第4節 運河に潜む龍脈①
お久しぶりです。最近喫煙者になったnashlicaです。
別の創作活動や色々あって投稿できず、だいぶ待たせてしまい申し訳ございませんが、第4節開幕します。
第4節 運河に潜む龍脈
AM 11:00 ウィングベイ小樽
ラスティアの提案により、今日も小樽市内を観光する。観光というか、どちらかというとショッピングだ。ラスティアと明日香は、楽しくショッピングをするが、私はそんな気分ではない。もちろん、運河の一件が完全に終わったわけではない。いや、状況は深刻になっている。例の噂話を流した魔術師が、輸送中に変死をしたのだ。それに、ラスティアの首元に謎の刻印が刻まれており、それが何を示すのかもまだわかっていない。だが、一言で言うのならば、運河に潜む『龍脈』が起因している。それを調べるには、まだ時間が早いのでこうしてショッピングをしているのだ。
「どうしたの?」
「いや、なんでもない。それより、随分と買ったね」
「うん。安売りしてたから、つい買っちゃった」
「まぁ、ほとんどか私とラスティアの服だしね。ねぇ、次はどこ行く?」
明日香とラスティアは両手いっぱいに紙袋をもち、ベンチで座っている私の元に戻ってくる。すると、明日香はまた次の買い物をし始める。やれやれと思いながら、私は彼女達の見守りながらベンチで本を読む。すると、隣に誰かが座ってきた。
「退屈そうね。あんまり乗る気じゃないみたいだわ」
「誰かと思ったら、『仮面の魔女』、君か」
「あら、わかったかしら? 新しい皮だから、気がつかないと思ったわ」
『仮面の魔女』が私の横に座る。見られない姿の彼女だが、私の眼の前では、彼女が『仮面の魔女』であることがわかる。
どうやら彼女は、私に伝えたいことがあるらしい。そのためでなければ、外には出ないのだから。
「何かあったの?」
「えぇ、厄介なことがね。それも厄ネタ的なやつが」
「どういうことだ?」
「まず1つに、『龍脈』が活性化してきているわ。その影響かなんだか知らないけど、それに関わった魔術師達が次々と不可解な死を遂げているらしい。それだけじゃないわ。活性化した『龍脈』の噂を駆けつけて、魔術師達がどんどん小樽に来ているらしいの。こうなってくると、何か不審なところが出てくるわね」
「何が言いたい?」
「単純な話よ。『龍脈』なんてものはない。そう、つまりは運河には別の何かが住み着いているのよ。それも強大な何かがね。あなたの妹君が、まだ生きているのは、あなたの縁が阻害しているようね。その死んでいった魔術師達は、首に蛇のようなタトゥーが刻まれていた。あれは一種の呪いね。付与したものの命を吸い取り、己が養分となって生き続ける。まぁ、人間って良く深い生き物だから因果応報よ」
「『龍脈』の正体は、『幻獣』ということになるのか? それも、強力な『幻獣』だと」
「そういうことね。『世界蛇』、『幻獣』の中でも上位に君臨する『幻獣』よ。なんらかの要因で運河に迷い込み、それを『龍脈』だと思って、魔術師達が奪い合っている状況ね。それが自分の命を奪うものとも知らずに。でも、あなたならあれを帰すことができるわ。あの方の力を借りればね」
『仮面の魔女』は、衝撃のことを口にする。『龍脈』の正体は、『幻獣 世界蛇』らしい。なんらかの要因で、小樽運河に迷い込み、運河の底で静かに暮らしてたみたいだ。しかし、それを見つけた魔術師が『龍脈』と思い、魔術師達を呼び出しては殺し合いに発展するほどの事態になったのだ。そして、『世界蛇』の怒りを買い、運河に関わった魔術師を次々と殺しているのだ。自らの養分とするために。
「『世界蛇』を帰すためにはどうしたらいい?」
「『幻獣』を現世から幻獣界に帰すには、『魔女』の力が必要になるわ。ただし、必要となる『魔女』は『幻獣』の強さに比例するわ。『世界蛇』となると、あなたを抜きとして三人が必要となる。私と『優越の魔女』のほかにあと一人がいるわ」
「ラスティアに『魔女』になってもらうしかないのか?」
「そうね。彼女が明後日死ぬと仮定して、あれを呼び寄せるには時間がないわ。彼女の中にいるあれを呼び出すしかないわ」
『仮面の魔女』はラスティアの中にいる『魔女』を呼び出すことを提案する。なんとそれは、彼女の中にいる『魔女』を呼び出そうとするものだ。しかしそれは、リスクを伴う行為でもある。ラスティアの中にいる『魔女』は、応じるかどうかもわからないもので、その上強力な魔力によって周囲を凍てつかすのだ。
だが、リリィや美羽を呼び出すことが時間的に難しい現状、これしか手はない。まずはラスティアが承諾するかどうかだ。
「あら、戻ってきたわね。私は一旦お暇させてもらうわ」
「そうみたいだな。『仮面の魔女』、後でよろしくね」
『仮面の魔女』は、亜空間を開きこの場を後にする。彼女を見送った後に、ラスティアと明日香が戻ってきた。
「どうしたの?」
「いや、なんでもない。それより、もういいの?」
「うん。充分買えたからね。それに、もうホテルに戻らないといけないんでしょ?」
「あぁ。今晩にはあの運河から『龍脈』を取り除く。でなければ犠牲が増えるだけだ」
私が今晩のことを言うと、ラスティアは頷く。だが、明日香は私の方を向きながら見つめる。時刻は午後2時。少し時間的な余裕はあるが、まぁいいだろう。
こうして、私たちはひとまずホテルに戻るのだった。
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