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魔女が住まう街にて〜Incident analysis by modern witches〜  作者: nashlica
file.6【魔女と運河に潜む龍脈】2023年 10月
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第4節 運河に潜む龍脈③

PM 9:00 小樽運河


 運河に潜む『龍脈』を封じる為に、『龍脈』の噂に駆けつけた魔術師達を追い払う。こちらは三人に対し、あちらは多勢。だが、あちらは烏合の衆であるので、全員が味方ではなく、互いに敵同士だ。

 所謂バトルロイヤルの状態だ。彼らは互いを蹴落としながら、私たちが守る運河に迫ろうとしている。私たちはそれらを蹴落とした魔術師達を次々と倒していく。そうして行くうちに、気がつけば集結した魔術師達は全滅していった。


「これで、全員か」

「そうみたい……。はぁ……。体が、もう……」


 ラスティアは体が耐えきれられず、その場に倒れ込む。彼女の体を見ると、『九尾の呪い』が頬の辺りにまで広がってきたようだ。


「はぁ……。はぁ……。だめ、もう体が……」

「『九尾の呪い』がもう額の辺りにまでに来ているね。これ以上の維持は厳しいかもしれない」

「そうみたいだな。明日香、君は辺りの見回りを頼む。他の魔術師が来ている可能性がある」

「了解。なら私は、遠くから『龍脈』の最期を見届けさせてもらうよ」


 明日香は運河から離れ、他の魔術師が来ているかの偵察に向かう。明日香が去ったことを確認し、私はラスティアの近くに寄る。


「ラスティア、準備はいいかい?」

「うん。では、始めます」


 ラスティアは、氷花を自身の胸元に近づける。そして、『魔女』に譲渡するための術式を詠唱する。


「『凍てつき妖刀に宿し妖狐よ 我が声に応じよ 我が身刻みし九門の呪印を解放し 我が血肉を譲渡せん』」


 ラスティアの周りに冷気が放たれる。そして次第に、彼女の周囲を凍りつかせて行く。


「『今 我が血肉を対価とし 妖刀に宿し魔女よ 現世に降臨せよ』」


 放たれた冷気が氷花に集結する。そして、ラスティアの体が氷に覆われていく。


「『四重術式 特級譲渡術式  『魔女転換』 』!」


 術式を唱え、ラスティアは氷花を自身の胸に突き付ける。すると、彼女の体が氷漬けになっていく。


「あ、あああ、あああああああああ!!」


 彼女の絶叫が小樽運河に響き渡る。すると、彼女の体が青黒くなり氷に覆われる。そして、氷が砕け、砕けた氷が着物になり、冷気が9つの狐の尻尾に変化していく。


「お出ましか」っと私はその情景を見届ける。そしてラスティアの体はかの九尾の狐を彷彿する姿になった。


「よく応じてくれたね。お前なら、『仮面の魔女(ジャンヌ)』の言葉では応じないと思ったよ」


 私の問いかけに、着物の女は頭を上げる。ラスティアから変わったその妖美な姿は、我ながら別人に感じる。


 ――――――――――――――――


 ラスティアの魔具『氷花』は、魔具の中でも『創作魔具』に分類される魔具だ。粒状の氷が層になり、鉄よりも強い強度を誇る。たとえ砕けたとしても、ラスティアの冷気によって鞘に収めれば修復される。しかし、使用者の体を蝕む『九尾の呪い』が使用者の体に付与され、ラスティアでなければ最悪凍死するというデメリットがある。

 しかしそれは表向きで、その中には『魔女』の一角である『Ⅴ位 『九尾の魔女』の思念が眠っている。その適合者がラスティアだ。彼女の持つ冷気の魔術が氷花と相性が良く、彼女が『九尾の魔女』の充分な憑代としてラスティアの体に憑依することで現世に転生する。こうしてラスティアは氷花に宿る『九尾の魔女』に体を譲ることで、彼女は『魔女化』が可能なのだ。


 ――――――――――――――――


 そして私は、目覚めた『九尾の魔女』に声をかける。『九尾の魔女』は私を見て微笑み出した。

 

「お久しゅうごさいます、主様。いつぶりでありましょうか?」

「久しぶりだな、『九尾の魔女』。あの『幻獣』の呪いから、よく妹を守ってくれて感謝するよ」

「あの小娘は我が憑代。この身が不死身でない故に、死なれては困るのでありんす」

「そうだな。さて、あの運河を見て、お前はどう思う?」


 私は『九尾の魔女』に、運河を見せる。すると、『九尾の魔女』は何かを察するような口で語り出す。


「ふむ。やはりここの『龍脈』は『龍脈』ではございませぬ。『神獣』に匹敵する『幻獣』が眠っていると言って良いでしょう」

「そうか。では、早く取り掛からないといけないな」


 私と『九尾の魔女』は、運河を見てこれが尋常じゃないものだと感じる。改めて見ると、運河に潜む『龍脈』が魔力源ではないと感じる。そうしていると、後ろから魔力を感じ振り向く。


「あら、もういたのね」

「『仮面の魔女(ジャンヌ)』か。それに、『優越の魔女(マリー)』も」

「お久しぶりでございます、我が主人。お会いできて光栄にございます」


優越の魔女(マリー)』は西洋に令嬢のようにお辞儀をする。すると、久しくあったのか『九尾の魔女』と目が合う。


「久しぶりね、『九尾の魔女』。5年ぶりかしら?」

「お主もよう、『優越に魔女』よ。して、お主は何ように来たのか」

「はぁ、あなた達の中の悪さは相変わらずわね。その暇があるのなら、さっさと終わらせるわよ」


仮面の魔女(ジャンヌ)』は二人を制止する。すると、『仮面の魔女(ジャンヌ)』は置いてあるポリタンクに気づく。


「後はあなただけよアル」

「あぁ、頼むよ」


仮面の魔女(ジャンヌ)』は魔術でポリタンクを浮かせ、それを私の上に運ぶ。そして、ポリタンクを破裂させ灯油を私に被せる。私はマッチに火をつけ、その火を灯油まみれの私につける。すると、私の体が火に包まれる。その瞬間、私は詠唱を開始する。


「『母なる星よ 我が声に応えよ 我こそは【虹の魔女】の正当なる転生者である 故に 我は星に仇なす者を滅殺せし代行者也』」


 炎が私を包み込み、球体のようになる。さらに詠唱をすると、炎の中から声が響き渡る。


「『今此処に 我が血肉を糧とし 【虹の魔女】よ 現世に現界せよ』」


 炎が私に衣服を燃やし、その炎が私の衣服を形成する。


「『四重魔術 特級降霊術式 『魔女転生』 』」


 炎が私の体を変身させ、私は『魔女』になる。それを見届ける『仮面の魔女(ジャンヌ)』は、深く頭を下げる。こうして、私は『キサラギ・アルトナ』から、『虹の魔女』に転生したのだ。


「久しいな、『仮面の魔女(ジャンヌ)』。さて、今宵は何ようか?」

「偉大なる我らが主よ、お久しゅう御座います。貴方様のお顔を見られて、光栄極まります」

「ほう、他の者たちも揃ってるということは、さぞかしことの大きい事か」


仮面の魔女(ジャンヌ)』は、『魔女』となった私を運河に案内する。


「ほう、これは中々なものよな。だが、窮屈そうだ。これは即急に帰せねば、死者が出るだろうよ」

「はい。我ら三人、貴方様に魔力を注ぎ、『幻獣界(向こう側)』への扉を形成し、件の物を呼び起こし、帰すという方針に御座います」

「良い案だ。では、早速始めよう」


『魔女』になった私は、『仮面の魔女(ジャンヌ)』達の案の通りに術式を行う。かくして、運河に潜みし『龍脈』に関わる騒動は終息へと向かうのだった。

次回はクライマックスになります。

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