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第6話 ユニコーン

「誰もいないね。どうしてだろう?」


冒険者ギルドに入って、建物の中を見回したプレヤが疑問を口にする。他のメンバーも全員首を傾げている。ヴェーヌが答える。


「いいえ、情報掲示板の前に2人いるわ。でも不思議だわ、こんなに冒険者がいないなんて。受付に行って訊いてみましょう」

「うん、あそこが受付らしい。行ってみよう」


プレヤを先頭に『星とバラの妖精』とイスリは、受付に向かう。受付の女性たちは、よほど暇なのか、おしゃべりに夢中でこちらを見ようとしない。


「すみません。訊きたいことがあるのですが、いいですか?」

「えっ。あっ、いらっしゃいませ。お訊きになりたいたいことは、なんでしょうか?」

「ストーンサークルに行きたいのです。B級冒険者の方にガイドを頼みたいのですが、どうすれば良いのでしょうか?」


プレヤの問いかけに、受付の女性は一瞬困った顔をしたが、すぐに笑顔を作って答える。


「実はビートルの森で、カブトムシ型魔獣が大量発生したのです。その討伐のために国がかなりの好条件で冒険者を募集しました。それにほとんどの冒険者が応募したのです。だから、ほとんどの冒険者はビートルの森に行ってしまって、ご覧のような状況になっています」


「向こうに2人いますが?」


ヴェーヌが尋ねると、受付の女性はニッコリして答える。


「あの2人は最近外国から帰ってきたばかりでして。あの2人もストーンサークルに行きたいようです。ギルドとしは、お勧めできませんけど、お話をされてはどうでしょうか?」

「わかりました。ありがとうございます」


事情がわかった一行は、受付を離れて相談を始める。


「どうしようか? ガイドがいないと道がわからないよ」

「そうね、残念だけど諦めようか。また来ればいいし」


ヴェーヌの意見に全員コクコクして同意する。その時、後ろから声をかけられた。


「そこのあなた方、ストーンサークルに行きたいのかしら?」

「そうだけど?」


プレヤが答えると、エリーゼが微笑む。


「私たちもストーンサークルに行きたいけど、2人じゃ無理なの。道はわかっているけど。どう? 一緒に行かない?」

「でも、ガイドはB級冒険者でしょう? 大丈夫なの?」

「私はC級だけど、このジュリアはB級の実力があるわ」


そう言って、ジュリアを見るエリーゼ。プレヤは腕を組み少し考えて言う。


「みんなで相談するから、ちょっと待ってくれ」


『星とバラの妖精』とイスリは、エリーゼたちから離れて相談を始める。


「どうしようか? 初対面の人を信用していいのかな?」


プレヤが問いかけると、フェネが答える。


「いざとなれば、私の結界があります。今の私の結界は20人くらい守れます」

「私も20人を4kmくらい転移させられわ」

「私たちもC級パーティですから、大丈夫だと思います」


アニマやセルクも続く。反対する者は1人もいなかったので、エリーゼの申し出を受けることにした。


「一緒に行くことにするよ。私はプレヤ、よろしくね」


そして、プレヤは他のメンバーを紹介する。エリーゼは手を差し出して握手を求めながら、自己紹介をする。


「私はエリーゼ。こちらこそよろしく」


こうして、『星とバラの妖精』とイスリ、エリーゼ、ジュリアは一緒にストーンヘンジに行くことになった。



ストーンヘンジの転移陣に着くと、雪原が広がっていた。不用意に踏み出したアニマの足がズボッと雪にめり込む。慌てて雪から足を引き抜いて、アニマが大声で言う。


「うわあ~、これじゃ歩けないよ~。王都は雪が無かったのに、どうしてここには雪が積もっているの~?」

「王都には雪を解かす魔導具が設置されているのです」


アニマの疑問にエリーゼが答える。


「ストーンサークルまでどうやって行くの?」


レアが問うと、ジュリアが教えてくれる。


「隣の建物にスキーやソリが置いてあります。これらは誰でも自由に使えます。ソリを引くトナカイは自分で連れて来る必要がありますが」


その説明に困惑の表情を隠せない『星とバラの妖精』とイスリ。ソーミュスタ王国でも雪が降ることはあるが、スキーをするほどではない。誰一人としてスキーを滑れないのだ。しばらく沈黙の時間が流れたが、レアが残念そうに言う。


「どうします? 誰もスキーで滑れないと思いますけど。ここで諦めますか?」

「そうね。仕方が無いわ。今度は雪の降らない季節に来ましょう」


フェネが同意するが、ヴェーヌが首を横に振る。


「ソリがあるなら、私に良い考えがあるわ。まずソリを見せてもらいましょう」


隣の建物に移動すると、1人乗りのソリから20人乗りのソリまでいろいろなソリが揃えてあった。ソリを見て回ったヴェーヌがプレヤに尋ねる。


「私たち11人だと10人乗りのソリで十分だわ。私がユニコーン2体を出すからプレヤもユニコーン2体出せる?」

「もちろん出せるさ。ユニコーン4体にソリを引かせるんだね」

「そうよ。じゃあ、詠唱するわよ」


ヴェーヌとプレヤは同時に詠唱する。


「「星魔法 いっかくじゅう座2体」」


馬と同じ身体で、額に1本の角があり、ライオンの尾、二つに割れた蹄を持つユニコーンが4体現れる。他の者は声も出せないほど驚いたが、好奇心の強いトルリが、声を出す。


「これってユニコーン? これにソリを引かせるの?」


「そうよ。ユニコーンはウマやシカより早く走り、ソリを力強く引くわ」

「へ~、触ってもいい?」

「ユニコーンは少女が大好きだから、触ると喜ぶわ。大人が触ると怒るけどね」


それを聞いて、パシファとイスリ、ジュリアはガックリとうなだれる。トルリたちが頭を撫でるとユニコーンは嬉しそうな顔をする。それを見て、驚きから立ち直ったエリーゼが質問する。


「私たちはいろいろな国を回ってユニコーンを探したけど、見つからなかったわ。どうやって見つけて、どんな方法で捕らえたの?」

「このユニコーンは本物じゃないわ。魔法で出したユニコーンよ」


エリーゼは一瞬残念そうな顔をするが、ヴェーヌに尋ねる。


「私たちもユニコーンに引くソリに乗せてもらえるかしら?」

「もちろんよ。一番前に乗って手綱の操作をお願いね」


こうして、一行11人は雪原へと滑り出した。ユニコーンの引くソリは軽快に進む。『星とバラの妖精』は『ジングルベル』を歌いながらはしゃいでいる。しかし、しばらくするとウオーンと狼の遠吠えがした。右前方に数十頭の白い狼のような群れが見える。


「スノーウルフ型魔獣よ。気をつけて」


エリーゼはそう言うと、立ち上がり詠唱する。


「火魔法 火球」


火球1つがスノーウルフ型魔獣の群れに向かって飛んでいく。そして、スノーウルフ型魔獣の1体に命中して煙に変える。だが、ノーウルフ型魔獣はまだまだ多数残っている。群れの中で一回り大きい魔獣がまた吠える。すると、群れはこちらに向かって走り出して来る。


それを見てジュリアも立ち上がり詠唱して、火球を放ち魔獣1体を煙に変える。その時ソリの手綱は誰も握っていない。ソリは進む方向をスノーウルフ型魔獣の群れに向かって変える。ユニコーンが、少女たちを襲うスノーウルフ型魔獣に対して怒り、立ち向かおうとしているのだ。


しかし、魔獣は数十頭もいる。このままでは、圧倒的に数的不利、そう判断した

『星とバラの妖精』とイスリも魔法を放つ。ヴェーヌとプレヤが火魔法を、フェネとトルリとパシファが水魔法を、セルクが風魔法を、レアが土魔法を放つ。強烈なのはイスリの火魔法だ。


「火魔法 火球乱舞」


イスリが詠唱すると、火球が魔獣の群れに襲いかかり、10体を煙に変える。その間にもソリは突進を続ける。魔獣が一回り大きい魔獣1体になった時、先頭のユニコーンの角が魔獣に突き刺さり、煙に変えた。


「「「やった~~~」」」


ユニコーンは強い。そして、少女を守ろうとする時、その強さは何倍にもなるのだ。雪原に落ちたスノーウルフ型魔獣の魔石を集めるためにプレヤが詠唱する。


「星魔法 うさぎ座2体」


うさぎは雪の上をピョンピョン跳ね回り、落ちていた魔石を集めてプレヤに持ってくる。プレヤは、その中から5個の魔石をエリーゼに渡して言う。


「君たちの取り分は5個でいいかな?」


それを受け取って、エリーゼは尋ねる。


「いいわよ。それであなたたち、本当にC級なの?」


プレヤは冒険者カードを見せて、胸を張って答える。


「ほら、僕たちはちゃんとC級冒険者パーティだよ」



お読みいただきありがとうございます。

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参考

「ジングルベル」   アメリカ民謡 作曲 ジェームズ・ピアポイント


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