばれるのです。もっとも、バレエ特有の衣装ではなく、普通の服で踊れる曲に限られますが。アルタイルホールの公演では他の演目に変更しましょうか?」


「いいえ、変更の必要はありません。ソーミュスタ王国でもバレエ音楽は人気がありますから」


そこでレジェラはアイーダとバービレを見る。2人とも黙ってコクコクしたので、座長のタスヘルに言う。


「4月か5月に、3日間のリハーサルを含めて、1ヶ月のアルタイルホールでの公演をお願いできる」でしょうか? 出演料は金貨50枚で宿と3回の食事は無料で提供させてもらいます。もし、転移陣のない土地からの移動の場合、そこからの移動費用も支払います」

「4月におねがいします。移動はすべて転移陣での移動ですから、移動費用はかかりません」

「では、交渉成立ですわね。出演料の半額を支払わせてもらいます」


そう言ってレジェラは、契約書にサインをして、金貨25枚を座長に差し出す。座長も契約書にサインをして、金貨を受け取り出演交渉は終わった。



「仕事は終わったニャ。美味しい物を食べに行くニャン。来るときに美味しい料理を出しそうな高級レストランがあったニャ」

「そう、でも昼食には少し早いから、お土産を買いに行きましょう」


仕事が終われば、後は観光の時間。まずはお腹を満たそうとするバービレにレジェラが待ったをかける。


「それもそうニャ。ここに来る時に、通りでお土産屋を見かけたニャン」

「では、その店にいきましょう。アース様はどうされますか?」


アースは買い物が好きではないことを知っているアイーダが尋ねると、アースの返事は意外なものだった。


「俺もお土産を買うに行こう。そろそろ両親の結婚記念日だから、何かプレゼントをしようと思っていたからな」

「それでしたら私たち3人も一緒に選びます」


アースは自分自身が結婚したことで、結婚記念日の大切さを認識したのだろう。そして、アイーダ、バービレ、レジェラは言うまでもなく、結婚記念日の大切さを知っている。結局、4人でプレゼントを選ぶことになった。


お土産店で選んだプレゼントは、青い模様の描かれたヴィンテージ風の食器セット。ステラ家の色は青色であること、モント夫人の好みを考えてのことである。その後、魚の干物、ブラウンチーズ、ワッフルなどを買ったが、一番たくさん買ったのは、ココスボール、マシュマロをチョコレートの膜で覆い、その上にココナッツが添えられているお菓子である。


たくさんの買い物をして、大満足の女性3人とやや疲れた感のあるアースが、小さな公園の横にある高級そうなレストランに向かっていると、女性の叫び声がした。


「助けて~、誰か助けて~」


声のする方を見ると、1人の貴族令嬢と2人の侍女たちが、こちらに向かって走ってくる。その10メートルほど後ろから、3人の剣を持った傭兵風の男たちが追って来る。走る速さから判断すると、今にも追いつかれそうだ。さらに、その後方では2人の護衛兵士らしき男たちが、3人の傭兵風の男たちと戦っている。


「アイーダ、結界を晴れ!」


そう言い残すと、アースは飛び出す。3人の女性とすれ違うと、すぐに先頭の男が剣を振り下ろしてくる。アースは左へステップしてかわすと、腹に蹴りを入れる。男は後ろに飛ばされ、もう1人の男に衝突して2人とも転がる。あっけにとられている残った男の腹に拳を打ち込むと、男は崩れ落ちる。


転がっている2人の男のうち、意識のある男にも蹴りを入れ、剣を奪うと後方に向かう。残された3人の男たちは地面に転がったままで、立ち上がる様子はない。アースは、その男たちには目もくれず、さらに後方へ走る。残っている3人のうち1人がアースに向き合う。


アースが振り下ろす剣を男が剣で受けるが、押されて後ろによろめきながら下がる。


「ひ、ひぃー、この男メチャクチャ強い! 逃げろ」


その男は背を見せて逃げ出す。それを見た残り2人の男たちも逃げ出す。それを追おうとする2人の護衛兵士らしき2人をアースが呼び止める。


「追うな。お前たちの仕事は護衛だろう」


その言葉にハッとした護衛兵士たちは、貴族令嬢の方へ走る。


「ご無事ですか。クララ様」

「ええ、見ての通り結界に守られていますから」


緑髪青目の貴族令嬢が言うと、ホッとする兵士にアースが話しかける。その手には、携帯魔法で取り出したであろう縄の束が握られている。


「倒れている男たちを縛り上げろ。取り調べる必要があるだろう?」


護衛兵士たちが縄を受け取り、倒れている男たちを縛り始めると、アイーダは結界を解除する。すると、貴族令嬢は数歩前に進み、侍女2人も従う。そして、3人はアースたちの方へ振り返り、貴族令嬢はきれいなカーテシーをして、侍女2人は深く礼をする。貴族令嬢がお礼を言う。


「助けて頂きありがとうございます。私はクララ フォン チャイコフ。チャイコフ侯爵家の長女です。お礼をしたいので、我が家にお招きしたいのですが」


アイーダが答える。


「お礼だなんてとんでもありません。当然のことをしただけです。我々は通りすがりの旅の冒険者で名乗るほどの者ではありません。そして、我々は急いでおりまして、隣のレストランでお昼を食べて、すぐに移動しなければなりません」

「でしたら、せめて、お昼だけでもご馳走させてください。そのレストランは私の家の贔屓の店ですので」


クララの申し出を無下に断ると、後が面倒なことになると思ったアイーダたちは昼食をご馳走になることにする。護衛兵士1人をチャイコフ侯爵家へ走らせ、1人は襲撃犯の見張りに公園に残し、クララを先頭にレストランに入る。店主が急いで出迎えに来て、通りに面した、2階の豪華な個室に案内された。



お読みいただきありがとうございます。

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参考

「イエヴァンポルカ」 フィンランド民謡

「森へ行きましょう」 ポーランド民謡

バレエ音楽「くるみ割り人形」 作曲 チャイコフスキー より

「トレパック(ロシアの踊り)」 

「葦笛(フランスの踊り)」 


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