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魔女が住まう街にて〜Incident analysis by modern witches〜  作者: nashlica
file.6【魔女と運河に潜む龍脈】2023年 10月
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第4節 運河に潜む龍脈⑤

PM 11:00 小樽市内某所


 小樽の街のどこかで、『世界蛇(ヨルムンガルド)』が『幻獣界』へと帰還する風景を見る者がいる。

 七森明日香は、アルトナの指示で周囲の偵察をしていたが、遠くで『世界蛇(ヨルムンガルド)』が帰還していく光景を眺めていた。


「行かなくてよかったのか? あれに近いお前が、なぜ離れている?」


 明日香の元に、彼女の友人であるリリムが現れる。彼女としては、アルトナの元で『世界蛇(ヨルムンガルド)』が帰る風景をまじかで見ていたいう認識だったのだろう。


「別に、私が付き添う程のものじゃないよ。あれは『魔女』の仕事だよ。私が関わる事じゃないさ」

「お前はどこまでも自由な人間だな。『魔女』に何を躾けられたのやら」

「さぁ。でも、あいつはそういうのを気に掛けるタイプだからね。私は自由でいていいと言われたまでだから、こうしているわけさ」


 明日香の言葉を聞きながら、リリムはタバコを咥えて一服を始める。それを見た明日香は、指に火をつけリリムのタバコに火をつける。


「にしてもすごい光景だな。さすがは伝説言われた『虹の魔女』だ」

「空にあんなに大きな門を展開するなんてね。あれじゃ、『世界蛇(ヨルムンガルド)』の大喜びだろうね」


 二人は『世界蛇(ヨルムンガルド)』が帰る光景を遠くで眺めている。そして、門が消えると明日香はリリムの元を離れる。


「それじゃ、私は帰るよ。あの二人も満身創痍だろうしね」

「そうか。行くといい」


 リリムは明日香を見送るように、彼女を見る。かくして、リリムと明日香はそれぞれの行動に移るのだった。


 ――――――――――――――――


翌日 PM 4:00 小樽市内のホテル 【アルトナ視点】


 目が覚める。目が覚めると、そこは滞在中のホテルだった。『魔女化』の術式を唱え、『虹の魔女(やつ)』になった私は、運河に棲みついてた『幻獣』を帰したようだ。

 その反動により、私は魔力を使い果たしたらしく、今まで寝ていたらしい。そういえば、今日はチェックアウトの日で、今頃は邸に帰っていたはずだが、なぜかホテルにいる。


「おはよう。って、そんな時間じゃないよね?」

「おはよう、ラスティア。君こそ体はどう?」

「私は大丈夫だよ。それより、姉さんのほうこそどう?」

「あぁ、魔力を使い果たして深く眠ってたらしい。旅先とはいえ、君らに迷惑をかけてしまった」


 ラスティアは、私が起きるまでベッドの側にいたらしい。彼女も『魔女化』したとはいえ、身体に少なからず影響はあるだろう。


「ホテル、一日だけ延長したから、今日はゆっくりできるね」

「ゆっくりって、もう夕方でしょう? そうなると後は寝るだけになるよ」

「ううん。今日はふたりで出かけましょう? 明日香さんは席を外してくれているし」


 ラスティアに誘導されるように、私は着替えさせられ、小樽の街に出る。例によって、運河の辺りまで来た私は、ラスティアと運河を眺める。


「こうしてみると、良いものだな。あんなものがなければ、素晴らしい風景だ」

「今回はゆっくり運河を眺められなかったね。でも、これでもう大丈夫でしょ?」

「そうだね。名残惜しいが、明日でこことはおさらばだ」


 運河を眺めながら、私は一服を始める。だが、ラスティアはタバコを取り上げると、それを私のタバコの箱にしまった。


「ダメだよ。ここは禁煙だから」

「そうだった。うっかりしていたよ」


 変わりと言わんばかりに、ラスティアはコーヒーを用意したらしい。紙コップに蓋がされてた淹れたてのコーヒーを飲み、札幌とは違う寒さに震える体を温める。

 人はなぜ、希少性の物を求めるのか。それは『旅』を通して『体験』を得たいのだと思う。だがそれは、いい意味でも悪い意味でも同じだ。確かに、今回の件では多くの魔術師が『龍脈』を求めてこの街に来た。しかし、それは命を対価とした代物とは知らず、気が付かない内に死んでしまったことが今回の事件を深刻なものにしたのだろう。


「さて、帰ろうか」

「うん。ねぇ姉さん、今日はいいところでご飯食べよ?」

「そうだね。魔力もそこが尽きてるしたまには食事をしないとね」


 ラスティアの手を取り、私は運河から通りに向かう。こうして、私はラスティアと小樽での最後の食事に向かうのだった。


 ――――――――――――


PM 5:00 小樽市内某所


 高層のマンションで工房を構える私は、カーテンを開け小樽の街を見下ろす。『優越の魔女(マリー)』から貰ったシャンパンを片手に、夕暮れの小樽の街を傍観する。


「あら? あなたが来るとは珍しいわね」


 金色の長髪に、彼女と瓜二つの顔が、何食わぬ顔で私の前に現れる。その両手には、銀と黒のデザートイーグルを携行してた。


「何の用? 私、リリムの伝言なしではあんたの前に来たくないんだけど?」

「もうすでに殺す勢いのある奴が何を言ってるの?」


 彼女は、銃を突き付けながら私に質問する。


「今回の件、あいつやリリムに情報をリークしたのはあんただよね? なぜ、そんな真似をするの?」

「さぁ、何のことかしら?」


 私が白を切ると、彼女は銃を撃つ。その弾丸は私の頬を掠り、弾丸は壁にめり込んだ。


「あんたのそういうこと本当に気に入らない。あいつと関係がなければ、ここで殺してやりたいくらいにね」

「あなたが私を嫌悪するのは知っているわ。これも全ては、彼女があの方の『転生者』である故のことよ」


 彼女は銃をしまうと、後ろに振り向く。その金色の髪をなびかせながら、蒼の眼光を私に向ける。


「あんたがあれの狂信者だというのは知っている。でもね、あんたの身勝手であいつが苦労するのを理解してほしい」

「えぇ、知っているわ。彼女にはそうしてもらわないと、我々の悲願は達成されない。その使命を私たちはあの方に与えられたのよ」


 私の言葉を聞き、彼女は私の工房を去る。


「それじゃね、『仮面の魔女(ジャンヌ・ダルク)』。私の目が黒いうちに次余計な真似したら、あいつが関係しようがあんたを殺してやるよ」


 そういって、彼女は私の工房を後にした。私はテーブルからタバコを出し、口に咥え火をつけた。そして、彼女の名前をいいながら、彼女を見送ったのだった。


「えぇ、それじゃね、『七森明日香(アルトナ)』。あなたは彼女の側で見ているといいわ。我ら『魔女』の悲願をね」

次回で【魔女と運河に潜む龍脈】は完結となります。

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