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第3話 魔法の訓練

 シャボン玉を飛ばすために使ったビーカーとストローを、ミマに返してお礼を言った後、プレヤとフェネはパシファとセルクを捜しに屋敷に帰った。ノルデンランド王国に行けるようになったことを伝えるためだ。


ノアとアニマ、トルリは魔法の練習をするために屋敷の野外訓練場に向かう。野外訓練場は他に人がいなくて貸し切り状態だった。最近は『星の輝く赤いバラとコラールの里』の魔法訓練場を使う人が多いからだ。


「最初は私からね。何かアドバイスしたいことがあったら、遠慮なく言って」


そう言うとレアは土星の飾りの付いたサターンワンドを手に持って詠唱する。


「星魔法 土星の環」


レアの前に白く光る環が現れる。レアがサターンワンドをゆっくりと前に向けると、白く光る環は前にゆっくりと動き出す。この速さでは魔獣討伐に使えない。それを見たアニマとトルリは首を傾げて考える。少しの時間経った後アニマが口を開く。


「保有魔力量が少ないから、動きがゆっくりなのは仕方がないけど、なにか工夫できそうな気がするわ」

「そうね、レアはおとなしい性格だからか気持ちが入っていない気がするの。魔法はイメージが大切だから、もっとテンションを上げようよ」


トルリもコクコクして言う。


「私も同感だわ。そうね、まずは詠唱の言葉を変えてみよう。土星の環をサターンズリングズに変えてみようか。その方がカッコよくて可愛い、カッコ可愛いと思うの。それから舞台でダンスを踊る時のように堂々と胸を張ろう。杖も前に向ける時にも何かセリフをつけよう。それから詠唱した後に杖を横に持ってきてから前に素早く突き出そう。一番大事なのは自信よ、自分はできる子って思い込むの」


さすが旅の一座で数多くの舞台を踏んできたトルリ、カッコ可愛いを知っている。トルリに言われて、レアが答える。


「やってみるわ。舞台の上にたった気分ね。普段の自分と違うカッコ可愛い自分になった気分ね」


そしてレアはサターンワンドを少し前に突きだして詠唱する。今度は張りのある大きな声だ。


「星魔法 サターンズリングズ」


レアの前に白く光る環が現れる。レアはサターンワンドを身体の横に持ってきてから素早く前に突きだす時に大声で叫ぶ。


「アタッーク」


白く光る環は前よりもずっと速く飛んでいく。


「やったわ。自分でも信じられない。自分が自分じゃないみたいだわ。自信を持つって大切なのね」

「うん、さっきよりずっと速いね。サル型魔獣くらいまでなら煙に変えられそうな速さだわ。レアはやればできる子よ。」


レアが目を輝かせて言うと、アニマが誉める。そしてレアの肩をポンポンと軽く叩いて言う。


「場所を変わって。今度は私の番よ」


レアと場所を変わると、アニマは人差し指だけを立てた右手を上に向けて上げて詠唱する。


「風魔法 風球」


そして、素早く右手を前に振り下ろして大声で叫ぶ。


「ぶち壊せー」


すると少し強い風が落ち葉を巻き込みながら、前の方へ吹いて行く。それを見たレアが感想を述べる。


「けっこう強い風魔法が使えるようになったわね」

「うん、とても小さいシャボン玉がたくさん飛んでいくのをイメージしたの。うまく風魔法が使えたわ」

「私のように詠唱の言葉をカッコ可愛い言葉にしたらどうかな? 風球じゃなくてウインドボールとか」


そこにトルリも参加する。


「ぶち壊せー、は女の子としてどうなのかしら? どんな時でもカッコ可愛くあるべきだと私は思うわ」

「そうかな? 今までそういうことを考えたことなかったわ」


「そうよ、カッコ可愛いは正義なのよ。え~と、どんな言葉がいいかしら。吹っ飛ばせ~、いやこれもカッコ可愛くないわ。吹き抜けろ~、いやこれもダメ、ブローイングスルーかしら?」

「うん、それはなんかカッコ可愛いわ。それでもう1回やってみる」


そう言うとアニマは人差し指だけを立てた右手を上に向けて詠唱する。


「風魔法 ウインドボール」


そして、素早く右手を前に振り下ろしながら大声で叫ぶ。


「ブローイングスルー」


すると強い風がビューと前の方へ吹いて行く。それを見たアニマが喜んで言う。


「やったわ。私の風魔法もサル型魔獣くらいまでなら煙にできそう」

「うん、十分強い風魔法よ。じゃあ次は私の番ね」


トルリは人差し指だけを立てた右手を上に向けて、詠唱する。


「水魔法 オーディンのグングニル」


すると、指先の上に異国の槍の形をした水槍が現れる。そして、トルリが大声で叫ぶ。


「ピアース」


すると水槍は数メ-トル飛んで落ちた。トルリはガックリ肩を落とす。


「これだと手で持って投げた方がましだわ」

「トルリは魔法が使えるようになってまだ日が浅いから仕方ないわよ。むしろこの短期間で水槍が出せるようになったのは凄いわ」


レアが励ますと、アニマも続く。


「そうよ。魔力保有量が急速に増えているのよ。ピーマンやニンジンもたくさん食べているのが良かったのよ」

「うん、最近ピーマンを食べても苦く感じないないの。ニンジンも甘いと感じるようになったわ。そのせいか、料理の中にピーマンやニンジンが入っていると青色やオレンジ色で料理が美味しそうに見えるの」


「わあー、トルリって大人になったみたい。それで、ピアースってどんな意味?」

「突き刺せって意味よ。この間読んだ伝説の中で出て来たの。その時からカッコ可愛いと思っていたのよ」

「そうか~、たしかにカッコ可愛いよ。じゃあ、今度は私の風魔法と合わせる番ね。でも風魔法を合わせるってどういうイメージかしら?」


アニマの疑問にレアが答える。


「水槍の上下左右と後ろをシャボン玉で包んで運ぶイメージかしら?」


少し考えてアニマが言う。


「なんとかできそうよ。やってみよう。私はトルリの横に立つわね。その方が水槍と目標をよく見ることができるから」


アニマがトルリの横に立つと、トルリは人差し指だけを立てた右手を上に向けて上げて詠唱する。


「水魔法 オーディンのグングニル」


そして、異国の槍の形をした水槍が現れると大声で叫ぶ。


「ピアース」


それに一瞬遅れてアニマも詠唱する。


「ブローイングスルー」


すると強い風が、トルリの水槍を加速させる。水槍はビューンと前の方へ飛んで行き20メートルくらい先まで飛んだ。


トルリとアニマ、レアは手を取り合って喜ぶ・


「「「やったーーー」」」


トルリが興奮して言う。


「これならイノシシ型魔獣でも煙に変えられそうよ」

「そうよ、いけるわ」

「いや、もっと強い魔獣でも煙に変えられるかも」


レアとアニマも興奮して言う。まるで狩りの大会で優勝したみたいな雰囲気である。ひとしきり騒いだ後、ノアの土星の輪とアニマの風魔法のカップリングも試したが、これもうまくいった。トルリが決意を込めて宣言する。


「私、魔法のトレーニングを頑張るわ。ご飯も好き嫌いしないでちゃんと食べる。睡眠もしっかりとる。そうすれば、保有魔力量が増えて強い水魔法のオーディンのグングニルを飛ばせるようになるから」


アニマとノアも続く。


「私も頑張る。風に吹かれて舞い上がるシャボン玉に乗って空を飛べるようになりたいから。シャボン玉に乗る少女と呼ばれたいの」

「わたしは魔法を使う時は、地味な私はお休みにして、舞台でダンスを踊る時のように自信満々に振舞うわ。その方が魔法の威力が上がるもの」


そこにパシファがやって来る。


「みなさん、ヴェーヌさんが来ました。お茶にしようとプレヤさんが言っています。今日のお菓子はマドレーヌですよ」

「「「わーい。すぐ行くわ」」」



ヴェーヌの部屋に『星とバラの妖精』の8人が集まっている。「いただきまーす」とプレヤが発声すると全員が唱和して、マドレーヌをパクパク食べ始める。

全員がマドレーヌを食べ終え、美味しかった~と満足の声が上がる中、プレヤが発表する。


「みんな、オーロラを見ることできるかもしれないよ」

「えっ、どういうこと、どういうこと」


アニマが食い気味に尋ねると、プレヤは答える。


「アニマ、落ち着いて。今日のアースクイーン会議でノルデンランド王国に連れて行ってもらえることになったんだ。レジェラさんがノルデンランド王国にお仕事で行くから、そのついでだけどね。」


「そう、じゃあ滞在日数は短いから、オーロラを見ることができるかどうかは運しだいってことね」


ヴェーヌが冷静に言う。他のメンバーも少しガッカリした様子だ。


「でも、オーロラを見ることができる可能性は0ではないよ。それに昼間はノルデンランド王国の美味しいものを食べに行けるし」


他のメンバーの目が輝き出した。そんな中、ヴェーヌが提案する。


「それで、ノルデンランド王国の何処へ行くの? 今日、地理の家庭教師の先生にノルデンランド王国のことを習ったのよ。ノルデンランド王国の中央部に東西に延びるカンス大山脈があるんだって。冬は北風がカンス大山脈に当たって北側は大雪が降るけど、南側は雪は少なくて、晴れた日が多いらしいわ。だから、オーロラを見に行くなら、大山脈の南部の方がいいと思うわ。あとは街の魔導具の灯りが少ない田舎の方がいいわね。」


「なるほど、どこの宿にするかは決まっていないと思うから、お願いしてみる。美味しい料理やお菓子のことは教えてもらった?」

「そういうことは教えてくれないわ。政治や経済、気候とかばっかりなの。美味しい食べ物や観光名所のことも教えてくれると、勉強がもっと楽しくなるのに」


ヴェーヌがハァとため息をつくと、パシファが手を上げる。


「イスリ姉さんに、ノルデンランド王国へ行くことになるかもしれないと、聞いたので私が調べておきました」


パシファの言葉に、メンバーたちは身を乗り出す。


「ノルデンランド王国はこの大陸で一番北にある寒い国で小麦は育たないので、ジャガイモが主食で、魚料理が多いみたいです。また、冬が長いので保存できる食べ物や身体が暖かくなる食べ物が多いようです。


名物料理としては、サーモンのバターソテーやいろいろな貝やサーモンなどの魚、エビなどを煮込んだフィッシュスープ、ラム肉を野菜と一緒に煮込んだ料理、鮭とご飯のパイ包み焼きなどでしょうか。


お菓子はチーズパイやサフランパン、ジャムクッキー、菓子パン、他にもたくさんありますが、こんなところです」


パシファの解説を聞いて、全員がゴクリと生唾を飲み込む。みんなが妄想を膨らませている。しばらくして、我に返ったプレヤが言う。


「服装はテンブリ王国の時と同じでいいかな?」

「ノルデンランド王国は、テンブリ王国より寒いので厚着して行った方がよさそうです。特に手袋は厚い生地の物が欲しいですね。指を大切にしたいですから」


楽器の演奏者として、自覚が芽生え始めたフェネの言葉にトルリとアニマもコクコクする。それにプレヤが応じる。


「じゃあ、明日お揃いの物をみんなで買いに行こう。それでいいかな?」


レアがおずおずと手を上げる。


「あの~、買い物には行けるのですが、メガネも買っていいですか。最近、本を読み過ぎたせいか、小さい文字が読みにくくなったので。地味なものを選ぶので時間はかからないと思います」


それにアニマが肩を落として言う。


「レア、まだそんなことを言っているの。カッコ可愛いメガネを選ぶのよ。私も協力するから」

「そうよ、普段からイメージを大切にするのよ。私も一緒に行くから」


トルリとアニマも一緒にレアのメガネを選ぶことになりそうであった。


お読みいただきありがとうございます。

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