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第5話 アースクイーン会議

 赤いバラの屋敷の会議室にアイーダが入って行き、一番奥の座席に座った。


「みんな揃ったようね。ではアースクイーン会議をひらきます。最初にバービレから報告と相談があるそうよ。バービレ、どうぞ話して」


アイーダの開会宣言に続き、バービレが話し出す。


「昨日王宮に行き、お母様である王妃陛下にアース様との結婚を報告して来たニャン。その時、持参金として金貨以外に何か欲しい物があるか聞かれたから、みんなで相談する、と答えたニャン。みんな何か欲しいものがあるかニャ?」


しばらくの間沈黙が続いたが、フェネが右手を上げてから発言する。


「もち米を育てる水田を作る土地が欲しいです。もち米を材料とするお菓子がたくさんあります。アマルさんにお願いすれば、美味しいお菓子を作ってもらえます。おはぎとか、桜餅とか、いちご大福とか、いちご大福とか、いちご大福とか」


「はいはい、フェネはいちご大福が大好きなのね。私もいちご大福は大好きよ。でもそれだけではダメよ」


アイーダが微笑みながら言ったが、プレヤが食い下がる。


「お餅は保存食になるし、煮ても焼いても柔らかくなるよ。軍人や冒険者にとって、野営地で暖かい食事は歓迎されると思うよ」

「なるほど。それはいいわね。他の提案はあるかしら」


「広い魔法練習場が欲しいニャン。魔法の威力が上がったから、今の練習場では狭いニャン」

「うん、みんな魔法の威力が上がったから、それは必要ね。他に何かある」


しばらく待ったが、誰も提案しないのを確認するとアイーダが話し始めた。


「私たちアースクイーンは、経済的にできるだけ独立すべきだと思うわ。経済的に依存しているからアース様の傍にいると思われたくないから。その視点で考えると、水田を作ってお菓子やお餅を作って販売することはいい考えだ、と思うわ。お菓子は街のお店を中心に、お餅は冒険者ギルドを中心に売り出せばいい。


その他に私は、音楽関係のビジネスをしたいの。音楽ホールを建てて定期的にコンサートを開いてお客様を集めるわ。それが成功したら、オペラやミュージカルの公演もするの。それから、ゆっくりしたいお客様のための宿も建てたいわ。


それ以外にも、音楽教室を開きたいの。最初は趣味で音楽を楽しみたい人たちを対象に週に2,3回、楽器や歌を教えるの。そして、将来は子どもたちを集めて音楽学校を作りたいわ。


一方、自衛力を高めるために魔法の練習場も必要よ。300年前の悲劇を繰り返さないために。これからはみんなの魔法も強力になるでしょうから、広い練習場が必要になるわ。


まとめると、必要なものは土地。水田と音楽関係の建物を建てるためと魔法の練習場のための土地よ。では、どれくらいの広さが必要かしら」


フェネとプレヤがニコニコしている。たぶん、頭の中にはたくさんのイチゴ大福があるのだろう。バービレも満足な顔をしている。やっと全力で魔法が使えるからだろう。そんな中、レジェラが考えながら言う。


「魔法の練習場は奥行きが10kmもあれば十分でしょう。幅は魔法の誤射があっても安全なように、同じくらいでしょうか。


音楽関係の建物用の土地は3km四方、付属施設や庭園用の土地に5km四方、観客もかなりの数が予想されますから転移陣も10は必要でしょうから、転移陣用に2km四方。合計は、余裕をみて30km四方でしょう」


それを受けてアイーダが続ける。


「広さはそれくらいなのね。すると、その土地を管理する人も必要なのかしら」


レジェラはコクコクしてから、アイーダに言った。


「王家の直轄領の中から、土地を選ぶのは私にまかせてくださいませ。お父様に相談して最適な土地を選びますわ。ただ、どのような土が水田に適しているかがわかる人を紹介して欲しいのですが」


「ああ、それはアルタイルの森でモチ米を作っている人に頼んでみるわ。」

「そう、あと私のお父様のラフスン侯爵家は内政関係貴族のトップですわ。その土地の運営の実務を担当する者を派遣してもらいますわ」


「それは助かる。じゃあ、この件はそういうことにしましょう。では、次の件の説明をお願い、バービレ」


バービレが心の傷を治す魔法の開発する必要について説明した後、アイーダが発言する。


「このような魔法を使う時が来ない方がいいのだけどね。もしもの時に備えることは必要だと思うの。回復魔法と音楽魔法を同時に使うことから始めるとして、誰かアイデアはあるかしら。どんなアイデアでもいいわ」


全員、ウーンとかエートとか言いながら考え込んでいたが、フェネが手を上げた。


「フェネ、何か思いついたかしら」

「はい、参考にならないかもしれませんけど」

「ええ、それでいいいわ。誰かが最初に言い出さないと話し合いがスタートしないから。それに最初に発言するのは勇気のいる事よ」


「では聞いてください。私が小さい頃、森で狼型魔獣に出会って、とっても怖かったのです。その魔獣は大人の人たちが討伐してくれたのですが、家に帰ってからもブルブル震えていました。


そうしたらお母様が抱っこしてくれて子守歌を歌ってくださったのです。それで落ち着いて安心できました。それからも時々怖い夢をみる夜もあったのですが、お母様の子守歌で眠った夜は怖い夢はみませんでした。だから、子守歌が効果を持つと思います」


フェネは自分の経験を披露しただけだが、説得力はあった。


「そうね、試してみる価値はありそうね。子守歌を作曲してみようかしら。誰か他のアイデアはあるかしら?」


しばらくの間待ったが、誰も手を上げなかった。アイーダが発言する。


「では、何か思いついたら、いつでもいいから教えてね。他にこの場で言っておきたいことはあるかしら」


プレヤが手を上げて報告する。


「先日隣国のコチェ王国に行った時に救った女の子が、もうすぐ引っ越しして来る。星魔法と土魔法が使える星魔法一族女の子だよ。テディス男爵家の3女で 名前はレア。よろしくお願いします」

「わかったわ。それで『星とバラの妖精』のメンバーに入るのかしら?」


アイーダの問にプレヤが答える。


「それはレアの希望を尊重するつもりだよ。僕は入ってもらいたいけど」

「そう、それでいいわ。いずれにせよ、星魔法一族の女の子をスカウトしてきたのはお手柄だわ。仲良くしてあげてね」

「もちろんだよ」


次に手を挙げたのはレジェラだ。


「今、思いついたのですが。私、夫人や愛人みんなで入れる大浴場が欲しいですわ。ほら、裸の付き合いをすると、親交が深まるではないですか。浴槽も美容にいい効果のある薬草を入れた浴槽、温度の高い浴槽と低い浴槽を設置しますの。

それから、お風呂の後でマッサージや肌のお手入れもできる部屋も欲しいですわ。そうそう、ゆっくりお茶できる部屋も必要かしら」


「「「「賛成~~~」」」」


即時、全員一致であった。その会話の後、お菓子を食べながら噂話を楽しみ、アースクイーン会議は終わった。



それから1週間の調査の結果、アルタイルの森の東隣りの王家直轄領が、適地である事がわかった。そして、その土地が与えられることとなった。ただし、問題が1つあり、それは山裾から5kmほど広がる森の中に魔獣がいることであった。


魔獣は2種類いて、それぞれに大型の王がいる。これらの魔獣を討伐するために、森から続く荒地、森の端から3km離れた場所に、アースと『赤いバラ』の6人、『コラール』の6人、『星とバラの妖精』の5人、屋敷警備隊のイスリが立っていた。リーダーはもちろん、アースである。アースが作戦を説明する。


「北の山の西部を縄張りとするヘビ型魔獣の討伐から始める。俺が魔獣を森から追い出すから、ここでお前たちが、魔法を使い魔獣を全滅させる。ここは岩と砂しかないから火魔法も使える。魔法を使わない者は護衛だ。いいな」

「「「おー」」」


全員の返事が揃った。そして、アースが詠唱する。


「星魔法 へびつかい座」


空中に人型が現れ、西部の山裾に降りる。それから10分後、それは森から走り出てきて、その後に数百体のヘビ型魔獣が続いている。最後は。長さは50m、太さは3mの大型、金色のへビ型魔獣、大蛇である。


くねくねと地を這うヘビ型魔獣の群れが、アースたちから500mほど離れた所まで来た時、アースの号令が響く。


「魔法戦開始。それぞれ自由に魔法を放て」


火魔法が、水魔法が、風魔法がヘビ型魔獣の群れに襲い掛かり、ヘビ型魔獣を次々に煙に変えていく。特にイスリの 火魔法は強烈で、一撃でヘビ型魔獣の数十匹を煙に変える。すぐに大型、金色のへビ型魔獣以外は討伐された。


「あの大蛇は、私とレジェラで討伐するニャン」


バービレはそう言うとレジェラと頷きあい、剣を抜いて2人で大蛇に向かって走りだした。バービレとレジェラは大蛇を左右から挟み込むように走って近寄る。大蛇はどちらを相手にしていいかわからず、頭を左右に振っている。


2人は大蛇の頭に向かって飛んだ。「はぁー」「とぉー」掛け声と共にバービレの剣が頭に、レジェラの剣が首に同時に打ち込まれると大蛇は煙になって消えた。後に残った大きな魔石を抱えて戻って来たバービレが笑顔で言う。


「これで『コラール』のB級昇格は確実ニャン」


それを聞いたプレヤの目がキラリと光った。


北の山の東部へ移動してからアースが説明する。


「よし、次は東を縄張りとするブタ型魔獣の討伐だ。作戦は同じだ」


それだけ言うとアースは詠唱する。


「星魔法 オリオン座、おおいぬ座、こいぬ座」

空中に右手にこん棒を持つ身長10mの大男とおおきな犬、小さな犬が現れて山裾に降りていく。それから20分後、体長1mほどのブタ型魔獣が数百体、森から飛び出してきた。再び魔法の嵐が吹き荒れ、暗い赤色の大型ブタ型魔獣1体だけが残った。


「あれは僕たちの獲物だ」


そう叫ぶとプレヤは、右手をヴェーヌの左手と繋ぎ、左手にロータスワンドを持つ。ヴェーヌは右手にスターワンドを持つ。そして、同時に詠唱する。


「「星魔法 おうし座」」


体高3m、体長6mの立派な角2本を持つ牡牛が、ほぼ同じ大きさの大型ブタ型魔獣の前に現れる。2体はすごいスピードで正面衝突して、大型ブタ型魔獣は煙となって消えて、大きな魔石が残った。それを走って取りに行ったプレヤが叫んだ。


「やった~。これで僕たちもD級パーティだ~」


イスス伯爵領などでの活躍で『星とバラの妖精』はE級に昇格していたのだ。


「これで魔獣討伐は終わりだな」


そう呟いたアースにヴェーヌが提案する。


「お兄様、大型魔獣がいた洞窟には、宝物が隠されているらしいですわ。探してみませんか」

「そうか、魔獣討伐も予定より早く終わったことだし、探してみるか」



大型ブタ型魔獣がいたと思われる洞窟は北の山の東部の山裾にあった。洞窟に入って少し進むと暗くなり、周囲がよく見えなくなった。するとアイーダが横笛を口に当てて詠唱した。


「音楽魔法 月の光」


穏やかで清らかな曲が奏でられると、洞窟内に優しい光が満ちる。その光が洞窟の赤い岩壁を照らす中、先に進み最奥に達した。しかし、そこには何もなかった。


「宝物は無いニャ。残念ニャン」


バービレの言葉に、洞窟の壁を見ていたヴェーヌが首を振る。


「お兄様、この赤い岩は鉄をたくさん含んでいます。赤鉄鉱と呼ばれる岩石ですわ。開発すれば巨大な鉄の鉱山になる可能性があります」


次に北の山の西部に移動すると、大型のへビ型魔獣のいたと思われる洞窟も山裾で発見できた。この洞窟も入り口付近から赤い岩石の壁が続いていたが、奥に近づくと白っぽい岩石に変わっていった。


「ここにも宝物は無いニャン。とても残念ニャン」


バービレの言葉に、洞窟の壁、白っぽい岩石を見ていたヴェーヌが首を振る。


「この白っぽい岩石は金の鉱石の1種かもしれませんわ。持ち帰って錬金術師に調べてもらいましょう」


そう言ってヴェーヌは詠唱する。


「星魔法 ブラックホール」


そして、白い岩石を採集した後、説明を続けた。


「歴史書によると、300年前にこの土地にあった国の王宮は、星魔法によって滅ぼされました。その後しばらくの間、溶岩の流出が止まらなかったそうです。


地下の溶岩、マグマに地下を流れる水流が接触して金を溶かし出した後、岩の割れ目に入り込んで冷えて固まり、熱水鉱床を作ったのではないでしょうか。もっと奥まで、地下深くまで調べる必要があります」


その知識に驚いたバービレが質問する。


「なぜそんなことを知っているニャン?」

「将来、私は貴族と結婚します。だから、領地経営に必要な知識は学んでいます。鉱山や鉱石の事も勉強しました」


さすが公爵令嬢、地位の高いものほど勉強、鍛錬、努力をしているのだ。


その後、少し北の山を登って見晴らしのいい場所でレジェラが説明する。


「東に見える大河は隣領との境です。それ以外に西の山々との間に2つの川が流れていますから、水田を作るための水は十分です。手前の森、荒地以外の土地は作物、コメを育てるには良い土のようです。音楽魔法を使えばもっと良くなるでしょう。 その奥に音楽ホールや音楽学園の建物などを建築しましょう」


アイーダが賛成して言う。


「鉄の鉱山だけでも、たくさんの資金が得られるわ。さあ、みんなの夢をここで実現しましょう。レジェラ、『コラール』の意味は賛美歌だったわね」

「ええ、そうよ」


「じゃあ、『赤いバラ』と『星』を合わせて、この土地を『星の輝く赤いバラとコラールの里』と名付けましょう。それでいいかしら、バービレ、プレヤ」

「もちろんニャ。いい名前ニャン」

「3つのパーティの名前が入っているのだから、大賛成だよ」


こうして、アースの夫人たちの夢を実現するための土地、経済的独立のための土地が誕生した。

お読みいただきありがとうございます。

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参考

月の光  作曲  ドビュッシー  

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