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第6話 『雪の花』のマーシャ

 町をグルリと取り囲む城壁の門に兵士がいたが、止められることもなく、簡単に通過できた。外は草もほとんど生えていなくて、所々に岩が転がっている荒野である。周りをキョロキョロと見回していたアニマが空を見て言う。


「鳥が飛んでいるわ。何の鳥かしら?」


青い空を背景に、高い所を飛んでいる鳥がいるのだが、小さすぎて何の鳥かわからないのだ。ヴェーヌが詠唱する。


「星魔法 ぼうえんきょう座」


現れた望遠鏡を覗いてヴェーヌが言う。


「あれは白鳥よ。カンス大山脈の北側より暖かいこちら側に渡って来ているのね。暖かくなったら、北側に帰るのかしら」

「私も見た~い。望遠鏡を覗かせて」


アニマが言うと、他のメンバーも見たがって、結局全員で白鳥を見ることになった。



妖精の森の直前にも荒野が広がっている。森に近いからか、丈の短い草も多少生えているが、岩の方が多い。そこに『星とバラの妖精』の姿がある。


「これから妖精の森に入るから、その前にたっぷり休憩をとろう」


プレヤの提案に全員がコクコクする。そして、レアの詠唱の言葉が響く。


「土魔法 四阿」


土が盛り上がり、四阿と大きなテーブル、8脚のイスが現れる。7人はイスに座り、パシファはお茶の準備をする。バナナでお腹は一杯なのでお菓子はない。全員にお茶が飲み始めると、プレヤが言う。


「巡回市でアニマが使った詠唱の言葉はいつもと違ったし、風魔法の威力も上がっていたよね。どうして?」


「風球よりウインドボールの方がカッコ可愛いから、イメージしやすくて、その結果威力も上がたのよ」

「なるほど。魔法の威力はイメージの強さによるから、一理あるわ。僕も水球じゃなくてウォーターボールにしてみようかな? でも火球は火球のままかな?」


「えっ、火球よりファイヤーボールの方がカッコ可愛いでしょう?」

「うん、確かにそうだね。でも僕たち星魔法一族にとっては、火球の方が強くイメージできるんだ」

「どうして? 説明して」


「流れ星よりずっと明るくて、長い時間見えるのが火球。それに、ファイヤーボールは火の球だけど、火球は芯に岩があるから威力が高いんだ」

「そうか、イメージを強くする言葉って人によって違うのね」


「うん、もう1つ。実は僕とヴェーヌは無詠唱でも魔法が使えるんだよ。こんな風にね」


プレヤが少し離れた1点を見つめると、水球が現れる。


「「「えっ、すご~い」」」

「だけど詠唱する方がカッコ可愛いから、無詠唱は使わないんだ」


そう言って、プレヤはニッコリする。そんな詠唱の言葉を話題におしゃべりをしていたが、突然トルリが指さして言う。


「あっ、あっちの方で白い物が2つ森から出て来たわ。熊みたいだけど」


全員がトルリの方を見る。ヴェーヌが言う。


「あれがシロクマ型魔獣かしら? 体は熊型魔獣と同じだけど、体毛は白いわ」


それを聞いたアニマが、トルリとレアに呼びかける。


「私たちでシロクマ型魔獣を討伐しようよ」


トルリとレアがコクコクしてイスから立ち上がり、シロクマ型魔獣よく見える位置に並び立つ。中央がアニマでその左右にレアとトルリだ。最初に詠唱したのはレア。レアはサターンワンドを少し前に突きだして詠唱する。


「星魔法 サターンズリングズ」


レアの前に白く光る環が現れる。レアはサターンワンドを身体の横に持ってきてから素早く前に突きだす時に大声で叫ぶ。


「アタッーク」


続いてアニマが人差し指だけを立てた右手を上に向けて、詠唱する。


「風魔法 ウインドボール」


そして、素早く右手を前に振り下ろして大声で叫ぶ。


「ブローイングスルー」


すると強い風がビューと前の方へ吹いて行き、サターンズリングズのスピードを加速させて、シロクマ型魔獣の1体に命中し、シロクマ型魔獣を煙に変える。

次に詠唱したのは、トルリ、トルリは人差し指だけを立てた右手を上に向けて詠唱する。


「水魔法 オーディンのグングニル」


すると、指先の上に異国の槍の形をした水槍が現れる。そして、トルリが大声で叫ぶ。


「ピアース」


すると水槍は、ゆっくりとシロクマ型魔獣に向かって飛び始める。すぐにアニマが風魔法で支援するちと、水槍は速度を増して飛び、シロクマ型魔獣に命中して、魔獣を煙に変えて、魔石を落とさせた。


「つ、ついに魔法で魔獣を倒したわ」


アニマが感激して叫ぶと、トルリとレアも叫ぶ。


「やったー!」

「信二らえないわ1 私が魔獣を討伐できるなんて」


他のメンバーも驚く。


「「「おおー、凄い」」」


興奮が収まると、プレヤが言う。


「凄いよ。協力して魔法で魔獣を倒すなんて」


アニマが胸を張って答える。


「私たちは保有魔力量が少ないでしょう? でも、魔法で魔獣を倒したかったの。だから、協力することにしたの」


それを聞いて、フェネが申し出る。


「私も風魔法で魔獣を討伐したいわ。私も協力させて」

「もちろん大歓迎よ。頑張って練習しよう」

「ありがとう。ところで、魔石を取りに行かなくていいの?」


アニマとトルリは、ハッとして走り出した。そして、シロクマ型魔獣が煙になった場所をキョロキョロと探す。すぐにアニマとトルリは、魔石を持った右手を上に突き上げて叫んだ。


「「あったよ~」」


その声にホッとした時、妖精の森から出て来た3人の冒険者の中の1人の少女がアニマたちに呼びかける。彼女は金髪赤目で年齢はアニマと同じくらいに見える。防具も服も白を基調とした物で統一されている。槍の柄の白く塗られている。


「ねえ、こちらにシロクマ型魔獣が来なかったかしら?」

「来ましたけど、私たちが討伐しました。ダメだった?」


問いかけにアニマが不安そうに答えると、明るい声で返事が帰って来た。


「心配しなくても大丈夫よ。たまたまシロクマ型魔獣を見つけたから討伐しようとしただけだから。あら、あなたたちとは冒険者ギルドで会ったわね」


そう言われて、アニマは相手の顔と手に持つ白い槍を見て思い出した。


「あなたは冒険者パーティ『雪の花』のリーダー、マーシャさんでしたか?」

「そうよ、他のメンバーはどうしたのかしら?」

「あっちにいるよ。私たちは魔石を拾いに来たの」


アニマの視線の先を見て、マーシャが言う。


「あら、あそこに四阿なんてあったかしら?」

「私たちのメンバーが土魔法で建てたのよ。いい四阿でしょう?」

「そ、そうなのか。私たちもお邪魔させてもらっていいかしら?」

「いいわよ。一緒にいきましょう」


土魔法で四阿を建ることができる土魔法使いなど滅多にいない。だからマーシャは驚いて、興味を持ったことに気が付いたアニマはマーシャを誘ったのだ。プレヤたちの所へ戻ったアニマは、レアに頼んだ。


「レア、お客様用の四阿を建てよ」

「土魔法 四阿」


レアがアニマの頼みに3人用の四阿とテーブル、イスを土魔法で作ると、マーシャたちは目を丸くして驚く。その3人をパシファがイスへ案内して、お茶とクッキーを出す。お茶はパシファの魔法で程よく熱いお茶。そのお茶を一口飲んだマーシャが言う。


「美味しいわ。なんて美味しいお茶なの」


そして。クッキーを食べて言う。


「こんな美味しいクッキーは食べたことがないわ。こんなに美味しいお茶とクッキーを頂いて良かったのかしら?」


それに答えたのはプレヤだ。


「そうだろう、そうだろう。パシファのいれたお茶は絶品だからね。冒険者ギルドで魔獣の名前の色のことを教えてもらったお礼だし、獲物のシロクマ型魔獣を横取りした形になったようだし。遠慮なくどうぞ」


「では遠慮なく。獲物の横取りのことは気にしなくていいわよ。私たちが妖精の森に来た目的は別にあるのよ。シロクマ型魔獣はたまたま見つけたから、討伐しようと思っただけなの」


「別の目的? 魔獣討伐以上に大切な目的があるのかい?」

「ああ、ほらあそこに馬が6頭木に繋がれているでしょう? 3頭は私たちが乗って来た馬。残りの3頭の馬に乗っていた人たちの1人の護衛が私たちの目的よ。あっ、クッキーが美味しいから、つい話してしまったわ。このことは内緒にしてね」


プレヤは6頭の馬に目をやってから答える。


「わかった。それでその3人は?」

「妖精の森のどこかにいるはずだけど、妖精の森は広いから探すのは難しいわ。まあ、あてもなく探し回るしかないわね。それで、あなたたちは妖精の森で何をするつもりなの?」


「僕たちはフルーツの妖精に会って、美味しいフルーツを貰いに行くんだ。ただ妖精の森のどこかは決まってないけど」

「そう、だったら私たちも同行していいかしら? お互いに、妖精の森の中ではっきりした目的地はないようだから」


「そうだね。よろしく」

「こちらこそ、よろしくね」


こうして2つの冒険者パーティは一緒に行動することになった。


お読みいただきありがとうございます。

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