金魚の餃子を食べる女子中学生
挿絵の画像を作成する際には、「AIイラストくん」を使用させて頂きました。
私のゼミ友である台湾人留学生の王美竜さんは、台南の実家で暮らす中学生の妹さんと大の仲良し。
スマホのメールアプリやSNSを使って、盛んに遣り取りしてるらしいの。
「見て、蒲生さん!珠竜ったら、昨日も両親に連れられてレストランで晩御飯を食べたみたい。」
「へえ、どれどれ?」
そうして差し出されたスマホには、嬉々とした様子で座る妹さんの画像が表示されてたの。
美竜さんったら、五歳下の妹さんの事が可愛くて仕方ないみたいだね。
一人っ子の私には少し羨ましいな。
それは良かったんだけど、問題は次の画像だったの。
「えっ…」
何と妹さんが牛肉麺のお供に食べようとしていたのは、赤い金魚だったんだ。
お腹の辺りを箸で摘まんで、ラー油と醤油のタレに浸して。
子供の頃に出目金を飼っていた私としては、実に衝撃的な光景だったよ。
「ねえ、美竜さん…妹さんが美味しそうに食べてるのって、もしや金魚…」
「ああ、金魚餃子の事?食紅で着色した皮で形を作るから、一手間掛かっていて美味しいんだ。」
ゼミ友の返事を聞いて、私は正直ホッとしたの。
金魚ソックリなのは形だけで、実は餃子なんだね。
あれだけ精巧な作りなら、きっとSNS映えするだろうな。
ところが美竜さんの次の一言で、私は再びドキッとさせられちゃったの。
「あの店の金魚餃子は珠竜の好物なんだ。何せ餡が擂身でアッサリしてるからね。」
「えっ!擂身?」
擂身って事は魚介類だよね。
それって、もしや…
「ねえ、美竜さん…ひょっとして金魚の擂身じゃ…」
「ううん、あの金魚餃子の餡は海老の擂身だよ。うぐいすパンにも鶯の鳥肉は入ってないよね。それと同じだよ。」
それを聞いて安心したよ。
金魚餃子に本当の金魚は使わないんだね。
妙な想像して一人でドキドキしてたのが恥ずかしいよ。
だけど私の過剰な反応はゼミ友の誤解を招いちゃったんだ。
「さっきから金魚に興味津々みたいだけど…もしかして蒲生さんは金魚を食べたいの?それなら鮒料理で代用してみたら。金魚は元々、緋鮒だった訳だし。」
「えっ!いや、私は…」
いつの間にか私が金魚を食べる話になっちゃった。
ううむ、どうした物かな…
「信州名物の小鮒の甘露煮に滋賀の鮒寿司。金魚って事に拘らなきゃ、どれも熱燗の肴に最適だよ。」
「いやいや、別に私は金魚を食べたい訳じゃないからね!」
こうは言ったけど、甘露煮や鮒寿司に惹かれている事は否定出来ないんだよね。
本当に鮒と金魚って味が似てるのかな?