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第5話 巡回市

 宿を出た『星とバラの妖精』は冒険者ギルドへ向かう。妖精の森とその周辺の情報を手に入れるためである。冒険者ギルドに入り、掲示板へ向かうとマップの前に立つ。


「妖精の森まで歩いて30分だね、近いね。ついでに何か採集できる薬草とかないかな?」


プレヤが言うと、ヴェーヌが首を横に振りながら注意する。


「危険な魔獣がいるかどうかを確認するのが先でしょう? お兄様たちにいつも言われているじゃない」

「そうだった。え~と、魔獣、魔獣は」


プレヤはマップに記載されている魔獣を探していたが、首を捻った。


「魔獣の名前がいろいろな色で書いてあるよ。何だろう、これ?」


他のメンバーに聞いても誰も答えられない。そこに隣で討伐依頼を見ていた冒険者パーティから声がかかる。少女3人のパーティでそれぞれ槍、剣、弓を持っている。声をかけてきたのは柄が白い槍を持つ金髪赤目の少女だ。プレヤがキョトンとしていると彼女が自己紹介をする。


「私はマーシャ、冒険者パーティ『雪の花』のリーダーよ。魔獣の名前の色のことを知らないみたいだから、教えてあげる。お礼はいらないから、気にしないで。この国では魔獣の名前をランクに合わせて色付けしてあるの。A級以上は黒、B級は灰色、C級は赤、D級以下はオレンジってね」


それを聞いてプレヤはマップを見て確認してから、尋ねる。


「ということは、黒と灰色の名前の魔獣はないから、C級冒険者なら討伐できる魔獣しかいないってことだね。あっ、僕の名前はプレヤ、この冒険者パーティのリーダーをやっている」


「そうよ。それであなたたちの目的地はどこ?」

「妖精の森だけど」

「そうなのね、私たちも妖精の森に行くのよ。私たちは馬で行くから、先に行っているけど現地で会ったらよろしくね」

「もちろんだよ。魔獣の名前のことを教えてくれてありがとう」


冒険者ギルドを出て行く『雪の花』の3人を見送って、レアが言った。


「馬に乗って移動する冒険者って珍しいわ。お金持ちのパーティかしら」

「うん、服も武器も防具も高級品だったわ。それになんか気品もあったし、貴族かもしれないわ」


トルリが同意すると、他のメンバーもコクコクする。そこにプレヤが声をかける。


「それじゃあ、危ない魔獣もいないようだし、採集できる薬草や狩れる獣を探そう」

「森の入口付近にヒエヒエ草が生えているようです。冷え性の薬になる薬草です。是非採取させてください」


セルクが希望を言うと、フェネとアニマも続く。


「池の近くにハーブの群生地があるようです。どんなハーブかみてみたいです」

「シロクマ型魔獣を見てみたいわ。できれば討伐したいわ。どんな魔獣なのかしら?」


他には希望が出なかったので、『星とバラの妖精』は冒険者ギルドを出て、妖精の森へ出発する。城壁の門へ歩いて行くと、途中で広場が賑わっていた。屋台や荷車、あるいは地面に広げた布に売り物が並べてある。広場の入口で眺めていたら、人の良さそうなおじさんが通りかかったので、プレヤは尋ねてみる。


「これは何の催し物でしょう?」

「ああ、これは巡回市だよ。2週間に1回、いろいろな商会がやって来て市を立てるんだ。地元民も参加できるフリーな市だ。お祭りみたいな市だよ」

「わぁー、そうなんですね。ありがとうございます」


おじさんにお礼を言って広場の中へ入ると、まず向かったのは魚が並んでいる屋台である。塩漬けにされたさけやます、ほっけ、さば、さんまなどが並べられている。みんなで屋台の前に行き、店番のおばちゃんにアニマが尋ねる。


「塩漬けの魚って塩味が濃くないの?」

「料理する前に薄い塩水に入れて塩抜きするさね」

「へぇ~、どんな風に料理にして食べるの?」

「焼き魚にして食べてもいいし、鍋料理に入れてもいいし、いろいろあるね。寒いこの季節だと鍋料理がいいさね」


ゴクリと誰かの喉が鳴り、たくさんの塩漬けにされた魚をお土産に買う。パシファが、塩漬けにされた魚の横に置いてある液体の入ったビンを指さして尋ねる。


「その液体は何ですか? 美味しいものですか?」

「ああこれかい? 魚を何年か塩漬けにした時に出てくる汁で、魚醤っていう調味料の一種さね」

「1本ください」


調味料と聞いて、思わず購入したパシファである。音楽魔法一族で使われている大豆、小麦、塩を原料とする醤油と比べてみたいのだろう。売ってもらった魚醤のビンをパシファが大切そうに抱えていると、セルクも尋ねる。


「ここで食べられる魚はないのですか?」

「この屋台は塩漬けの魚しかないよ。2つ隣の屋台に親子サンドが売っているから、それを食べるといいさね」


セルクは首を捻って、もう一度訪ねる。


「親子サンドって何でしょうか? 初めて聞く食べ物の名前です」

「ああ、この国の名物料理さね。さけの身とその卵のいくらを白パンに挟んだ食べ物だよ。まあ一度は食べてみる価値はあるさね」

「ありがとうございます。早速食べに行ってみます」


ということで、『星とバラの妖精』は2つ隣の屋台に移動する。パンの白に挟まれたさけのピンク、いくらの輝く赤が食欲をそそったのか、パクパク、ムシャムシャと全員が夢中で食べていた。しかし、しばらくして、フェネが言う。


「塩味が強すぎるわ。白パンよりご飯の方が合うと思います。名前は親子丼とかでどうでしょうか?」

「それはいい名前だと思う。でも、鶏肉と鶏卵を使った親子丼がすでにあるわよ」

「そうだったわ。じゃあ、海の親子丼でどうかしら?」

「うん、いい名前ね。でも今は何か飲み物が欲しいわ」


トルリが同意すると同時に飲み物が欲しいと主張すると、全員がコクコクする。そこで、果実水を買っても飲んでいると、レアが言う。


「デザートに甘い物が欲しいです。あそこでバナナを売っているようですから行きませんか?」


バナナを売っている店は、地面に布を敷いてその上にサイコロの形に切った、皮をむいたバナナが置いてあるだけだった。そして、店員らしき7才くらいの女の子が客の呼び込みをしている。


「美味しいバナナだよ~。とっても甘くて美味しいよ~。1個が銅貨1枚だよ~」


とりあえず、1人1個ずつ買って口におれた。すると、全員が目を丸くして叫ぶ。


「「「あっま~い」」」


それからは、全員がパクパクとバナナをお腹が一杯になるまで食べ続ける。そんな中、大満足の様子でヴェーヌが女の子に尋ねる。


「とっても美味しいバナナだけど、不思議に思うことがあるの。理由を聞いてもいいかしら」

「いいわよ。なあに?」


「それはね、バナナってふつう1本ずつ売っているのに、どうしてわざわざ切って売っているの?」

「それはね、バナナ1本は銅貨10枚くらいするでしょう? 私たち子どもにはなかなか買えないの。だから、小さく切って安く売っているわ。それに、あそこを見て」


女の子は、振り向いて8メーチルくらい後ろを指さす。そこでは4人の子どもたちが、布の上に置いてある大きなバナナを小さく切っている。そして、その横には長さが5メートルくらいの巨大なバナナが置いてある。それを見た『星とバラの妖精』は全員固まる。やっと再起動したヴェーヌが尋ねる。


「ねえ、あんなに大きなバナナをどこで手に入れたの?」

「秘密よって言いたいけど、バナナをたくさん買ってくれたから特別に教えてあげるわ。妖精の森よ」


「えっ、こんなに寒い土地で、しかも今は冬なのにバナナがとれるの?」

「ううん。バナナが木になっているのじゃなくて、妖精の森で妖精の曲を歌うと、バナナが空中に突然現れて落ちて来るの。私はお母さんがいつも歌ってくれる『眠りの精』を歌うのよ」

「ありがとう。私たちも妖精の森へ行ってみるわ」


ヴェーヌがお礼を言い、立ち去ろうとした時に大きな声がする。


「おい、その大きなバナナを俺たちによこせ。貴族に高値で売れそうだからな」


声がする方を見ると、冒険者風の人相の悪い男5人が、バナナを切っている子どもたちの方へ歩いて来ている。プレヤとヴェーヌ、セルク、トルリの4人が飛び出して、子どもたちと冒険者たちの間に立つ。


「なんだお前たち、文句があるのか。邪魔すると痛い目に合わせるぞ」

「やれるもんならやってみろ。僕たちは強いぞ」


男たち5人とプレヤとヴェーヌ、セルク、トルリたち4人は剣を抜き睨み合う。パーティリーダーらしき男が号令をかける。


「くっ、面倒だ。おい、お前たちやっちまえ」


4人の男たちが襲いかかってくる。リーダーらしき男は後ろで高みの見物を決め込んでいる。少女4人など簡単にやっつけられると思っているのだろう。4人の男たちは全員、最初の一太刀で地面に倒された。


リーダーらしき男が驚いていると、アニマの詠唱する声がする。


「風魔法 ウインドボール」


そして、素早く右手をパーティリーダーらしき男の方に振り下ろして大声で叫ぶ。


「ブローイングスルー」


すると強い風がビューと男の方へ吹いて行き、男は倒れる。


「凄いよアニマ。いつの間に風魔法の腕を上げたんだい。それに今の詠唱の言葉はいったい何なんだい」

「それは後で。今は警備の兵士を呼ばなきゃ」


呼ぶまでもなく、騒ぎを聞きつけた兵士たちがやってくる。一番偉そうな兵士が倒れている男たちを見てから、尋ねてきた。


「大丈夫ですか? この男たちは手配中の悪人C級冒険者パーティです」

「大丈夫です。子どもたちからバナナを奪おうとしていたんです。許せない男たちです」


自分も子どもであるプレヤが答えると、兵士が言う。


「そうですか。悪人の逮捕にご協力ありがとうございました」


そして、兵士たちは5人の男たちを縄で縛って連れて行った。子どもたちがお礼を言う。


「お姉さんたち、ありがとう。お姉さんたちはとっても強いのね」

「そうさ。僕たちは凄く強いんだ、C級冒険者パーティだからね。もうこれで安心してバナナが売れるね」

「うん、また買いにきてね」

「ああ、また来るよ。じゃあ、僕たちは妖精の森に行くよ」

「「「バイバイ~」」」


こうして『星とバラの妖精』は妖精の森へと出発した。



お読みいただきありがとうございます。

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参考

「眠りの精」 作曲 ブラームス 作詞 ドイツ民謡 訳詞 小川 友吉


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