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魔女が住まう街にて〜Incident analysis by modern witches〜  作者: nashlica
file3:【魔女と信仰を歪めし枢機卿】 2022年 7月
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第2節 幽閉される魔女、開戦前夜②

前回までのあらすじ

リリアンヌの画策により、魔術院日本支部に連行されたアルトナ。ラスティアを抗争に参加させないことを条件に、

『グリモワル真書』を受けてる事を承諾したアルトナは、約束通り幽閉されることになるのだった。

PM 4:00 魔術院日本支部 地下牢


 リリィの手引きによって、幽閉されてから数日が経過していた。以前目隠しをされ、視界は真っ暗のままだ。

 この数日は、私はただこの状態を維持する形で、何も進展もない。だが、こく一刻と、抗争が近づいてるのは明白だ。

 それに、番人が私に拷問をしようとしないのは、誰かの入れ知恵だろう。恐らくは、リリィが言いふらしたのか、皆命が惜しいので、やろうとしないだけだろう。


「少しだけ、意識を飛ばすとしよう」


 私は目を閉ざし、意識を飛ばし始める。気がつく頃には、私の魂は肉体から離れていた。


「『グリモアル真書 第6節 『魂魄剥離(こんぱくはくり)』』。2時間程度だが、体から魂を分離させることで、幽体離脱のように動けれるわけだ。

 さて、少しだけ、鍛錬をしようか」


 私は、魔力を霊体に集中させる。私の霊体に、『色素(エレメント)』と『魔素(マナ)』が集まっていく。

 その中には、死んでいった魂や無念が、含まれている。私は、それらを霊体に取り込んでいく。それらは全て、私の魔力として還元され、私がそれらを消費することで、彼らは邪念から解放されて行くのだ。


『ほう? 自らの肉体を剥離し、鍛錬に勤しむとは』


「…………なんだ、お前か」


 奴が、私の霊体の前に現れる。何かを伝えるように、語りかける。


『せっかくだ。貴様に、一つ助言を言うとしよう』


「助言?」


『よいか? 信仰とは、即ち救いを求めるべく行う人の性だ。人とは、不都合が生じた時、神に(すが)るものだ。

 それを人は信仰と呼ぶ。だが、それを利用するものもいる。信仰とは名ばかりに、己が欲を満たすための道具として利用するものもいよう。

 それが、人の御霊(みたま)、あるいは財を貢がせる事でさえな。

 人とは弱いものよ。それが罠だと知らず、信仰の言葉の前では、全てが善と思い込む。その結果が、今貴様が集めた魂だ。過ぎた事とはいえ、所詮は自業自得。己が招いた結末よ』


「彼らを供養するには、どうすればいい?」


『当然、大元を根絶やしにすればよい。それは、貴様の得意分野だろう』


 奴の言葉に、一つの疑問が生まれる。信仰とは何か? 他人を惑わすものか、あるいは言葉だけの愚行か?

 それを正すためには、大元を潰せばいいのか? あるいは、跡形もなく根絶やしにすればいいのか?


『よいか? 必ずとも、全ての宗教がそうではない。中には、良い信仰と言えるものがある。

 それは、入信を許容せず、仲間内で進行を深めあう。人間関係(コミュニテイ)を深めあい、信仰心を向上する宗教もあろう。しかし、それが全てとは言えん。奇しくも、偏見で見れば、先に事が多いだろう。

 人はそう捉えないだろう。それが、長い歴史が生んだ末路だどしてもだ。

 人とは愚かなものよ。自らの過ちを学ばず、また同じことを繰り返す。それが例え、戦争だろうとな』


「それを正すのが、私の役目。私がお前と結んだ契約」


『如何にも。貴様は、我が器でしかない。即ち貴様は――――――』


「『魔女の転生者(お前自身)』だ」


 奴の言葉と同時に、私は自分が何者なのかを再確認する。同時に自分の使命も確認する。

 本来、ロンドンの事故で死ぬ命だったが、奴と契約を結んだことで、『転生者』として、今に至る。

『本物のグリモアル真書』を集めてるのはそのためだ。それらを全て集めることで、奴を、『虹の魔女』を知れる事ができるのだから。

仮面の魔女(ジャンヌ)』が私についているのはその為だ。彼女は『虹の魔女(やつ)』を心酔する『魔女(ジャンヌ・ダルク)』なのだから。 


『わかれば良い。それと、これは忠告だ』


「今度は何?」


『この戦いでは、(わたし)の力を必要となるだろう。そのつもりで、挑むが良い』


 そう言い残し、奴は消えていった。私は、ふと奴が言ったことを思い出す。


『――――――――この先、大きな戦が起きるだろう』


 その意味が、ようやく理解した。これは、個人の戦いではなく、聖教会、それもその上にいる巨悪との戦いだと言うことだ。

 その為には、ここから抜け出さないといけない。リリィの作戦では、両陣営に甚大な被害を出したまま、巨悪の漁夫の利で終わったしまう。

 しかし、リリィとの密約を破棄する必要がある。そう考えてると、魔力を感じたので、私は霊体を元の肉体に戻した。


「『仮面の魔女(ジャンヌ)』か」


「まだ解放されていなかったのね。『I位』め。まだこのような真似を」


「どれぐらい経った?」


「4日目よ。両陣営共、いつ起こしてもいい状態ね」


「そう。それと、『グリモアル真書』は?」


「調べたところ、『本物』よ。字も、『あの方』の物だわ。後は、あなたがそれよ読み解くだけよ」


「なるほど。少し、預かってもらいたい。いい?」


「えぇ。あれが持ってるのはレプリカと差し替えたわ。でも、あなたがここにいては、気が付かれるのは時間の問題だわ」


「そうだね。事が起きたら、すぐ抜け出そう」


「わかったわ。それまで、準備を進めておくわ」


 そう言い残し、『仮面の魔女(ジャンヌ)』は消えて行った。魔術院と聖教会が、それぞれ抗争の準備を進めてる。その中に、ラスティアと明日香も含まれてる可能性は、ないとは言えない。

 それがない事を祈り、私は、再び肉体から霊体を剥離させるのだった。 

次話から三人称になります。

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