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第8話 宝箱

 巨人アトランは『星とバラの妖精』と『雪の花』を見て、嬉しそうに言う。


「おお人間か。人間を見るのは何百年ぶり、いや千年ぶりか? 今度こそ俺を神との契約から解放して欲しいものだ」

「そうなるといいわね、アトラン」


巨人アトランが話すと、バナナナが言葉を返す。事情が分からないプレヤが巨人に質問する。


「神様との契約ってなあに? 僕たちにもわかるように説明して」

「昔、俺は神との戦い負け、契約させられた。それは、足を鎖で地面に繋がれて宝箱の番人になること。鎖から解放される条件は、3つの問題に正解した者に宝箱に入っている物を渡すことだ」


「わかった。僕たちが3つの問題に正解すれば、あなたは解放されるし、僕たちは宝物がもらえる。そういうことだね」

「その通りだ。俺は待ちくたびれている。早速だが問題を出していいか?」


巨人は千年も待っていたからか、急いでいるようだ。プレヤは同意する。


「いいよ。さあ、最初の問題をどうぞ」


言われて巨人アトランは後ろから1枚の石板を取り出し、フレヤたちに見せる。その石板には問題が書いてあった。


問題1

巨人を縛っている鎖は、神話に登場する人物を岩に繋いでいた鎖である。神話で岩に繋がれていた人物は誰か?」


問題を読んだプレヤはニッコリして答える。


「アンドロメダだね」


すると、石板は煙になって消える。巨人アトランが言う。


「正解だったようだ。よく知っていたな」

「アンドロメダ座という星座の神話だよ。母親のカシオペヤが娘のアンドロメダの美しさを自慢し過ぎたために、神々が怒ってアンドロメダをクジラの怪物の生贄にしようと岩に鎖で繋いだ、という神話があるんだ」

「そうなのか、物知りだな。その調子で頼むぞ」


そう言って巨人アトランは後ろから2枚目の石板を取り出した。そこに書かれていた問題は


問題2

神話の槍の中で、今は空にある槍の持ち主は何者か?


この問題も見た瞬間、プレヤは即答する。


「ケンタウロス」


すると、石板は煙になって消える。巨人アトランは驚いて言う。


「これも正解か! お前は凄いな」

「そうでもないよ。僕の仲間ならみんな知っていることだよ。ああ、ケンタウロスは上半身が人間で、下半身が馬の生き物。射手座のケイローンもケンタウロス族の1人だよ」

「そうか。よし、あと1問だ、頑張れよ」


期待した様子で言って、巨人アトランは後ろから3枚目の石板を取り出した。そこに書かれていた問題は


問題3


巨人を題材にした曲を答えなさい。


問題を見たプレヤはフェネを見る。この問題はプレヤにはわからない。音楽の問題はフェネに任せるべきだと思ったからだ。プレヤの視線を受けてフェネがコクコクして答える。


「交響曲1番 巨人よ」


フェネが言うと石板は煙になって消える。そして、巨人を地面に繋いでいた鎖は

ピカッと輝き消滅する。それを見た巨人アトランは喜んで叫ぶ。


「おおー、鎖が消えた。つ、ついに俺は解放されたのか」


巨人アトランはジャンプしたり、逆立ちしたりしていたが、落ち着くとプレヤたちに深々と頭を下げて礼を言う。


「人間たちよ、礼を言う。俺が自由になったのもお前たちのお陰だ。さあ、宝箱はお前たちの物だ。俺はこれで失礼する」


そう言って巨人アトランは歩き出したが、数歩で歩みを止めて頼んだ。


「なあ、交響曲1番 巨人ってどんな曲だ」

「とってもいい曲よ。数十人で演奏すると迫力のある演奏ができるけど、今は3人しか演奏できる人間がいないし、楽器の種類も足りないわ。それにとっても長い曲だから、3分くらいなら、今演奏できるわ」

「そうか。それでいいから演奏してくれないか?」

「わかったわ。ちょっと待ってね、準備するから」


フェネは、携帯魔法でシンバルとティンパニー、銀色のヴァイオリンと弓を取り出して、アニマとトルリを呼んで言う。


「第四楽章の頭から3分ほど演奏するわよ。最後はデクレッシェンドでフェードアウトよ」


アニマとトルリはコクコクする。準備が整うと、トルリがシンバルを大きく鳴らして演奏が始まる。フェネの横笛からはラッパの音が響き、アニマの持つ弓が激しく動く。3分ほどで曲がフェードアウトして演奏が終わると、巨人アトランが大きな手でパチパチパチパチと拍手をして言う。


「いい曲だ。俺のテーマソングにふさわしい。満足だ」


それだけ言うと、巨人アトランはズシーン、ズシーン、ズシーンと大きな足音を響かせて去る。去り行く巨人を全員で見送っていたが、トルリが言う。


「ねえ、宝箱には何が入っているのかな~?」「

「そうだった。みんな、宝箱の所へ行こう」


プレヤの掛け声で全員が宝箱の所へ行く。プレヤが宝箱の前に立って言う。


「さ~て、何が入っているのかな? 宝剣か、宝石か、エリクサーか、とっても美味しいお菓子か、どれだろう?」


プレヤがゆっくりと宝箱の蓋を開けるが、中を見て戸惑った様子で口を開く。


「こ、これは槍かな?」


宝箱の中に入っていたのは、3つの穂先がある1本の槍。プレヤの疑問に答えたのはマーシャ。


「その槍は海神ポセイドンのトリアイナよ。投げれば必ず命中して、その後は自動的に手元に戻る槍。漁業が重要な産業である私たちの国にとっては、聖槍ともいうべき槍なの」


マーシャは、聖槍トリアイナを熱く見つめながら説明する。まるで、とても美しい宝石を見つめる貴族令嬢のようだ。欲しいという気持ちが溢れ出している。それを見たプレヤが、『星とバラの妖精』一人ひとりの顔を見ると、全員がコクコクする。


プレヤはマーシャに申し出る。


「マーシャ、その槍はあなたにあげるよ」


マーシャは目を大きく開いて固まる。そして、震える声で返す。


「い、いいの? この聖槍トリアイナを手に入れるための3つの問題は、すべてあなたたちが正解したのに」

「いいよ。僕たちの誰も槍は使えないから、槍をもらっても宝の持ち腐れだ。だけど君の武器は槍だろう? 君が持つ方が槍も嬉しいだろう。それに僕たちがここに来たのは美味しいバナナを貰うためだからね」


マーシャはプレヤの手を握り、ブンブン大きく振りながら言う。


「ありがとう、ありがとう。どんなお礼をしていいか、私にはわからないわ」

「お礼なんていらないよ。もう美味しいバナナやイチゴやブドウを貰っているからね」


その言葉にマーシャは、自分の槍を『雪の花』のメンバーに渡して、震える手を宝箱の中に入れて槍を掴み、ゆっくりと取り出す。そして、自分の前に立ててフゥーとため息をついて、槍の上から下までじっくりと見て言う。


「感激だわ。聖槍、海神ポセイドンのトリアイナをこの手に持てるなんて」


他の者も黙ってマーシャと聖槍、海神ポセイドンのトリアイナを見ていたが、しばらくして、プレヤが言う。


「さて、宝箱も開けて聖槍ももらったし、次はどうしようか? この土地を見て回りたい気もするけど」


それにバナナナから声がかかる。


「人間がこの土地にいられる時間は、限られているのよ。そろそろその時間がくるわ。できれば、最初に聞かせてもらった曲をもう一度演奏してくれないかな? ブドウの妖精グレーナとイチゴの妖精ストロナはまだ聴いていないから」


「そうなのか、この場所でゆっくりとできないのは残念だ。フェネ、どうする?」

「いいわよ。じゃあ、私が横笛を演奏するから、みんなは『眠りの精』の歌詞をラララで歌って」

「「「わかった~~~」」」


フェネが横笛を口に当てて、演奏を始める。音色はチェレスタの音色。


♪ ラ~ラ~ラ ラララ~ラ ララララララ~ラ~


フェネの横笛が奏でるメロディに乗せて。全員がラララで歌う。歌が終わるとフルーツの妖精3人がパチパチパチと拍手をする。


「とっても上手だったわ。それに巨人アトランを解放してくれてありがとう。彼は時々大声で叫ぶから、五月蠅かったの。いなくなってこの場所が静かになるわ」

「感動したわ。イチゴが食べたくなったら、いつでも来てね。大歓迎するわ」


ブドウの妖精グレーナとイチゴの妖精ストロナもお別れの言葉を贈る。そして、『星とバラの妖精』と『雪の花』は出会った場所に、バナナナに送ってもらった。



お読みいただきありがとうございます。

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参考

「投げれば必ず命中して、その後は自動的に手元に戻る槍」は北欧神話の主神オーディンが持つ槍「グングニル」を参考にしました。


「交響曲1番 巨人」 作曲 マーラー 

「眠りの精」 作曲 ブラームス 作詞 ドイツ民謡 訳詞 小川 友吉



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