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衝撃の新事実

「想像していたよりずっと大きいのだが・・・。」


「そうか・・・?私のなんてほかの政治家よりずっと小さいはずだが・・・。」


そう首をかしげるフェルナーに貴弘はあっけに取られてその大きな邸宅を見ていた。


日本の高給取りの政治家の邸宅を見慣れていて、ある意味油断していた貴弘はそれらよりもはるかに大きい敷地を見せられて半ば絶句していた。

彼は心の中で思った。

(こんなのありかよ・・・。)と



青年が大きな引き戸を勢いよく開けると小さな少女が出てきて


「おかえりなさいませ、姐さん!」


とフェルナーに勢いよく抱き着いた。フェルナーはその子を撫でた後抱き上げた。


「その子は誰だ?妹か?」


「この子はね…私の娘だよ!」


フェルナーはその子を肩車した後そう誇らしそうに言う。


「実の娘になんつーよばせ方してるんだ。」


彼は極道組織のような呼び方を実の母にする幼子に驚きを隠せなかった。その声を聴いてフェルナーは


「じゃあまずはぼくの部屋でいろいろ話をしよう・・・。君が馬車で寝たせいであまり話しできてなかったし・・・。」


といい、奥へと進んでいった。

彼もそれに続く。シャンデリア、ろうそく、レッドカーペット、彫刻・・・。どれもが最高級のものだった。素人の目から見てもわかるだろう。


(こ、壊さないようにしないと・・・。)


慎重にゆっくりと抜き足で歩く彼にフェルナーはからかうように


「君は面白い奴だね。」


という。そして、ある一つの木製の扉をあけ、


「ここだよ、応接間は。」


と僕を手招いた。あまり広くなく、そこには長机が一つと椅子が二つあった。だがそれ以外の家具はなく、部屋はさほど飾り気がない。大きな屋敷のせいでどこか寂しく見える。


貴弘は椅子に案内されてちょこんと座った。そしてフェルナーは部屋の内装を整えている。

するとさっきの娘がてくてくとティーポットを持ってきた。


「姐さん。どうぞ」


「ありがとう。」


そう言ってフェルナーは娘がかかげたおぼんを持ちすぐ近くの机に置いた。


「じゃあ始めようか。紅茶でも飲んでくつろいでくれ」


フェルナーは深々と座って話し始めた。


「そういえば名前を聞いてなかったね。」


「鈴木貴弘です・・・。」


「あんまり堅苦しくしなくていいんだよ・・・。」


廊下の装飾を見て萎縮した彼に心配そうに声をフェルナーはかけた。そしてフェルナーは紅茶を一口すすった。


「改めて自己紹介するよ。私はフェルナー。このソレイユ帝国の外務大臣だ。僕のことはフェルとでも呼んでくれたまえ。僕らはこれからペアでの行動になると思う。僕らは「相棒」だから遠慮は抜きだ。約束してくれ。」


そう言って笑みを浮かべるフェルナーの挙動は一挙一動誇り高く優雅だった。


「君はこの国を知らないのかい?」


「ああはっきり言って何も知らなくて当惑しているよ。」


「じゃあ地図を見て話そう。」


そう言ってフェルナーは懐から地図を取りだし、床に広げた。フェルナーは床に座って話し始める。貴弘も促されるままに床に座った。


「まず、これは大陸の地図だよ。この世界は一つの大陸になっている。」


大陸の形は一言では言いにくい複雑な地形だった。


(パンゲア・・・ではないな。こんな形ではなかった・・・はず。ここが異世界ってやつか・・・。)


貴弘は一昔前にみた図鑑に載っていた太古の地球とこの大陸を重ねた。そして自分の状況を悟った。だが不思議と焦りはなかった。


向こうの世界にいても暗い未来を予測する人間であふれていたから、気分転換としては逆に良かったと彼は思った。


暗い表情が顔から消えた彼にフェルナーは一つ質問する。


「そういえば君のような服装を見たことがないね。君はどこから来たんだい?少し興味があるね。」


貴弘は(時空がゆがむとか歴史が変わるとかなってしまうかも・・・。)と悩んだものの


「俺がいたのは日本国って場所だよ。」


と正直に話した。


「聞いたことないね・・・。ちょっと待って。」

そう言って自分の記憶からどうにかひねり出そうとしてうなっていた。が、やはりフェルナーは知らないようだった。

「すまない。あとで情報屋に調べさせておくね。」


「ありがとう。だが気にしないでくれ。」


そう言って貴弘は地面の地図に目を戻した。


「ちなみに僕らの國はここだよ。」


そう言って大陸ではなくその近くの島々と大陸のほんの小さな一部分をフェルナーは指さした。


やはりその島々は日本とはまるで違った。大きなお好み焼きのようなリアス海岸のある島が一つだけ、周りにほかの島は書いていなかった。それにソレイユはほかの国々よりずっと小さかった。

「ほかの國より小さいだろう?君は我が国を小国と思うかい?」


「いや、この小ささで大国になった国を知っているから別に何とも思わないよ。」


それを聞いてフェルナーは嬉しそうだった。


「じゃあ我々の国の話はひとまずこれくらいにしておこう。」


そう言って地図を折りたたみ懐へしまった。そしてフェルナーは貴弘に一つ質問した。


「ちなみに君はいくつだ?」

「23だな。」

「へ~。僕は18だよ。いい歳の差だね」

(年下だったのか・・・)

内心彼はそう思った。フェルナーは娘もいて外務大臣というポストに座る身からかずいぶんと大人びて見えた。


そして、一瞬話のタイミングが開き少し覚ましていた紅茶をすすろうと貴弘はカップを持った。するとフェルナーは話題を変える。


「ところでだ。君は私に今までなぜ秘書ができなかったのかと聞いたね?」


「そういえば聞いたな。」


「理由はいくつかあるんだけどね。うち何個かは後々話すとしよう。今はまだ君を手放すつもりはないからね。一つ目はね・・・」


そう言ってフェルナーは一言短く告げた。


「私が女だから。」


「ごほっ!」

それを聞いて紅茶を含んですぐだった彼はいきなり紅茶を吐き出した。

「なんだ・・・。わからなかったのかい?」


「男に見えるわ!」


貴弘はそう言って突っ込みを入れる。


「じゃああの子って・・・。」


「そうだよ。実の娘じゃない。一人で過ごすのは少し寂しいからね。親戚の子を養子を取ったんだ。よくできた子だろう。」


そう誇らしげにまた一つ自慢した。


「あの子はマリーという。私の婚約者として面倒を見てやってくれ 。」


「は?」


いきなりの宣告に鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする彼にフェルナーは一言


「言っただろ。ビビッてきたって」


といった。


「あれってそういう意味だったのかよ・・・。」


「今までの他の人はただ優秀だったからスカウトしたんだが・・・ちなみにこれを話して9割が辞めたぞ。女の下につけるかってね。」



旧来の日本社会のようだと貴弘は思った。だがそんな逆風があるほうがおもしろそうだとも思った。


「どうだ?辞めたくなったか。女の下につくのはいやか?」


そういって、フェルナーは伺うように聞いてきた。しかし、もう彼の腹は決まっている。


「いや、べつに。女の下につくことには何ら抵抗はないぞ。」


「よかった。」


そう言って笑う彼女は優雅というよりは無邪気だった。


「じゃあ今日は一緒に寝よう!婚約者としての第一歩だ!」


「寝るわけないだろうが!」


そう言って彼らはしばらく押し問答をして夜まで続いた。

(前言撤回、こいつはまだまだ子供です。)

彼はそう思った。


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