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第3話 冬至と時計台のチャイムと

 朝7時、ホテルの食堂で朝食を食べている『星とバラの妖精』とイスリ。星魔法使い組と音楽魔法使い組の2つのテーブルに分かれている。星魔法使い組のテーブルで、プレヤが眠そうな顔をしてこぼす。


「まだ夜が明けていないのに朝食なんて、変な感じがするよ」

「夜明けは1時間くらい後らしいですよ。今日はお祭りの舞台があるから、しっかり朝ごはんを食べないとダメよ」


プレヤを宥めるのはヴェーヌの役割だ。朝からご苦労なことだ。


「昨日だって、4時頃には日が暮れてしまうし。赤いバラの屋敷だったら、あと1時間くらい明るいのに。遊べる時間が1日で2時間も短いよーーー」

「北に行くほど太陽が出ている時間は短くなるって、習ったでしょう?」


横からセルクが口をはさむ。


「ええ、習いました。それに今日は冬至だから昼が一番短い日ですよね」

「そうよ。私たちは冬至のお祭りのために招待されたのです」

「えっ、そうだったのか。どうして冬至にお祭りをするのさ?」


その疑問にレアが答える。


「昼が短いと困りますよね。夜は危なくて外を出歩けないし。お日様が出てないと寒いし、お日様に照らされる時間が短いと、作物も育ちが悪くなります。だから、昼が一番短い冬至の日に太陽が速く元気になって、昼が長くなるように応援するのが冬至のお祭りです」


レアの説明にフムフムと納得するプレヤ。


「じゃあ、みんな。今日のお祭りの舞台は頑張って、太陽を応援しよう!」

「「「「おー」」」」


盛り上がる星魔法使い組の隣、音楽魔法使い組のテーブルでパシファがお茶をゆっくりと味わっている。そして、呟いた。


「このお茶は香り高くて、味は甘いわ。それにこのカップの白さに、お茶の明るいオレンジ色が輝いていてきれい。縁の方は金色のリングに見えるわ」


パシファは給仕に尋ねる。


「この美味しいお茶の葉は、どこの葉でしょうか?」

「我が国で一番のお茶の商会であるトンリプ商会が、暑い土地にある他国のお茶農家と契約して、栽培している特別な品種のお茶の木があります。その特別に栽培された茶葉の若くて、柔らかい茶葉だけを使用しています」


「その茶葉は買い求めることができますか?」

「はい、時計台近くのトンリプ商会の本店で売っています」


「この白いカップも欲しいのですけど?」

「そのカップも時計台近くの高級茶道具店で売っています」

「わかりました。ありがとうございます」


フェネは茶葉とカップを買いたいと思った。だから、プレヤの言葉を聞いて、すぐに答えてしまう。


「みんな、お祭りの舞台は3時からだけど、それまで何をしようか?」

「時計台の近くで買い物をしたいです」

「それはいい案だ。時計台の鐘が鳴るのを聴きながら買い物をしよう」

「「「おー」」」


全員一致の賛成である。外はまだ暗いので部屋でゆっくりして、9時に出発することになった。



 ヒルホテルのフロントで時計台の転移陣のアドレスを教えてもらって転移する。転移陣を出ると、そこは川の畔だった。川の対岸に王家の別邸があり、時計台はその敷地に立っている。高さが100メートルほどある立派な時計台だ。


一行はまずお茶の葉とカップやティーポットなどの茶器を買いに行く。パシファ以外の8人もお土産としていろいろ買っていたが、パシファはお茶の葉を20種類も買っている。いろいろとブレンドしてみたいらしい。


次はお土産屋だ。スコーンやプディング、トフィー、クッキー、チョコレートなどを手あたり次第に買い込む。テンブリ王国はお菓子も豊富にあるようだ。調味料や香水も、誰にプレゼントするのか分からないが、しっかり買っている。


フェネとヴェーヌの携帯魔法があるので、買う量に制限はないのだ。買い物に夢中になっている一行の耳に時計台からチャイムの音が聞こえてくる。すると、プレヤが首を傾げながら言う。


「このチャイムのメロディは聴いたことが……。あっ、魔法学園の授業の最初と最後に鳴るチャイムのメロディだ」

「そうですね。私の在学中も同じチャイムでした」


イスリが同意する。一方、音楽魔法使いの4人は顔を寄せ合い、相談を始める。


「4つの音しか無いから、鐘は4つね」

「いえ、最後の時刻の数だけ鳴る鐘を加えると、5つかしら?」

「メロディだけなら4つ。ピアノの白鍵の音が2つ、黒鍵の音が2つかな?」


「小節の数は4小節よね。1小節目と3,4小節目は4つの音の順番が違うわ」

「うん、2小節目は3つの音しかない。2回使ってある音が1つね」

「各小節の最後の音だけ2倍の長さだわ」


メロディについての話が終わった時、フェネが思いついたことを口にする。


「ねえねえ、このメロディを使って曲が出来そう。学園を舞台にした恋の曲が作れそうな気がするわ」

「このメロディをどう使うの?」


「1小節目と2小節目を曲の最初に、3小節目と4小節目を最後に使うの。ハンドベル4つを1人で演奏できるわよね、トルリ」

「大丈夫よ。任せてちょうだい」


「曲の内容は?」

「上級生の男子か男の先生に恋する女の子の気持ちを表現する曲でどうかしら?」

「いいですね。歌詞はパシファが作って」

「わかりました。曲のタイトルは何にしますか?」


フェネは、しばらく考えてから提案する。


「仮に、ドキドキときめく学園でどうかしら?」

「いいですね」「いいわ」「いいんじゃない」


音楽魔法使い組の意見がまとまったので、フェネが星魔法使い組の4人に説明すると、全員が賛成した。しかし、プレヤが質問する。


「ダンスの振り付けは、僕が考えていいかな? もちろん、アナンさんに相談しながらだけど」

「いいわよ。かっこいいダンスにしてね。憧れの男性役をプレヤが踊るのもいいかもしれないわ」

「じゃあ、主人公の女子生徒役はヴェーヌに決まりだね」


どうやら『星とバラの妖精』の新曲が出来そうである。


「みんな~、お腹すいてない? 僕はペコペコだよ~」


プレヤの呼びかけに、全員が昼食を食べることに積極的に同意したので、お土産屋の店員に訊いて、近くのレストランに入る。


給仕が注文を聞きに来たので、プレヤが全員に尋ねる。


「ローストビーフが欲しい人は手を上げて」

「「「「「「「「はーい」」」」」」」」 

「スコッチエッグが欲しい人は手を上げて」

「「「「「「「「はーい」」」」」」」」


ローストビーフもスコッチエッグも全員が食べたいらしい。肉食系少女の集団である。ヴェーヌが冷静に注文する。


「パンと野菜スープと大盛の野菜サラダも人数分ください」


そして、全員に告げる。


「肉とお菓子だけしか食べないと、保有魔力量が増えないし、病気になりますよ」


全員が神妙にコクコクしている。一般的にローストビーフは脂肪分が少ないのだが、肉は肉である。注文したスコッチエッグが運ばれてきた。早速プレヤがナイフで半分に切ると、美味しそうな断面が現れた。少し半熟気味で黄身が流れ出てきそうだ。


「「「「「「「「「いただきま~す」」」」」」」」」


全員無言でモグモグモグモグ食べる、食べる、食べる。あまりの美味しさに言葉を忘れたようだ。山盛りの野菜サラダも含めて全員完食である。



昼食後、お土産の買い物と美味しい料理に満足した一行はホテルに帰って休憩することにした。部屋に入ってゆっくりしているヴェーヌにプレヤが質問する。


「ねえ、冬至のお祭りをするなら、冬至を1年の始まりにした方が、スッキリすると思うけど、どう?」


「そうね。今は今日が冬至、昼が一番短い日だって分かっているけど、昔は分からなかったの。何日か過ぎてから、冬至の日が分かったのよ。だから、いろいろな説があるけど、冬至の日の後の最初の新月の日を1年の始まりの日にした、という説もあるわ」


「なるほど、月は見ればはっきりわかるね。あっ、だったら月の満ち欠けを基準に暦を作ればいいのに。今日は何日って、夜に月を見れば簡単にわかるよ」

「その通りよ。遠い東の国ではそうしているらしいわよ。でも暦と実際の季節の誤差が大きくなって、困るらしいわ」


「ふ~ん、暦って作るのが難しいんだ」

「そうよ、じゃあ他の6人も呼んできて、舞台のための準備運動を始めるわよ」


『星とバラの妖精』たちは、舞台に向けて準備を始めるのであった。



お読みいただきありがとうございます。

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参考

時計台のチャイムのモデルは『ウェストミンスターの鐘の正時鐘』

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