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第7話 ストーンサークルへの森

 スノーウルフを討伐した『星とバラの妖精』たちは、雪原を踏破して森の入口に辿り着いた。そして、ソリを保管用の建物に入れて、森の入口に立っている。


「うわ~、雪原ほどじゃないけど雪が深いね~」


プレヤが困り顔でため息をつく。足を踏み入れると、足首の少し上くらいまでズボッと沈み込んでしまったのだ。森の中は木が立ち並び、ソリで進むのは無理だ。どうするか困っていると、エリーゼが話しかけてくる。


「スキーを足につけて雪の上を歩く練習しながら、進もうか?」

「う~ん、それしかないかな~」


それを聞いていたフェネが、提案する。


「私とアニマとトルリの3人で、人が2人が通れるくらいの幅の道を作れます」

「えっ、本当? いや、フェネが嘘をつくわけない。頼むよ」


コクコクしたフェネは、アニマ、トルリと相談してから、携帯魔法で横笛とヴァイオリンを取り出す。そして、3人で詠唱する。


「「「音楽魔法 春が来た」」」


フェネが横笛を、アニマがヴァイオリンを演奏し、トルリが歌う。


「春が 來た、春が 來た、どこに 來た~」


すると、周囲の雪が解け始める。春が来ると雪は解けるからだ。エリーゼとジュリアはビックリして固まる。プレヤは喜んで言う。


「凄いよ、音楽魔法。これで先に進める。先頭は道を知っているエリーゼとジュリアでその後にフェネとアニマとトルリ、これで行くよ」


森の中を進みだして5分ほど経った頃、レアが左の方を指さして疑問を口にする。


「あそこに茶色のモヤのようなものが浮いています。あれは何でしょうか?」


そこには茶色の雲のようなものが、フワフワと空中に漂っているのが見える。その下にスノーラビットがピョンピョンとやってくると、茶色のモヤはスノーラビットを包み込むように動いた。しばらくして、茶色のモヤが再び空中に戻った時、スノーラビットの姿は無かった。ジュリアが叫ぶ。


「あれはドクガ型魔獣の群れです。ドクガ型魔獣の針は毒針です。気を付けてください。1体の大きさは30センチ程度で、防御力は弱いです。水魔法か風魔法で攻撃してください」


パシファが詠唱する。


「水魔法 氷針のブリザード」


無数の小さな氷の針がドクガ型魔獣の群れに襲いかかり、ほとんどの魔獣は煙になって小さな魔石を落とした。森の中なので、木が邪魔になり氷針が命中しなかった魔獣もいたのだ。残った魔獣はフラフラと飛び去って行く。


「凄いよ、パシファ。いつの間に水魔法の威力を上げたの?」


プレヤが誉めると、パシファは照れて答える。


「ある日突然、威力が上がったのです」


恥ずかしがりやのパシファには、具体的にいつからと言えないのである。一方、

エリーゼは再び呆然としていた。『星とバラの妖精』たちの使う魔法が規格外の威力だからだ。だから、プレヤに尋ねた。


「あなたたちパーティは本当にC級なの?」

「僕たちはC級パーティだよ。さっき冒険者カードを見せたよね」


胸を張って答えるプレヤ。いや、ポイントが足りなうだけで、実力的にはとっくにB級なのだが。それに周囲の人間、アースは別格として、アイーダやバーブレ、レジェラ、イスリが凄すぎるので、自分たちはC級の実力と思い込んでいるのだ。逆の意味での「井の中の蛙大海を知らず」である。


エリーゼは武者修行を頑張って、やっとC級冒険者になった自分と比べて、その差にガックリとうなだれた。それをジュリアが元気づける。


「エリーゼ様、マイペースです。人にはそれぞれの成長スピードがあります。それを乱してはいけません。リュウゼツランの中には、種をまいてから30年以上経って、急激に10メートルの高さに伸びて、開花する種類もあるそうです。焦ってはいけません。コツコツ努力を積み上げるのです。さあ、先に進みましょう」


エリーゼは顔を上げる。


「そうね。まずはストーンサークルへ進みましょう」


再び歩き出した一行だが、5分くらい進んだところで川があった。幅は10メートルほどで凍っておらず、水が流れている。そして、川の向こうの森には雪が積もっていない。


「この川の向こうが火の鳥の森です。火の鳥の森の中は、1年中雪が積もることはありません」


ジュリアが説明してくれる。そして、少し上流を指さして残念そうに続ける。


「今回はここまでのようです。橋が壊れています」


ジュリアの指さす方を見ると、川の中央から向こう側が壊れた橋があった。


「ジュリア、どうにかならないの?」


エリーゼが悲しそうに言うが、ジュリアは首を横に振って説明する。


「この川は水深が深く歩いて渡ることはできません。流れていますが、水温は低くて、泳ごうとしてもすぐに凍えてしまいます」


エリーゼとジュリアは暗い雰囲気を漂わせたが、それをアニマが破る。


「大丈夫。みんな私の近くに集まって」


エリーゼとジュリアも首を捻りながらアニマの近くに行く。全員が集まるとアニマがヴァイオリンを肩に乗せて詠唱する。


「音楽魔法 Fly Me To Another Land」


アニマがヴァイオリンを演奏すると、エリーゼの目の前の景色が一瞬で変わった。


「えっ、何? 何が起こったの?」

「音楽魔法の転移魔法よ。ほら、川を渡っているでしょう」


エリーゼの疑問に、アニマがニッコリして答える。エリーゼは壊れた橋と足元に雪がないことを見て、転移した事実を素直に受け入れた。もはや、驚くことに慣れてしまったのである。


「あら、ここにポッカポカ草が生えているわ。この葉をお茶に入れて飲むと身体が温まるのよね」


パシファの言葉に、フェネが携帯魔法で小さいスコップと袋を3つずつ取り出す。それを受け取ったフェネとセルク、アニマがポッカポカ草を土ごと採取する。10分ほどで作業は終わり、一行は再びエリーゼとジュリアを先頭に歩き出した。


5分ほど歩いたら、前方でガサガサと音がする。ジュリアが右手を上げる。止まれの合図だ。様子を伺っていると、体長2メートルのヒグマ型魔獣がのっそりと姿を現す。エリーゼとジュリアは剣を抜き左右に分かれて魔獣に近づく。ジュリアの方を強敵と見たか、魔獣がジュリアの方を向く。


すると、エリーゼが地面を蹴って飛び上がり、トォーと掛け声を上げて剣を振り下ろす。剣がヒグマ型魔獣に当たると、魔獣は煙となり、魔石を落とした。その魔石を拾い上げたエリーゼは、魔石を高く掲げて胸を張って大声を上げた。


「どう? 大きい魔石でしょう?」

「「「おおー」」」


『星とバラの妖精』たちは声を上げた。その魔石は大人の握りこぶしくらの大きさで、滅多に見ることのない大きさだったからだ。


「凄いよ、エリーゼ。今度僕と木剣で試合をしようよ」


それに続いて、セルクとトルリも練習試合を申し込む。


「ウフフフ、いいわよ。次の女近衛騎士団長の私に勝てるかしら?」


どうやらエリーゼも元気を回復したようだ。その言葉にヴェーヌが反応する。


「女近衛騎士団長って、エリーゼはこの国の貴族令嬢なの?」


エリーゼはしまったという表情をするが、口にしたものは仕方がない。


「そうよ。だからストーンサークルに行って、聖剣火の鳥を手に入れたいの。王女殿下とこの国を守るために必要だから」

「えっ、聖剣火の鳥ってどのような剣なのかかしら?」


「伝説によると、この国の清き少女が詠唱しながら剣を振ると、強力な火魔法が放てる剣よ。真にこの国と王女殿下を愛する気持ちがある少女だけが、祭壇石から剣を引き抜けると言われているわ」


「そうだったのね。じゃあ、私たちもエリーゼが聖剣火の鳥を手にできるように協力するわ。いいわよね、みんな」

「「「おーーー」」」


全員の声が揃う。そして、一行は再び歩き出す。5分ほど歩いたら、森が終わり視界が開けた。そこでジュリアは立ち止まり、指さして説明する。


「あれがストーンサークルです」


指さす方を見ると、高さ10メートルの石柱が3メートルほどの間隔で12本円状に並んでいる。ジュリアが説明を続ける。


「ガイドが案内できるのはここまでです。ここから先には進めません。理由はご覧の通りです」


立っている場所からストーンサークルまでの間には12頭の赤いライオンの群れがいた。



お読みいただきありがとうございます。

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参考

「春が来た」 童謡 作曲 岡野 貞一 作詞 髙野 辰之 

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