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第10話 お土産 

 埴輪鬼を討伐した翌日の朝食後、アイーダたちがティルームお茶を飲んでいる。お茶を一口飲んだ後、アイーダが言う。


「昨日の夕食の黒牛のシャブシャブは美味しかったわ。お肉が柔らかくて味も美味しかった。一口食べた瞬間にとろけて、肉汁が口の中に広がるのですもの」


コクコクしながらバービレも言う。


「お肉の甘みをしっかり感じられたニャ、秘伝のごまだれも一級品だったニャン」

「私もあんなに美味しいお肉は初めて食べましたの。お野菜も美味しかったですわ。というのに、あの子たちはお肉しか食べないのだから……」


レジェラが離れたテーブルの『星とバラの妖精』たちを見ながら言う。アースも苦笑いをしながら言う。


「まあ、それはそれとして、今日はどうする? ここの領主が酒呑鬼、魔王を探しているらしいが、それが見つかるまでは、動けないからな」

「私はお土産を買いに行きたいわ。黒豚や黒牛も携帯魔法に入れておけば、大丈夫だから」

「そうニャン。他にも美味しいものがあれば、買いたいニャン」

「そうですわ。食べ物以外にもいい物があるかもしれません。いろいろと探して回るのも楽しいと思いますわ」

「俺は昨日飲んだ蒸留酒、焼酎だったか、あれを買いたい」


今日はお土産を買いに行くことで話がまとまる。そこにフェネがやって来る。


「アイーダお姉様、相談があるのですが」

「あらフェネ、何かしら?」


フェネの相談事は、音楽魔法一族のそれぞれの部族固有の音楽魔法についてだった。弦楽部族には転移魔法、打楽部族には雷神魔法がある。しかし、管楽部族には部族固有の魔法がない。


大昔はあったのだろうが、子神殿と離れてしまったので、失われたのではないか? 子神殿が帰って来たのだから、確認してみたい、とのことだった。アイーダは少し考えてから言う。


「そうね、弦楽部族も打楽部族も子神殿が復活したから、部族固有の魔法も復活したのよね。試してみる価値はあるわ」


アイーダとフェネ、アニマ、トルリ、パシファは管楽部族の子神殿に向かう。そして、アイーダとフェネの2人だけが子神殿の中に入ると、統制補助の小納言の声が迎える。


「副巫女長様方、ようこそいらっしゃいました。本日はどのような御用でしょうか?」


「管楽部族だけに使える音楽魔法があるのかしら? あったら教えて欲しいのだけど」


アイーダが尋ねると、小納言は即答する。


「ございます。音楽魔法 乙女の祈り です」


アイーダとフェネは顔を見合わせる。その表情は嬉しさと期待に満ちている。その内容をすぐに知りたいと、フェネが前のめりに尋ねる。


「それはどのような音楽魔法なの?」

「曲を演奏をしている間、言葉を使わずに、他の人と会話できる音楽魔法です。会話できるのは1人だけです。演奏を始める時に、相手を思い浮かべてください。その人との距離は、演奏者の保有魔力量によります。それでは曲を流します」


穏やかなで美しいメロディが流れ始める。祈る少女の純粋な心情を表現しているようだ。5分ほどで曲は終わる。目を閉じて静かに耳を傾けていたアイーダとフェネが目を開く。アイーダが言う。


「ありがとう、小納言。早速試してみるわ」

「どういたしまして。お役に立ててなによりです」


2人が子神殿の外へ出ると、みんなが待っていた。アニマがフェネに駆け寄ってきて、尋ねる。


「どうだった? どんな音楽魔法だった?」

「言葉を使わずに、遠くにいる人とも会話できる音楽魔法よ。これから試してみるわ」


そう言うと、フェネは横笛を取り出して詠唱する。


「音楽魔法 乙女の祈り」


目を閉じて、横笛の演奏を始める。



アルタイルの森の中、フェネのすぐ下の妹のアレリが、ヨチヨチ歩きのサーヤと手を繋いで散歩している。アレリが歩くのを止めて、周りをキョロキョロ見渡す。


「フェネお姉様の声が聞こえたような? お姉様は倭国に行っていて、ここにはいないはずよ。気のせいかしら?」


頭の中で、「気のせいじゃないわ。音楽魔法よ」と声がする。アレリは驚くが、サーヤをチラッと見て、頭の中で返答する。「本当ですか? じゃあ、証拠に倭国の美味しいお菓子と可愛いお人形をお土産に買ってきてください」すると、返事がある。


「わかったわ。楽しみに待っていて、じゃあね」アレリは信じられない思いだったが、サーヤに言う。


「サーヤ、フェネお姉様が倭国の美味しいお菓子と可愛いお人形を買ってきてくれるといいわね」


すると、サーヤはニッコリして答える。


「わーい、サーヤは美味しいお菓子も可愛いお人形さんもだーい好き」



フェネが演奏を止めて、目を開けて言う。


「大成功よ。アルタイルの森のアレリと会話ができたわ。お土産に美味しいお菓子とお可愛い人形を買って帰ることになったわ」

「「「おおー」」」


アニマとトルリ、パシファが声を上げる。


「すごく便利そうな魔法ね。お菓子を食べに行こうと誘ったり、お肉を食べに行こうと、こっそり誘ったりする時に使えそう」

「森に狩りに行った時に迷子になった時や獲物や魔物をチームで狩る時に使えそう」

「お茶やお食事の用意ができた時のお声がけに使えそうです」


3人3様の意見が出る。そこにサユリがやって来る。


「みなさん、おはようございます。昨日はありがとうございました」

「サユリさん、少し顔色が悪いようだけど、どこか具合が悪いのかしら?」


アイーダが心配そうに尋ねる。


「昨日、黄金のタクトを使った後から体がだるいのです。今日は少し良くなったのですが、こんなことは初めてです」


それを聞いてアイーダは、携帯魔法から1本のビンを取り出してサユリに渡して言う。


「それは魔力の使い過ぎだわ。そのビンに入っているのは龍王丸よ。1粒飲めば治るわ」


サユリは龍王丸の1粒を口に入れる。すると、サユリの顔色があっという間に良くなる。


「あっ、だるさが消えました。体が軽いです」

「龍王丸は魔力を回復するのよ。でも1日に1粒だけよ。そのビンの龍王丸はあなたにあげるわ」

「ありがとうございます。助かります」


サユリはお辞儀をして、お礼を言う。


「いいのよ。ところで、お土産を買いたいのだけど、どこに行けばいいのかしら?」

「それでしたら、神宮の正門前の通りにいろいろなお店が並んでいます。その中にお土産店もたくさんあります。近いですし、お勧めです」

「わかったわ、ありがとう。じゃあ、早速行きましょうか」


そして、アイーダたち4人は正門の方へ歩いて行く。それを見送ったフェネが言う。


「おはようサユリ、昨日は頑張ったわね。魔力切れ寸前だったんじゃない? 龍王丸はなるべく早く口にした方がいいわよ」

「おはよう、フェネ。私は魔力切れなんて経験なかったから、分からなかったの。これからは気をつけるわ。それで今日はどうするの?」


言われてフェネはメンバーの方を見る。今日の予定はまだ決まっていなかったのだ。すると、プレヤが言う。


「僕たちもお土産を買いに行こう。買い物は楽しいから」


残りのメンバーもコクコクしている。フェネはサユリに向き直りお願いする。


「サユリ、私はお土産に美味しいお菓子と可愛いお人形が欲しいの。いい店を紹介してくれないかな?」

「いいわよ。私も一緒に行くわ。さあ、行きましょう」


神宮の正門を出ると、とてもとても広い広場があり、その先には箱馬車4台が並んで通れる幅の大通りがあり、その両横にお土産屋店や食堂、服屋などがずらりと並んでいる。サユリの説明によると、オンラク神宮は倭国でも有名な神宮で多くの観光客が押し寄せる。その観光客を相手にするお店がたくさんあるらしい。


「お土産用のお菓子だったら、このお店がいいわ。美味しい倭国のお菓子がたくさんあるのよ」


サユリの言葉に、『星とバラの妖精』たちはそのお店に入る。お店には美味しそうな倭国のお菓子が数十種類も並んでいる。1個1個も程よい大きさで、花の形をしているものある。


色も美しくて可愛いい。ほのかな香りがあるものもあり、見本に置いてあるお菓子に楊枝を入れると、すっと入り柔らかい。どれもこれも西の大陸にはないものである。どのお菓子にするか決められないトルリがサユリに尋ねる。


「ねえサユリ、倭国南部特産のお菓子ってあるの?」

「あそこの白いお菓子がそうですね。中にアズキから作られる餡が入っているものと入っていないものと2種類あるけど、原料の山芋がいい感じで、どちらも美味しいです」


結局、決められなくてたくさんの種類のお菓子を少しずつ買うことになった。


次に大きな人形店に入る。並んでいるのはたくさんの倭国の人形。きれいな着物を着た可愛い人形たちが並んでいる。『星とバラの妖精』たちは、それぞれが店内に散って行くが、音楽魔法使いの女の子たちは1つのコーナーに集まる。


彼女たちが目を輝かせて見入っているのは、赤い厚い布を敷いた階段状の置台の上に置かれた人形たちだ。一番上の段には紫の袴を着ている男の子の人形と十二単を着ていている女の子の人形。次の段には、お盆や水差しを持った3人の女性の人形。3段目には楽器を持った4人の子どもと口を開けている1人の子ども、合計5人の子どもの人形が置いてある。4人の女の子たちにサユリが言う。


「ここは女の子のお祭り、ひな祭りの人形のコーナーです。ひな祭りの人形は、女の子を見守ってくれる人形と言われています。西の大陸風に言えば、一番上の段は王子様と王女様、次の段がお付の侍女、3段目が楽団の子どもたちの人形でようか」


音楽魔法使いの4人の女の子たちが見ているのは3段目の楽団の人形だ。


「「「「かわいーい」」」」


一斉に声を出す。しかし、アニマが不満を口にする。


「どうして弦楽器を持っているお人形がいないよ。横笛を持っているのが1人、歌っているのが1人、打楽器を持っているのは3人もいるのに」


たしかに、太鼓、大皮、小鼓と打楽器を持つ人形は3つある。サユリが言う。


「楽団のお人形たちが持つ楽器は、バリエーションがありますから、注文すれば変えられると思います」


店員に尋ねると、楽団の楽器は変更可能とのことだったので、全員が満足して

ひな祭りの人形を買う。横笛が1人、歌っているのが1人、小鼓が1人、箏が1人は共通。フェネとパシファは笙1人、アニマは琵琶1人、トルリは太鼓1人を、それぞれ追加して楽団員5人のひな祭りの人形を買ったのだった。


もちろん、それ以外の倭国の人形もたくさん買ったのだが、それは星魔法使いの女の子たちも同じだ。ただ、甲冑を身に着け、弓と剣を持つ「埴輪 挂甲武人」も買ったのはプレヤだけだった。


*「埴輪 挂甲武人」は国宝です。


お読みいただきありがとうございます。

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参考

「乙女の祈り」 作曲 バダジェフスタ

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