第1節 魔女が営む探偵事務所③
PM9:10 探偵事務所 如月
皆と食事を済ませ、書庫で資料を漁る。
食堂から持ってきたウィスキーを嗜みながら、魔術書を読む。
「この手の『魔術』か?それとも、SNS等の媒体で呼び寄せたのか、後者なら勘弁して欲しいものだ」
『魔術師』である私は、機械にはとても疎い。正直、現代的なやり方はやめて欲しいものだ。
そもそも『魔術師』とは?
この星の神秘を具現化して操ることが出来る人間達のことを、人は『魔術師』と呼ぶ。
星の神秘はそれぞれの色に分けられ、それを用いて何かをすることを『魔術』と呼ぶ。
ただ、色が何色も使えるからと言ったり、1つの色しか使えないからと言って優劣がある訳では無い。
私達は、日頃より鍛錬や研究を重ねる事で、自身の成果を世に広める事が目的で動いてるのだ。
梯子から誰が上がってくる。
「姉さん。セシリアが来たよ」
「わかった。今行く」
グラスに入ってるウィスキーを飲み干し、私は梯子を降りる。階段をおり、事務所に入ると、そこにはソファでくつろいでるセシリアが居た。
「もう来たのか。電話くらいかければいいのに」
「一応、かけたのよ。そしたらあなた、全く出ないんですもの」
私は、ポケットの中に入れ、スマホを取り確認する。すると、セシリアからの不在着信が結構あった。
「魔術書を読み漁ってたから気づかなかったよ。悪いね」
セシリアに詫びながら、私もソファに座る。
「まぁ、あなたがそうなのは昔から変わらないわ。それより、どう?例の事件は」
「残念ながら、進展無しだ。魔術書を読み漁っても検討が付かない。だが今日、良い収穫が出たよ」
「ほう?それは吉報ね。どういうのなの?」
「警察の連中が直々にここへ来たよ。明日、近くの警察署に行ってくるよ」
私は、話ながらセシリアと自分の分のグラスにウィスキーを注ぐ。セシリアは、興味津々に質問する。
「へぇ?何かいい収穫があればいいわね」
「あぁ。それに、出来れば早いうちに手を引いてくれるとなおいいんだけどね」
「日本の警察は案外しぶといわよ。私も、何度も捕まった事あるけど、中々しつこくて面倒な連中よ」
「君の事だから、殴り合いの喧嘩だろう。それも酔っ払ってる時にね」
「言ってくれるわね。まぁ、ほとんど事実だけど」
セシリアは、中々酒癖が悪い。昔、ロンドンにいた頃は何度も付き合わされたくらいだ。それで何度も酷い目に会いかけたのも懐かしい思い出でもある。
セシリアは、私にタブレットを渡す。ファイルを開くと、私が追っている事件をまとめたものだった。
「これは?」
「例の事件の資料よ。これまで起こった事件を一通りまとめたやつね。これの為に2人くらい死んでしまったわ」
「なるほど。なら、そいつらの為にも早めに終わらせないとね」
セシリアは、煙草を口にくわえ、火をつけて煙を吐く。
「失礼。周りを見ずに一服しちゃって」
「構わないが、窓をかけてからにして欲しい。窓開けてから吸わないと、ラスティアに叱られるからさ」
私は、ファイルを見ながら、セシリアに言う。セシリアもまた、煙草を吸いながら、酒を飲んで私を見つめる。
「ケルンでの自爆テロ?何があった?」
「少し前にね。ケルンで自爆テロが起きたのよ。そのテロによって死傷者計104人、それも昼下がりのデパートを狙った悲惨なテロよ。問題は、実行犯は全裸で立ってそのまま爆弾を起爆させたってこと。それに厄介なのは、実行犯は前日までごく普通の一般人だって訳よ」
「そう。なら、『魔術』の類で洗脳されて起爆するタイミングで解いたって訳か」
「恐らくね。それからしばらくして、今度は成都で同じような事件が起きた。こっちの死傷者は合わせて381人。それにタチが悪い事に2割は家族連れだったみたいよ犯行動機はさっきのケルンの件と同様ね。2つの事件を足すと500人弱の人間が被害にあってるわ」
「中国は人が多いからね。それに、同一犯の可能性はかなり高いな」
「へぇ?さすがはアルね。この資料を見るだけで、犯人は『魔術師』と読むとは」
「当然さ。こんな不可思議な事が出来るのは、私達魔術師だけだ。それに、見つけ次第即急に殺しておかないと手遅れになる」
「なるほど。それは『咎人化』する事?」
「それもそうだが、次の被害を食い止めなきゃ行けないのもある。それに、今は例の病が流行ってるせいで誰も家から出られない状況だ。抑制が解かれて時が一番危険でもある」
周りの人達は、行動を抑制されてしまい、無闇に外出ができない。
しかし、私のような魔術師は別で、基本的に感染はしない。まぁ、そう言う体質だがら、厄介な事も多々ある。
ともあれ、個人的にもこの情勢にもうんざりしてる所もある。
変な話、飲食店では無いにも関わらず、行政の連中から自粛要請を要求してくるが、一方的にこっちから断ってる。
「まぁ、落ち着いたら皆、外へと出るでしょうね。犯人はそれを狙ってる感じ?」
「ビンゴ。出来れば、この情勢下の内には方をつけるさ」
「それはあれ?あなたの得意な手段を選ば無いやり方で?」
「まぁね。これを終わらせるなら、警察だろうと使えるもんは使うさ」
セシリアは、グラスのウィスキーを飲み干し、煙草を吸う。
「とりあえず、細かい事はあなたに任せておくわ。私は執行者としての仕事があるからね」
「ふっ。まぁ、何かあったら連絡しておくよ。それより、この後はどうする?」
「私はホテルへ帰るわ。ここからそう遠くは無いし」
「なら、ラスティアに乗せてもらいなよ。君、だいぶ酔ってるみたいだし」
「えぇ。そうさせてもらうわ」
ラスティアに頼み、セシリアをホテルへ送らせる。私も、グラスのウィスキーを飲み干し、空を見上げながら煙草を吸う。
かくして私は、再びグラスにウィスキーを注ぎ、セシリアからもらったタブレットを見返すのだった。
昔に書いた部分はここまでになります。次からは新しく書いたや〜つになります。
もしよければ、ブックマークやいいね、評価の程よろしくお願いします!
レビューや感想も是非!!