第4節 自決の終結①
第4節 自決の終結
AM 0:45 とある病院
病院につき、とある人物の病室に向かう。深夜なのもあり、ナースセンターも人が少ないようだ。おまけに、照明が全くっていいほどについていない。
まるで、ホラー映画でも見ているかのような光景だ。しばらく進んでいるうちに、目的の病室に着く。そして、目当ての人物に遭遇した。
「ここみたいだね。例の人物がいるってのは」
「そうですね。行きましょう」
私と明日香さんは、病室に入る。そして、彼女と面会する。
「話を聞かせてもらえないでしょうか? 『桐崎悠美』さん。あなたが、幽体離脱した経緯を」
私は、さっそく彼女に事の経緯を聞き始める。抵抗するかと思ったが、彼女は淡々と話し始めた。
「最初は、ただ体から抜けていく感じがした。もちろん、最初は怖かったけど、その内、そこから見る景色がすごく美しかったの。ええそれはもう、目が見えなくなった私にとっては絶景のほかになかった。気が付くころには、私は、それを見ることが私にとっての喜びになったの」
「それが、あなたにとっての『俯瞰風景』になった。あなたは次第に惹かれるようになった。でも、そんな時に、『亡霊』と遭遇してしまったというわけですか」
「えぇ。そんな時に、『亡霊』と遭遇したの。最初は、一緒に楽しんでいた。でも、次第に彼女に憑かれてしまい、あのようなことをしてしまった。そして、関係のない子たちを殺してしまった。許してほしいなんて言わないわ。それほどのことを、私はしてしまったんですもの」
彼女の話を聞き、私は、憤りを感じる。彼女も被害者なのに、加害所の皮を着せられたまま加害者のなってしまったことに。
そんな感情を抑えながら、私は話を続ける。
「なるほど。あなたはこれからどうするかは、もう決めておられるのですね?」
「えぇ。このまま、自らの過ちに懺悔しようと思うの。もう、私には時間もない。こんなこと言うのもあれだけど、私、かなりの重病なの。いつ死んでもおかしくないくらいに。でも、このまま死を待つほうが都合が悪いと思うの」
「よいのですか? そのようなことをして、自身の死期を早めるのを?」
「もういいのよ。私も、あなたと一緒で魔術師の端くれ。『亡霊』にいいようにされたとは言え、私の行いは、魔術師としての行為として反することをしてしまった。だからせめて、自分で死んで誠意を見せたいの。そうしないと、私は病に伏せるか、執行者によって殺されるのを待つしかないの。でも時間はそう待ってはくれない。そのうち、この身は咎人となるでしょう。私に残されてた選択は、自分で死ぬか、病に伏せるか、咎人になるのをただ待ってるだけか。ただそれだけよ」
彼女は、自身が魔術師であることを理解した上で、この選択を選んだ。私には、それを止める資格じゃない。
恐らくは、姉さんも同じことを考えていたのだろう。だから、私はこの人の選択を止める権利はないし、それを諭す権利もない。
姉さんが言うに、それはエゴと変わらないというだろう。
それに、彼女家系である『桐崎家』は、浮遊に関しては魔術院の中でも有数の家系だった。一時は、魔術院でも名の知れた魔術師が多かったが、日が追うごとにその名声は地に落ちてしまった。
彼女は、その最後の人物といっていいだろう。だが、彼女の体は魔術師として破綻している。彼女の体は末期のがんにより、余命がわずかであり、それと併発して、脳に異常が起きてしまったのだ。
目が見えないのもそのためだろう。そのため、彼女は最後に『俯瞰風景』を見たくて、昔に習った魔術を使ったのだろう。
しかし、その時にあの亡霊に会ってしまい、彼女に憑かれてしまったのだ。
そして、彼女の体は汚染され、もう少し時間が経てば咎人となっていたのだろう。体の中に魂がなくても、彼女の体は咎人となっていたはずだ。
「あなたの気持ちはわかりました。でも、自殺をしても、彼女たちは戻らない。あなたがご自身の意思でやってなくても、その事実だけは、残るのですから」
「そうね。確かに、私は仲間が欲しかったの。でも、彼女たちは何も見向き気すらしなかった。ううんそうじゃない。死んだことすらわからずにただ空を彷徨っていた。本当は、仲間なんていなかったの。だって、私は彼女たちを殺したのよ」
「でも、気が付くころには、あの亡霊に操られた。そして、姉さんによって解かれて今に至るってことですね」
「えぇ。魔女が『幽霊』を『亡霊』から解放してくれたの。だからこうして、私は自分の行いに自分で終止符を付けられる。それだけできるなら、幸せなことよ」
「贖罪……ですか。それならもう、私からは何も言うことはありません」
彼女は、最後に話し出す。
「ねぇ、私の手、どうなっているのかしら?」
彼女はそういい、私は恐る恐る彼女の手に触れる。その手は見るからに、咎人と化していたのだ。だが、本人の前ではそんなことなんて言えない。
私は、彼女の手を触り、嘘をつくだった。そう、優しい嘘を。
「綺麗な手をしています。とても綺麗な手を」
「そう……。よかった……。」
私は、彼女と話を終わらせ、病室から立ち去ろうとする。すると、去り際に彼女は紙袋のほうを指差した。
「ねぇ。お帰りになるなら、これ持って行ってもらえるかしら? 誰かが見舞いに来た時に置いて行ったのだけど、私には不要なの」
「わかりました。では、失礼します」
私と明日香さんは、病院から立ち去る。紙袋を持った明日香さんは、何かをつぶやいた。
「マカロン? もしかして、あれも来ていたの?」
「そうかもしれませんね。姉さんといい、何をしていたのでしょうか?」
私も、なぜなのか疑問に感じる。かくして、私と明日香さんは車に戻り、姉さんに報告してから車ですすきのに戻るのだった。




