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魔女が住まう街にて〜Incident analysis by modern witches〜  作者: nashlica
file.5:【魔女と女王に従う転生者】2021年 10月
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第2節 転移と転生③

PM 5:00 札幌市営地下鉄 南北線 平岸駅


 改札を出で地上に上がり、美生を探す。彼女がまだ近辺にいないか、駅前の近辺を探し回る。

 すると、人混みの中に、黒のスーツを身に纏ってた白髪の少女が、銀行の前で立っていた。

 私は、足早に彼女に接近する。


「美生。ここで何をしてるんだい? セシリア達が、君を心配していたよ」


「あんたか。そんなの知ってるっつうの。それで? あんたも私は連れ戻す気?」


 白美生の反応に、私は首を傾げる。セシリア達が先んじてきたのだろうか。


「セシリアが来てたのか?」


「いや、あんたと顔が似てるやつよ。さっきあんたが言ってたこと同じことを言いやがったわ」


「まさか、明日香か?」


 私は、先に来ていた来訪者が誰かが察し、驚きを隠せないでいる。どうやら、私が探している間に美生と接触していたらしい。

 しかしなぜ彼女が来ていたのか? でも、今は考えないでおこう。


「どうして、彼女がここに?」


「そんなの知るわけないでしょう? まぁ、今の私には関係のないことよ」


 白美生は、ぶっきらぼうに言いながら、煙草を吸い始める。彼女はスマホを見ながら、私の方に振り向く。


「詳しい話は、明日するわ。あんたが1人になるいつもの橋に朝イチで待ってる」


「――――――わかった。ただ、言ったからには必ず来い。私も、君には話しておきたいことが山ほどあるんだ」


 私がそういうと、白美生はその場を去る。私は彼女を見送ってると、電話がかかって来た。


「もしもし」


『もしもし。アル、私よ』


「『仮面の魔女(ジャンヌ)』か。何のよう?」


 電話に相手は、『仮面の魔女(ジャンヌ)』だった。どうやら、私に用があるらしい。


『今どこにいるかしら?』


「平岸だ。例の連中に襲われてね。戦っている内に、ここまで来てしまったよ」


『まぁ、それも込みで後で聞かせてもらうわ。それより、今から私の工房まで来れる? あなたに伝えておきたいことがあるわ』


仮面の魔女(ジャンヌ)』が、何かを伝えようと、私に来るようにいう。どうやら、何かわかったみたいだ。


「了解。今から引き返すよ」


『えぇ、頼むわね』


仮面の魔女(ジャンヌ)』は、そういうと電話を切る。私は、そのまま美生を探した道を戻る形で、地下鉄に向かった。

 そこから数分かけて移動し、私は『仮面の魔女(ジャンヌ)』の待つ工房についた。


「待ってたわ、アル。もう少し遅いと思ったわ」


「それ良かったよ。退屈させちゃ、こっちが悪いものね」


仮面の魔女(ジャンヌ)』は、グラスを拭きながら、私をカウンターにまで案内する。いつもは何かしらの酒を出していたが、今回は珍しく紅茶のようだ。


「珍しいな。君が紅茶を淹れるなんて、英国(イングランド)文化は嫌いじゃなかったの」


「もう1000年も前の話よ。あなたも『英仏百年』は知ってるでしょ?」


「学院にいた頃に学んださ。それより、話って何?」


 私は早速本題に移る。すると、『仮面の魔女(ジャンヌ)』はタブレットを出す。


「これは?」


「前に見せたタブレットよ。面倒な事が起きそうでね。改めて見てほしいの」


「面倒な事? 一体、何が?」


仮面の魔女(ジャンヌ)』は、タブレットを開き、この間見せた資料を見せる。


「『転移術式』について、厄介なことが起きそうなのよ」


「どういうことだ?」


仮面の魔女(ジャンヌ)』は、転移者の項目を開く。


「転移者を呼び出して戦力を増強しているのは、もう知ってるわね?」


「あぁ、もうその辺のものは目に通してるよ」


「なら、説明は不要ね。実を言うと、相当面倒なことが起きかねないわ」


仮面の魔女(ジャンヌ)』は、『転移術式』の欄を開く。


「近いうちに、咎人と化した魔術師が一斉に放出される可能性が高いわ。そして、それに乗じて、『コノートの戦士』が攻めてくる事も考えられる」


「何だって!? 挟み撃ちを練っているのか!?」


「古い戦い方だけど、合理的な考えね。どちらに戦力を集中させても、こっちが力尽きて負けるわね。それに、件の転生者も中々強かったんでしょ?」


「そうだね。特に『フェルグス・マック・ロイ』は危険だ。彼女に助けてもらわなかったら、一溜りもなかったよ」


 私は煙草を吸い始める。そして、『仮面の魔女(ジャンヌ)』はあることを立案する。


「そうなら、分散するのはそうかしら?」


「分散? それは難しいだろう? リリィは極力動かれないんだ。それは難しいぞ」


「あなたが立案すればいいのよ。あれと縁があるあなたなら、簡単でしょ?」


 私は、ため息を吐きながら、状況を理解した。リリィを動かすトリガーは、私にあるらしい。

 そう思いながら、紅茶を飲み干した。


「中々美味い茶葉だ。こんなのも持ってたの?」


「いいえ。『優越の魔女(マリー)』からの貰い物よ。あなたにって貰ったのよ」


「なるほど。相変わらず、金遣いが荒いな」


「全てはあなたの為よ。来るべき日のためにね。正直言うけど、こんなことしている暇はないわ。でも、あなたは見逃さないんでしょうね」


「来るべき日か。なら、その為の潤いを消すしかないな」


 私は、煙草を吸い切り、立ち上がる。


「『優越の魔女(マリー)』にごちそうさまと伝えておいてくれ。それじゃ、またよろしくね。『仮面の魔女(ジャンヌ)』」


「えぇ、また何かあったら連絡するわ。アル」


 私は、『仮面の魔女(ジャンヌ)』に見送られながら、工房を去る。

 工房を出ると、セシリア達に連絡をする。


「私だ。今時間ある?」


『あなたが連絡するなんて、珍しいわね。でも、今日は難しいわね。これから忙しいのよ』


「そう。明日ならどう?」


『そうね。明日なら問題ないわ。私だけ、事務所に向けばいい?』


「いや、リリィも連れて来てほしい。大事な話があるんだ」


『わかったわ。明日、議長も連れて行くわ。あなたが急用があるって言えば、彼女は行くわ』


 私は要件をいい、そして電話も切る。解体されたラフィラの方を見上げながら、煙草を吸う。

 こうして、私は事務所に帰るのだった。

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