表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女が住まう街にて〜Incident analysis by modern witches〜  作者: nashlica
file1:【魔女と欲に溺れる魔術師】 2020年 6月
15/127

第3節 魔女が与えし鉄槌①

お久しゅう。第3節、開幕です。

PM 20:30 札幌市立病院


 五十嵐(いがらし)さんの訃報(ふほう)を聞いてから、数時間が経った。その間に、遺族(いぞく)の方々が駆けつけてきたので、後のことを任せて待合室にいる。

 望月(もちづき)さんは、さっきまで号泣をしていたが今は落ち着いている。

 それもそうだ。普通の人間なら、目の前で尊敬(そんけい)している人を亡くしたなら、当然そうなるのだから。

 そろそろ病院が閉まるので、私たちは病院を出る。望月さんとJRに乗り、桑園(そうえん)から札幌(さっぽろ)の向かう。

 改札を出て、南口に行く。そして、ここで望月さんと別れる。


「キサラギさん。今日はありがとうございました。その、長く側にいてくれて」


「いえ、こちらにも責任はありますので。ではこれで」


 望月さんは、そのまま自宅の方の向かう。私も、同じく屋敷(やしき)に帰る。

 南口の方を歩くと、明日香が待っていた。


「遅かったね。もう帰ろうと思ってたところだったよ」


「色々とあってね。それより、ラスティアは?」


「もう寝てるよ。少し無茶して疲れたみたい」


 どうやら、ラスティアは少し前の戦闘で疲れ切ってしまったらしい。明日香はラスティアを寝かせてから来たみたいだ。

 私と明日香は、タクシーに乗って屋敷の帰る。


「これからどうするの?」


「あぁ。明日の夜には動くつもりだ」


「なるほど。本腰(ほんごし)を入れるわけね。君にしては少し遅い気がしたけど」


「少し、奴に付き合っただけだ。だが、少々図に乗ったようだから、もう時期奴を殺すさ」


「まぁ、こっちとしては動きやすかったから良かったけどね。

 抑制されてる状況じゃ、ああいうのにとっては絶好の機会だしね」


 明日香と会話しながら、車窓(しゃそう)から札幌の街並みを眺める。規制が解除されたとはいえ、人混みが少なく感じる。


「久々に出てるよ。君のあれが」


「そうらしい。奴を殺さない限りは抑えられないみたいだ」


 明日香も気づいていたみたいだ。私が相当頭に来ていることを。

 屋敷に着くまでの間、私は車窓を眺めていた。


 ――――――――翌日


 それから一睡することなく、あれから渡されたタブレットと昨日の事件のネットニュースを延々と眺めていた。

 死者は1名とされているが、おそらく五十嵐さんのことだろう。

 夜まではかなり時間がある。時間を過ぎるのを待ちながら、私はグラスに酒を注いだ。

 本来なら、五十嵐さんの葬儀(そうぎ)参列(さんれつ)するのが礼儀(れいぎ)だが、このご時世、遺族のみとされている為、参列することができない。

 そうしていると、頭に痛みが来る。

 

『フフフ……。久しく感じるぞ。お前の怒りを』


 頭の中に声が(ひび)く。その声の主は、1人しかいない。


「なんのようだ。勝手に出るなと言ったはずだが」


『どうだかな。だが、抑えるのはもうよかろう。お前とて、それはできん。なぜなら、お前は――――――』


「わかってる。奴に対して、もう抑える必要もない」


『フフフ……。なら、奴に裁きを与えると良い。でなければ、手遅れになろう』


 奴の声が消え、頭痛も治る。気を取り直し、私は支度を始める。


 数時間後


 夜がふけていき、全員が事務所に集まる。

 明日香とラスティアはもちろん、セシリアも駆けつけてきた。

 皆それぞれ、武装を整える。私もまた服装を整える。ラスティアは、ブローチを私の胸につける。


「車の用意もできてるよ。後は姉さんの号令だけだよ」


「ありがとう。それじゃ、行こうか」


「久々にあなたと組んでやるなんてね。血が騒いで仕方ないわ」


 私の声と共に、ガレージ向かう。ラスティアが用意した車に乗り込む。

 車を走らせ、先に寄るところがあるので、そこに向かう。

 目的地につき、私だけ降りる。紙袋をもち、ラスティア達は別の所で待つため車を移動させる。

 ビルに入り、4階の奥にある店に入る。店に入ると、望月さんが酒を呑んでいた。


「――――キサラギさん……。どうしてここに?」


「望月さん。奇遇(きぐう)ですね。どうなさったんですか?」


 望月さんは、かなり疲弊(ひへい)していた。どうやら、何かあったらしい。


「例の事件、捜査一課(そうさいっか)譲渡(じょうと)されたんです。僕は、五十嵐さんを殉職(じゅんしょく)させた責任で、メンバーから外されて……」


 警察側も、動きがあったそうだ。五十嵐さんの殉職により、捜査一課に事件が譲渡されたらしい。

 ますます面倒なことになった。私は、望月さんに今日のことを伝える。


「今日、犯人を殺しにいきます。一課が突入する前に」


「本当ですか!? 僕も同行させてください!!」


 望月さんは、私たちの行動に同行することを志願(しがん)する。


「望月さん……。申し訳ないですが、私たちがやろうとしている事は、場合によっては死ぬかもしれない。

 それにあなたを同行させる訳には行かない。終わったらおって知らせますので、今日はもうおかえりになって下さい」


「いえ、そういう訳にはいきません!! そうしないと、僕はあの世で五十嵐さんに顔向けできません!!

 無理も承知です!! どうか、お願いします!!」


 望月さんは、土下座してまで私に同行したいことを求める。私は、仕方なく望月さんの同行を許す。


「わかりました。それなら、別のルートから来てください。場所は追って伝えます」


 私は、水を渡すと望月さんはそれを飲み干す。そして、そのまま望月さんは出て行った。

 それを見届けた私は、椅子に座る。


「話聞いてたろう?」


「相変わらず、お人好しね。あれもただの人でしょうしね」


 彼女は、バーテンダーの姿でさっきの流れを聞いていたみたいだ。

 彼女は、キャリーケースをテーブルに置く。そして、キャリーケースの封を開ける。


「早速だけど、商談(しょうだん)でも始めましょう」


「はいはい。これ、手数料ね」


 私は、紙袋を渡す。そして、彼女はそれを受け取る。

 袋から取り出すと、私が用意した札束を受け取る。


「1000万。確かに受け取ったわ。あの刑事さんのツケも含めておくわ」


「そうしてくれると助かる。それより始めよう」


 私は煙草(たばこ)を口に咥えると、彼女が火をつけてくれる。

 こうして、私は彼女との商談という名の報告を聞くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
良ければブックマーク・評価お願いします! 感想とイイネも良ければ是非!!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ