第1節 魔女が営む探偵事務所⑤
AM 11:25 北海道警察 中央警察署
五十嵐さんに案内され、遺体安置室に向かう。薄暗く照らされている廊下を歩くこと数分、五十嵐さんは扉を開けた。
安置室に入ると、警官らしき人達が敬礼をし、五十嵐さんは遺体が置かれている場所へと私を案内する。
ドラマで見るような台に、白い布で覆い被されたそれは、素足にタグがつけられその素肌からは生気すら感じなかった。
「これが今朝、うちに運ばれた遺体だ。法医の連中が言うには、死後2日経過してるそうだ」
五十嵐さんが布を取ると、全裸で横たわる10代の女性の遺体が現れる。見た目から判断して、女子高校生と見て間違いないだろう。
首のあたりには、刃物で切った跡がくっきりと見えてる。恐らくは、こっちが殺した方で間違いないだろう。
遺体を観察していると、胸部に何かの痣がある。本来なら、あるはずのない痣がなぜあるのだろうか?
「この痣は?」
「鑑識の調べだと、関連してる事件の被害者の胸部に似てる物らしい。何を表してるのかは全く分かってないんだそうだ」
五十嵐さんが言うには、鑑識でもわからないものらしい。当然だ。これは魔術によって付けられたものだからだ。
被害者は、これを付けられては、意のままに操られ、要が済んだら自殺させたのだろう。
私は、鞄から道具を出す。砂が入った瓶を取り出し、コルクを開けてそれを左手につける。
五十嵐さんたちは、私の動作に目を向ける。私は、それを気にせず作業を続ける。
小杖を持ち出し、砂だらけの左手に向けて魔力を込める。
すると、左手に纏わりついてる砂が反応し、遺体の痣に纏わりつく。
「何だこりゃ? 手品の類か?」
「砂に魔力を与えて痣を調べさせている所です。もうそろそろ、答えが出ますよ」
私は五十嵐さんにそう説明していると、痣が浮き出てきた。浮き出たそれは、『藍色』の烙印だった。
それを見た2人は、呆然とそれを見つめる。
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そもそも、魔術とは何なのか?
この星の神秘を具現化したものを、『魔術』と呼ぶ。
星の神秘の具現化には、使用者が適してる『色素』が必要となる。
そして、使える魔術も使用者の『魔素』に依存することになる。
基本的には、『赤 青 黄 緑 橙 藍 紫』と区分されると考えられている。
これを『原色』と呼び、人類はこの7色から基本的には一つは適してるそうだ。
中には2つ以上適応する者のいるんだとか。
反対に、『白 黒 灰』に区分されてるものを、『無色』と呼ばれる。
『原色』に相反するもののためか、これを扱うものはそうそういないほど、これらは忌み嫌われているくらいだ。
そして、これら星の神秘を具現化できる連中を人は『魔術師』と呼ぶ。
まぁ、大抵は自分の私利私欲で動くろくでもない奴らしかにいないのだが。
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と言うわけで、犯人は断定した。間違いなく首謀者は魔術師だ。
何かの媒体で人を集め、実験のためにこの烙印を胸部に付けさせ、被害者に犯行をさせたのだろう。
「こ、これが魔術ですか!? すごい! 初めて見ましたよ、これ!!」
「テメェは黙ってろ!! お嬢さん、これがあんたの言う魔術って奴か?」
「はい。これは紛れもなく魔術によるものです。首謀者はこれを被害者に付けさせて、犯行に及ばせたに違いないでしょう。しかし、疑問に残ることはまだあります。奴はどうやって人を集めたか。それさえ分かれば、後は楽でいいのですが」
五十嵐さんは、閃いたかの様に私に質問する。
「それじゃ、あれも同じ手口ってわけか」
「あれとは?」
「札幌近郊の刑務所で、囚人が失踪する事件も発生しているんですよ。しかも、二箇所合わせて30人程度失踪したそうです」
「それもこれが絡んでるんじゃないかってことさ。信じがたいが、全部にそれが絡んでることになるな」
どうやら、他にも奴は関与しているらしい。しかし、なぜ囚人たちが消えるのか?一体、何の為に囚人たちを連れ去るのか? ますます謎が増えるばかりだ。
魔術の実験だったら、同じ手を使えばいいのに、そんな手間をしなくてもいいはずだ。
「とにかく、もう時間だ。早く出ねぇと鑑識に怒られてしまう」
五十嵐さんの声と共に、片付けを始める。私は、烙印を移した砂を紙に乗せる。私は、五十嵐さんに案内されるように、エントランスに向かった。
「色々とありがとな。また何かあったら頼むな」
「いえ、こちらこそ。では、失礼しま――――」
警察署を去ろうとした時だった。魔力を感じ、振り向くと学生たちが警察署に押しよせて来た。
見るからに、男子校生らしい。しかし、目を見ると虚ろな目をしている。
私は、彼らが手に持っているものを見て、嫌な予感を感じた。五十嵐さんは、学生たちを追い払おうとした時だった。
フォンッ。ボッ!!
五十嵐さんは即座に避ける。なんと、学生から火球が放たれた。もう1人の学生は、ペットボトルの蓋を開けて、飲み物を落とす。すると、水は地面に落ちず、私たちに襲いかかる。
放たれた水は、望月さんを襲う。だが、私は火球を放つことで免れた。学生たちは、もう一度魔力を込める。私はその隙を狙い、火球を放つ。火球は学生の杖を落とし、それを持っていた学生は倒れ込む。学生たちは逃げ始める。しかし、そのうちの1人が逃げ遅れる。私は、その隙に学生の影に向けて魔術を放ち、学生を拘束する。
「誰の差し金だ?」
私は、質問をするが、反応がない。学生はもがくが影が拘束されて動けれない。私は小杖に解呪を魔術を唱え、小杖の先端を学生の胸部に付ける。
ジュゥゥゥッ。
「ギャァァァァッ!!」っと悲鳴を上げる。しばらくすると、学生は泡を吹いて気を失う。
「キサラギさん!? 今、何を!?」
「これの先っぽに、魔力を与えて解呪を行ってるところです。付けた側の魔力が解く側より魔力が低いと解けるはず」
五十嵐さんは、私の行動に何かを悟る。
「どうやら、俺らは踏み入れちゃいけねぇ所に足を入れたみたいだ。それも、あんたがいないとダメなやつに」
「そうらしいですね。五十嵐さん。彼を頼みます」
「分かった。おい望月! こいつを運ぶぞ!」
望月さんは慌てながら、五十嵐さんと共に警察署に戻る。
かくして、私は、2人を見送った後事務所に戻るのだった。
次回の投稿は未定です。気長に待ってクレメンス。
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