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第1話 テンブリ王国からの招待

 12月も中旬である。冷え込みも厳しくなってきた。『星の輝く赤いバラとコラールの里』の魔法訓練場にイスリの詠唱する声がする。


「風魔法 トルネード」


竜巻が生じて、石を巻き上げながら進む。隣のパシファが続いて詠唱する。


「水魔法 氷針のブリザード」


無数の氷針が生じて、飛んでいく。それを見たイスリが驚く。


「パシファ、凄いじゃない。どれだけパワーアップしているの?」

「わかりません。寝室デビューした翌日からこうなのです」

「ウフフ、やっぱりね。あんなに怖がっていたけど、寝室デビューして良かったでしょう?」


パシファが顔を赤くして答える。


「はい、あの時は姉さんにお世話になりました。今ではすっかり慣れて、次の日が待ち遠しいくらいです。姉さんもパワーアップしていますよね?」

「そうなのよ。自分でも信じられないわ。アース様のおかげよ」


そこから、離れた場所でフェネとトルリが詠唱する。


「「音楽魔法 雷神」」


フェネが横笛の演奏を始める。トルリが小太鼓をトンと叩くと、何もない空間から稲妻が地上に突き刺さる。トントンと叩くと稲妻が2回、ダダダダダダダダと連打すると8回稲妻が地上に突き刺さる。


トルリは小太鼓をシンバルに変えて鳴らす。しかし、何の変化も生じない。トルリが肩を落として、ため息をつく。


「あ~、やっぱりダメか~」

「そうね、保有魔力量が足りないみたいね。もっとトレーニングを頑張ろう。私も一緒に頑張るから」


フェネの励ましにトルリはなんとか立ち直る。


「そうね、ピーマンもニンジンもしっかり食べるわ。あっ、そろそろパーティ会議の時間だわ。ヴァーヌの部屋に行こうか?」

「もうそんな時間なの? 今日は何の話し合いだろうね」


フェネとトルリ、パシファはヴェーヌの部屋に向かった。



ヴェーヌの部屋に『星とバラの妖精』の8人が集まっている。今日のおやつはホットケーキで飲み物はホットココアだ。会議には必ずおやつと飲み物が出る。会議を和やかに進めるために必要不可欠なのである。


「そんなにたくさんの砂糖をココアに入れると、太るし虫歯になりますよ」


ヴェーヌがアニマに注意する。


「だって、砂糖を入れないと苦いもん」

「ホットケーキにハチミツがたっぷりかけてあるから、苦いと思ったらホットケーキを口にすればいいのよ」

「なるほど~。ちゃんと、おやつと飲み物の組み合わせが考えてあるのね」


アニマがホットケーキをもう一口モグモグし始めた時、プレヤが口を開く。


「じゃあ、会議を始めるよ。みんなこれを見て」


プレヤは手紙の封筒を高く掲げ、ヒラヒラと揺らした。レアが質問する。


「その手紙の紋章に押してある紋章は見たことがありません。どこの家からの手紙ですか?」


その質問にヴェーヌが胸を張って答える。


「この手紙はテンブリ王国の王女殿下からの招待状よ」


「「「「ええっ~」」」」


フェネとセルク、レア、パシファが驚くが、トルリとアニマは首を傾げている。アニマがヴェーヌに尋ねる。


「テンブリ王国ってどこにあるのですか?」

「トルリのいたポラン王国の北のマクデン王国から、船で北へ30分の島国よ。転移陣でも行けるけどね」


トルリが手を上げる。


「どうしてテンブリ王国の王女殿下から招待状が届いたの?」

「今、テンブリ王国は音楽を盛んにしようとしていて、いろいろな行事を催しているわ。その1つとして、こんどのお祭りで新人アイドルコンサートを開くらしいの。この国とテンブリ王国は友好国だから、私たちもこの国代表として選ばれたのかもね。私たち以外にもいくつかの国から1グループずつが招待されているらしいわ」


ヴェーヌの説明にフムフムと頷くメンバーたち。それを見てプレヤが口を開く。


「じゃあ、この招待を受けることでいいかな?」

「「「「「「「おー」」」」」」」」


全員一致でテンブリ王国の招待を受けることが決定した。プレヤが再び口を開く。


「せっかくテンブリ王国に行くのなら、ついでに狩りもしたいよ、僕は」

「その場合は普通の護衛ではダメよ。お兄様に相談しましょう」


ヴェーヌからのアドバイスにプレヤが答える。


「そうだね。よし、アース様に相談しに行こう。では、今日の会議はここまでとして明日また集まろう。それまでにテンブリ王国について、各自調べておくこと」



アースの執務室にプレヤとヴェーヌがやって来た。


「アース様、テンブリ王国からのコンサート出演の招待を受けようと思います。そして、コンサートの後狩りに行きたいのですが、よろしいでしょうか?」


プレヤの申し出に、アースは腕を組み考えてから答えた。


「俺は星魔法軍団の仕事が忙しいし、アイーダはミュージカルの作曲で暇はない。レジェラとバービレは素人音楽大会の準備や大浴場建設計画で余裕はない。狩りに行く場合、護衛が必要だし、どうししたものか、う~ん」


それを聞いたヴェーヌが提案する。


「イスリさんに護衛してもらうのではダメですか? トルリの父上が『星の輝く赤いバラとコラールの里』の警備隊隊長になったから、仕事も減ったのではないですか。これまで大変だったから、特別休暇も兼ねてどうでしょうか?」


アースは即答する。


「それはいい案だ。これまでイスリも大変だったから、1ヵ月の特別休暇をあげよう。その間はヘルミに代理で隊長をしてもらうか。もちろん、2人には特別ボーナスをつけてだ」


こうして、イスリが護衛として、テンブリ王国に同行することになった。



翌日、2回目の会議が行われる。


「披露する曲はどうする? 1曲だけだから悩むよ」


プレヤの疑問にフェネが答える。


「8人になって、初めての舞台だから、『バラのお菓子の歌』にしましょう。アニマのヴァイオリンソロとトルリの木琴ソロもあるし。2人のお披露目にちょうどいいわ」

「うんうん、ミュージカルの予行練習にもなるし、みんなそれでいい?」

「「「おー」」」


全員の賛成で曲が決まると、プレヤはレアを指名した。


「レア、テンブリ王国について調べたことを報告して」

「はい、まず名物の料理についてです。たくさんありますが、ローストビーフやスコッチエッグという殻なしのゆで卵をひき肉で包み、揚げた料理が有名らしいです。お菓子はスコーンやプディングでしょうか」


ゴックンとつばを飲み込む音が聞こえる。しばらくして、プレヤが言う。


「じゃあ、次は観光名所の調査結果を発表だね。セルク、どうぞ」

「はい、観光名所もたくさんあります。その中から2ヵ所厳選しました。1つは王都の大時計台です。その名前の通り大きい時計台で、時を知らせる鐘の音も有名です。もう1つは、ストーンサークルです」


レアが首を傾げながら質問する。


「時計台はわかるけど、ストーンサークルって何?」

「直立した巨大な石が直径10mの円陣状に並んでいる古代遺跡です。中心に置いてある祭壇石には剣が突き刺さっています。これまでこの剣を引き抜いた者は誰もいないそうです」

「そう、じゃあ、誰がその剣を引き抜けるか競争ね」

「いえ、その前に」


セルクが説明を続けようとするが、トルリが遮る。


「そんなことより、テンブリ王国はここより北にある国で今は真冬。温かいコートが必要よ。みんなでお揃いのコートにしない?」

「うん、それはいい考えだわ。靴も赤色でお揃いだから、コートも赤色で揃えたほうがいいかしら?」


アニマが言うと、いや、ピンクの方が、いやいや黄色でしょう、と意見が出てまとまらない。観光よりファッション。女の子は何をするにも服から始まるのである。それを黙って見ていたヴェーヌが提案する。


「王都のお店に行って、実物を見て決めようよ。色だけでなくデザインも大事でしょう?」


それを聞いて、パシファがおずおずと言う。


「護衛は必要ですし、イスリ姉さんも同行してもらいましょう。それにコートの代金は経費になりますから、イスリ姉さんも同じコートを買ってもらいましょう」


姉思いのパシファなのだ。結局、王都のお店に行って実物を見て決めることになったのであるが、長い時間が必要だったのは言うまでもない。


お読みいただきありがとうございます。

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