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魔女が住まう街にて〜Incident analysis by modern witches〜  作者: nashlica
file1:【魔女と欲に溺れる魔術師】 2020年 6月
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第2節 悪性に染まれし悲惨③

お久しぶりです。グロ描写多数なのでお気をつけてくだちぃ。何卒!

PM 10:50 中島公園


 中島公園(なかじまこうえん)に、愚者(グール)大群(たいぐん)が押し寄せてくる。そして、その大群を私とセシリアのみで食い止めようとする。

 その数は約30体。多勢(たぜい)無勢(ぶぜい)。この言葉が似合う状況というのは、まさにこれである。

 しかしながら、私とセシリアはそんな事を感じることはない。なぜかと言うと、愚者(グール)の群れなんて大したことでは無いからだ。


「来たわね。そんじゃ、一番槍(いちばんやり)はいただくわ!」


「好きにして。私は勝手にやらせてもろう」


 セシリアが飛び出すと、挨拶(あいさつ)がわりと言わんばかりの踵落(かかとお)としを披露(ひろう)した。


 バチバチバチッ!!ドゥオオオン!!!


 セシリアは、地面(じめん)にクレーターが出来る程の強烈(きょうれつ)な一撃を放つ。それにより、愚者の群れが空中に舞い上がった。

 それを見た私は、セシリアの背後(はいご)(おそ)愚者(グール)魔術(まじゅつ)迎撃(げいげき)する。


「血よ」っと術式をかけ、血の針を愚者(グール)に命中させる。その瞬間(しゅんかん)、血の針は愚者(グール)脳天(のうてん)貫通(かんつう)した。

 ブチュッ!と言う音と共に、愚者(グール)の脳天を撃ち抜かれ、腐敗(ふはい)した脳みそが黒い血と共に飛び出た。


「あら? 温情(おんじょう)のつもり?」


「どうかな? ただの露払(つゆはら)いなのかも。それより、相変わらず、『ミョルニル』の威力は(すさ)まじいね」


 私はセシリアの魔具(まぐ)を、褒める。しかし、セシリアは気にもせずに愚者(グール)の群れを次々と殲滅(せんめつ)する。

 私も、小杖(タクト)を携えて愚者(グール)の群れを次々と倒していく。


 ――――――――――――――――――――――


 そもそも、魔具というものとは、なんなんのか?

 それは、私達魔術師(まじゅつし)にとってなくてはならないものだ。これを無くして、魔術師を語れない言わば必需品(ひつじゅひん)だ。

 基本的には、剣、弓、杖の三つからになるものだが、伝承(でんしょう)に名高い道具も魔具として、現世(げんせ)に留まる事もある。

 セシリアの持つ『雷鎚 ミョルニル』はそれにあたる。

 しかし、魔術師のほとんどは伝承が語り継がれる魔具を持つことができず、通常の魔具しか持たない。

 伝承が語り継がれる魔具は、それほどじゃじゃ馬で、そして強力なのだからだ。

 ちなみに、私の持つ小杖も魔具の一種である。

 

 ――――――――――――――――――――


 それはともかく、この愚者(グール)共はどこか微妙(みみょう)におかしい。

 本来に愚者(グール)は目に映るものを見境(みさかい)なく襲うが、こいつらは統率(とうそつ)が取れている。

 ピンポイントに私たちを、執拗(しつよう)に狙ってくるからだ。


「微妙だわ、こいつらは。これじゃ、愚者(グール)じゃないわね!!」


「あぁ。これほどまで統率が取れてるとは、奴も大したものだ」


 私とセシリアは、話をしているとまた愚者(グール)の群れが(おそ)いかかる。それを私とセシリアは迎え撃つ。


「少しだけ、暴れるとしよう」


 私は不敵な笑みを浮かべると、愚者(グール)亡骸(なきがら)に手を添える。


「『二重術式(にじゅうじゅつしき) 中級造形術式ちゅうきゅうぞうけいじゅつしき・『血創作(ちそうさく)』【血剣(ブラットソード)】』」


 小杖(タクト)の周りに、血が集まり一振りの剣となる。そして、複数体の愚者(グール)をまとめて(ほうむ)る。

 セシリアに集中していた愚者もまた、私のところに向かう。

 すると、セシリアを見逃すまいと、愚者の群れを足技で撃滅(げきめつ)する。


 バチバチバチッ!!

 

「よそ見してると、死ぬわよ。『二重術式 中級連撃・雷神脚(らいじんきゃく)』!!」


 セシリアの華麗な足技により、愚者(グール)の足を粉砕(ふんさい)する。

 しかしセシリアは、容赦なく追撃を行う。


「続けて行くわよ! 『派生連撃・電旋脚(でんせんきゃく)』!!」


 軸足を上手く利用し、魔術を纏った回し蹴りで愚者(グール)の群れを一掃(いっそう)する。

 これにより、愚者の身体は胴体が真っ二つになった。

 私もまた、左手に魔術をこめ愚者を爆散させる。


「『二重術式 中級展開・『大火球(だいかきゅう)』!!」 


 ドカァァァァァン!!っと言う爆音と共に、数体の愚者(グール)を灰と化す。そして、私は立ち止まっていた愚者(グール)の首を血の剣で斬る。

 プシャァァァっと首から噴出する血を被り、顔についた血を舐める。味については、クソがつくほど不味い。


「不味い。これならラスティアの血の方が全然美味だ」


「随分と血を被ったわね〜。それにその服、ラスティアの物でしょう」


 セシリアはドン引きをしながら、私の方を見る。当然な事だ。返り血を被った挙句(あげく)にその血を舐めているのだから。

 そして、残る愚者(グール)の数は(おおむ)ね10体。30はいたはずの大群ももうこの数となった。

 だが、私の持つ血の剣は砕け、元の小杖に戻る。触媒(しょくばい)となる血が自分のものではない為かすぐに脆くなったみたいだ。

 先ほどの愚者の死体を見る。見るからに、まだ乾いていないらしい。


「――――これなら、いけるな」


 私は、それを使える事を確信(かくしん)する。そしてセシリアに、時間稼ぎをするよう頼む。


「セシリア。時間を稼いでもらえるか?」


 セシリアは私が何をするのか分かってたようなので、それを了承(りょうしょう)する。


「別にいいけど、全部倒されても知らないわよ?」


「それは困るな。せめて半分は残してもらえると嬉しいな」


「冗談よ。まぁ時間は稼いで上げるわ」


 セシリアは、愚者(グール)どもを惹きつけるように、群れの中に突撃をする。

 その間に、私は愚者(グール)の死体の血の溜まりに、自分の血を入れるよう手首を切る。

 ポタッポタッと血を流し、左手に自分の血をつける。

 そして、術式を唱えるように、詠唱(えいしょう)を開始した。


「『星よ 我が声に応じよ 汝 星の怒りを代弁せし 代行者也』」


 詠唱を開始すると、血溜まりは液状(えきじょう)から物質(ぶっしつ)変換(へんかん)され、6本の槍のような物になる。


「『我が血を糧とし 我が呼び声に応じ 穢れし肉塊より 魂を解放せよ』」


 2小節目(しょうせつめ)。それによって、6本の槍は炎を纏い、より一層破壊力(いっそうはかいりょく)を増していく。

 そして、私は最後となる3小節目を唱える。


「『今此処に 血と炎が交し武具を用い 星に仇なすものを一掃せん』」


 3小節目が唱えられた。6本の槍は、血の油を触媒とし、その刃に炎を纏う。

 そして、私の呼び声と共に、その槍は放出された。


「『三重術式 上級造形術式・『炎血融創具(えんけつゆうそうぐ)』【焔爆血投槍(えんばくけっとうそう)】』!!

 こいつはとっておきだ。冥土(めいど)土産(みやげ)にくらうがいい!!」


 6本の槍は愚者(グール)に向けて、一斉に放出される。

 愚者の群れに向けて、降り注がれた槍は突き刺さると同時に爆散(ばくさん)した。

 そして、激しい爆炎(ばくえん)土煙(つちけむり)が晴れると、黒く焦げた愚者(グール)の死体が徐々に露わにあった。

 それを見ていたセシリアは、唖然(あぜん)としながらその光景(こうけい)を眺めた。


「ほんっと、容赦のない創作魔術(そうさくまじゅつ)ね。」


「あぁ。加減(かげん)ができないからさ」


 私とセシリアは、この凄惨な光景の中を歩き、残りがいない事を確認する。


 ――――――――――――――――


 創作魔術とは、一部の魔術師が扱える術式だ。

 本来の魔術師は、魔術書に記載されている魔術を扱うのが一般的である。

 しかし、その中には自己流にアレンジして魔術を扱うものもいる。

 それが、私やセシリアが使っていた創作魔術だ。

 しかし、創作魔術は術式の調整が必要であり、地位の高い魔術師でも扱うものは少ない。

 なぜなら、創作魔術は術式の調整次第で魔力量が変動するからだ。

 私とセシリアのような、創作魔術を多用するものはかなりのレアなのだが。


 ――――――――――――――――――


 かくして、愚者(グール)の炙り出しをしていた私たちは、もういないことを確認し、事務所(じむしょ)に戻る。

 お互いの魔具を封印することで、帰路(きろ)に着く。

 魔具は、使用していないときは、保有者(ほゆうしゃ)のアクセサリーなどに擬態(ぎたい)する。

 セシリアの『ミョルニル』は、封印していると彼女のヒールに擬態するのだ。


「おかえり、2人とも。どうだった?」


「えぇ。全滅(ぜんめつ)したことを確認したわ。もうあんなに来る事もないでしょう」


「マジそれ? 私とラスティアの出番ないじゃん」


 明日香(あすか)は、残念そうに報告を聞く。終わりを確信し、事務所に戻ろうとしたときだった。

 なんと、愚者の一体が私に襲い掛かろうとした。私は、魔具を用意するが、間に合わない。

 万事休すかと思った時だった。襲いかかった愚者はなんと、空中で凍りついたのだ。


「全く。姉さんはそういうの雑なんだから」


 ラスティアは、冷気を纏った刀を鞘に収める。セシリアのまた呆気を取られる。

 こうして、割と長かった夜は終わり、私たちは事務所に戻るのだった。

   


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