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第9話 銀色のバチ

 ポラン王国から帰って来て、アイーダは屋敷商会に、ひばりの森とピーコックの森について調査を依頼していた。その調査結果が届いたので、アースと『星とバラの妖精』に会議室に集まってもらう。


「最初はひばりの森ね。場所はポラン王国とコチェ王国との国境付近。最寄りの転移陣は森から徒歩10分で、アドレスは「ひばりの森」。いろいろな魔獣が生息しているけど、特にひばり型魔獣が多く生息している森で、数年前からひばり型魔獣が大量発生しているらしいわ。


ひばり型魔獣は弱い魔獣だけど、空を飛ぶから討伐は難しい。この国のように星魔法軍団航空軍があれば簡単だけど、他の国には空を飛べる軍人や騎士、冒険者はいないからね。


他の魔獣を討伐している最中に、ひばり型魔獣が襲ってくると危険だから、魔獣の討伐が進まなくて被害が増える。それがここ数年に状況。だから、兵士や冒険者はひばりの森から離れられない。ひょっとすると、トルリの両親もその中に含まれているのかもしれないわ」


アイーダの説明が終わると、プレヤが手を上げた。


「僕たちブルーイスカが出動すれば、ひばり型魔獣の討伐は簡単だと思います」

「ブルーイスカが他国で活動すると外交問題になるわ。それにブルーイスカはもう解散しているから、私的に再集合するとしてもスケジュールの調整に時間がかかるわよ」

「そうですか。いい考えだと思ったけど……」


がっかりするプレヤ。それの姿を見て、苦笑いをしてアイーダは話を続ける。


「次はピーコックの森ね。場所はポラン王国の王都シャルワの東30km。最寄りの転移陣は森から徒歩3分で、アドレスは「ピーコックの森」。森の中のことは何もわからない。理由は、森の住人以外で森の中へ入った人がいないし、森の住人は中のことを何も話さないから。


森への道の入口に番人がいて、彼の出す問題を解かないと通してくれないらしいわ。今の所わかっているのはこれだけね。次にアース様、お願いします」


指名されたアースは、テーブルの上に大きな地図を広げた。その地図には1本の直線が引かれている。アースは長い棒で地図の直線上の1点を指し示して、説明を始める。


「ここがアルタイルの森、音楽魔法一族の本家、管楽部族の住む場所だ」


それから、直線上の2つの地点を順番に指示して説明を続ける。


「ここが、アンカアの森、音楽魔法一族の分家、弦楽部族が住む場所。そして、ここが倭国の南部の音楽魔法一族が、大昔に住んでいたと言われている場所だ」


アースは次の場所を指し示す。それは直線上にある1点だ。


「ここが、ピーコックの森の場所だ。音楽魔法一族のもう1つの分家、打楽部族が住む場所かもしれない」


トルリが手を上げて質問する。


「音楽魔法一族とか、本家とか分家って何ですか?」


その質問にアイーダが、ニッコリ笑って答える。


「トルリには教えてなかったわね。音楽魔法が使えるのが音楽魔法一族。一族の族長は管楽部族の部族長でもあるの。だから、本家は管楽部族。2つの分家の1つが弦楽部族、もう1つの分家が打楽部族なの」


ここでアニマが手を上げる。


「ハ~イ、ハ~イ。トルリ、私は弦楽部族の巫女なの~。弦楽部族は転移魔法が使えるのよ~」

「えっ、そうなの。いいなあ~。あれ? 私も雷神って魔法が使えるってお母さんに教えてもらったわ。雷神って魔法は音楽魔法なのかな~、音楽魔法だったらいいな~。私、ピーコックの森に行きたい!」


それを聞いたアイーダが言う。


「トルリは小太鼓がとても上手だし、ピアノも上手よね。打楽部族の1人の可能性は高いわ。ピーコックの森に行けば、それがはっきりするかもしれないわ」

「わー、私、ピーコックの森に行きたい、行きたい」


手と足をバタバタさせるトルリをアイーダが宥める。


「落ち着きなさい、トルリ。アルタイルホールのオープン記念コンサートが10日後から1週間続くわ。それまではリハーサルもあるし、時間が取れるのは、その後の旅の一座『流れ星』の公演が始まってからね」


シュンとするトルリにアイーダが続けて言う。


「その前に確かめておきたいことがあるわ。トルリ、孤児院でバチを受け取っていたわね。バチは買ったの、それとも誰かにもらったの?」

「お母さんにもらいました」


「じゃあ、そのバチを持ってきて」

「は~い」


トルリがいい返事をして、バチを取りに部屋を出て行くと、アイーダはプレヤに告げた。


「プレヤ、ブルーイスカのメンバーをオープン記念コンサートが終わってから集めて。服装は冒険者風にすることも一緒に伝えてね」

「はい、わかりました。3人とも喜ぶと思います」


次にフェネに指示する。


「今からアルタイルの森の打楽器のパートリーダーさんの所へ行って、小太鼓と和太鼓を借りて、聖なる響きの館の前で待っていてくれるかしら?」

「はい、お姉様。では行ってきます」


フェネが出て行くとアースに言う。


「お忙しいところありがとうございました。ひばりの森に行く時はお知らせしますから、宜しくお願い致します」

「ああ、俺も楽しみにしている」



アイーダたちが聖なる響きの館に到着すると、フェネと小太鼓を持った男と倭国の太鼓、和太鼓を持った男、和太鼓を乗せる台を持った男が待っていた。和太鼓の直径は1メートルほどである。小太鼓を持った男が話しかけてきた。


「アイーダ様、小太鼓と和太鼓をどうなされるのですか?」

「わざわざ持ってきてもらって、ありがとうございます。打楽部族の子どもかもしれない女の子が見つかってね、確かめるために持ってきてもらったのです」


「おお、それは朗報です。私たちも聖なる響きの館に入ってよろしいでしょうか?」

「もちろんです。さあ、入りましょう」


聖なる響きの館に入ると、上から統制補助の大納言の声がした。


「いらっしゃいませ、巫女様。本日はどのような御用でしょうか?」

「打楽部族かもしれない女の子を連れて来たの。この女の子が打楽部族かどうか判定して欲しいの。できるかしら?」

「おまかせください。その女の子に、中央の位置で打楽器を演奏させてください」


中央の床に円が浮かび上がる。


「トルリ、あの円の中で小太鼓を演奏してちょうだい」


初めて入る聖なる響きの館に驚いていたトルリだが、コクコクと頷き、円の中に入り小太鼓の演奏を始める。


タカタカタカタカ タッタン タッタン タカタカタカタカ タッタン   マーチングバンドが行進する時、ドラムソロで演奏されるリズムだ。明るく元気が出るリズムが小太鼓から響く。


演奏が終わると、トルリの身体が淡い銀色の光に包まれる。しばらくして、光が消えるとトルリが手に持っていたバチが銀色に輝いていた。統制補助の大納言の声がする。


「ようこそいらっしゃいました。打楽部族の巫女様」


銀色に変化したバチを見て固まっていたトルリだが、突然叫んだ。


「え~~~、どういうこと? 私が打楽部族の巫女って」

「巫女様、巫女様になれるのは部族長の血筋の女性だけです。そして、巫女様の持つ楽器、楽器を演奏するための道具は金色か銀色です」

「それは、私の両親のどちらかが部族長の血筋の者って事でいいの?」


「その通りです」

「雷神って音楽魔法はあるの?」

「あります。打楽部族の巫女様だけが使える音楽魔法です。ただし、管楽部族の巫女様の横笛と一緒に打楽器を演奏する必要があります。演奏する曲名が『雷神』です。


雷神は雷撃で敵を攻撃する魔法です。弱い魔獣は小太鼓の、強い魔獣でもシンバルの音で煙に変えます。雷撃の数は演奏で出る音の数と同じです」

「『雷神』って曲はどんな曲なの?」


「それは打楽部族の子神殿でしかわかりません。ところで、巫女様がお持ちのバチについて、お伝えすべきことがあります。そのバチは演奏しようとする打楽器に応じて形が変わります。演奏しようとする曲名の前に、音楽魔法を付けて詠唱してください」


『雷神』の曲がわからないことに、ガッカリした様子のトルリだったが、打楽器のパートリーダーたちがセットした和太鼓の方に移動する。小太鼓を置き、和太鼓の前で両足を肩幅より少し広くして立ち、バチを持つ両手を天高く構える。


それを見た打楽器のパートリーダーが、目を大きく見開いて呟く。


「あ、あれは二天一流の空の構え!」


トルリが勇ましく発声する。


「音楽魔法 五輪書」


すると両手に持つ銀色のバチが光り輝き、和太鼓用のバチに変わる。トルリは、驚いたが、そのバチで演奏を始める。


ドドドドドドドド ドドドーン  ドドドドドドドド ドドドーン ……


激しい演奏が終わり、汗びっしょりのトルリに統制補助の大納言が言う。


「打楽部族の巫女様、バチを持った両手を前に突き出して「音楽魔法 シンバル」と念じてください」


トルリが言われた通りにすると、バチが光り輝きシンバルに変化した。トリルが唖然としていると、統制補助の大納言が再び言う。


「打楽部族の巫女様、バチを持った両手を前に突き出して「音楽魔法 銀色のバチ」と念じてください」


トルリが言われた通りにすると、シンバルが光り輝きバチに変化した。トルリは目を見開き呆然としている。アイーダが統制補助の大納言に話しかける。


「打楽部族の子神殿とは連絡がとれていないの?」

「はい、弦楽部族の子神殿の時と同じです。全く交信できません」

「そう、近いうちに打楽部族の子神殿に行けるかもしれないから、連絡がとれるようになったら、『雷神』を教えてくれるように伝えてくれるかしら?」

「かしこまりました。巫女様」


その会話が終わると、トルリにフェネとアニマが駆け寄り、抱き合って喜んでいる。それを見たヴェーヌが呟いた。


「これで、『星とバラの妖精』は星魔法使い4人、音楽魔法使い4人の合計8人ね。太陽系の惑星の数が8個、1オクターブのドからドまで音の数が8音。8人は運命の人数だわ」 



お読みいただきありがとうございます。

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毎週火・金の午後6時に投稿予定です。


参考

2006年8月14日、チェコのプラハで開かれたIAU総会で、冥王星は惑星ではなく、準惑星に分類されました。

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