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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

初恋ヒップ

作者: ヒロモト


「おや。またお会いしましたね」


「こんにちは」


宮下さんは僕の隣のロッカーを開けて服を脱ぎだした。

宮下さんとはこの銭湯でちょくちょく会うようになってよく話をするようになった。

大学入学を期に上京してきた僕の初めての友達だ。

70才ぐらい?白髪の長髪。

年の割に筋肉質。

かっこいい。僕もこんな大人になりたいな。

おっとあまり見ていたら失礼だな。


「じゃあ僕はお先に」


「ええ」


宮下さんは恥ずかしがりなのかいつも腰に長めのタオルを巻く。

男しかいないのに隠す必要あるのかな?

ものすごい包茎とか?


「……うっわ」


浴場に入るとゴツい入れ墨の怖いお兄さん達の集団が……どう見ても極道さん。

桜吹雪。虎。般若……入れ墨ってたくさん種類があるんだなぁ……


「お前!ガン飛ばしやがって。見せもんじゃねぇぞ」


「ひぃっ!」


「おんっ!?」


「おおんっ!?」


ジロジロ見てしまうのは僕の悪い癖だ。

怖いお兄さん達に囲まれてしまった。

どうしよう。まてよ?今はマズイ!

宮下さん!入ってきちゃだめだ!どうか警察に連絡……


「ほう。田崎んとこの若いヤツは素人さんに手ぇ出すのかい?」


「誰だてめぇ!……あ」


お兄さん達は宮下さんを見て固まった、と思ったら全員腰を低くして両膝に手のひらを置いた。

「お控えなすって」のポーズだ。


「……この旦那は宮下の親分のお友達でしたか?」


「俺の友達とかじゃねぇ。おめぇらは素人さんに手ぇ出すのかって聞いてんだ」


「あぁ。いえ。面子というか舐められちゃいけねぇかと」


「舐めるもクソもねぇんだ!素人さんあっての俺らだろう?暴対法も知らねぇか?おや?そこのお前は代貸じゃねぇか。ああいけないねぇ。代貸が出てきたら尻尾切りとはいかねぇ。このお兄さんが通報したらおめぇらはマル暴に組ごと潰される」


「いや!親分さん!それだけは!親父に殺されます!家の親父の残忍さ。ご存知でしょう!?」


「謝るのは俺じゃねぇだろ!?」


『『す……すいやせんでした!』』


極道さん達が僕に土下座している。

……なにこれ?




僕と宮下さんは浴場に二人しかいないのに隣同士で体を洗っていた。

静かだな。さっきの事が夢だったみたいだ。


「……」


宮下さんの背中には入れ墨はない。

でもきっとこの人も極道さんなんだろうな。

しかもかなりの大物。

……聞かないでおこう。


「入れ墨ってのはそいつの生き様です。龍の様に生きたい奴は龍を彫る。素人さんに凄む龍がどこにいるって話です」


「はぁ」


「だから私は何も彫らなかった。私は何者でもないただの人間でいい」


(あっ。もう宮下さんには会えないんだな)と僕は思った。

宮下さんはきっともうここには来ないだろう。


「さて。湯船で温まりますかね」







あれから4年経った。

宮下さんはやはり二度とあの銭湯に現れなかった。

でも俺は宮下さんを一生忘れない。

宮下さんが湯船に浸かろうとした一瞬。

タオルがはだけて宮下さんのお尻が見えた。

宮下さんは確かに入れ墨は彫ってなかったけど掘られてはいた。


お尻には油性ペンで書かれた『正』の文字。

しかも3つ。

イヤらしい事も書かれてたな。


『中出し専用』


『ゴム禁止!』


『妊娠希望!』


いつかまた会えたら宮下さんのお尻に僕が正の字を書いてあげたい。









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[一言] ……う、ウホッ! イイハナシダナー  (´;ω;`)
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