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魔女が住まう街にて〜Incident analysis by modern witches〜  作者: nashlica
file.6【魔女と運河に潜む龍脈】2023年 10月
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第1節 奇妙な噂話①

第1節 奇妙な噂話


AM 11:00 探偵事務所 如月


 北海道札幌市。秋が深っているというのに、昨今の異常気象によって、実感が湧かないこの街で1人の魔術師が、ひっそりと探偵事務所を営んでいた。

 そんな、暇そうにしながら、コーヒーを読みながら本を読むのは誰か。

 私である。

 今日もまた、鑑定の依頼をこなしながら、暇を持て余していた。

 大きな戦いが起きてから2ヶ月。それ以来、魔術院より大きな依頼は来ていない。それほどまでに、魔術院は先の戦いで深傷を負ってしまったのだ。

 今日もまた、噂を聞きつけて来た者達の骨董品の鑑定を行なっている。そうまでしないと、事務所の収益が足りなくなるのだ。


「暇だね〜。何か大きい依頼が来ないかな?」


「向こうも、今は依頼を出す暇もないかもね。やっぱり、この間の事が響いているかも」


「犠牲も多かったしね。それにしても、ここはあまり人が来ないな」


 妹のラスティアは、私のマグカップにコーヒーを注ぐ。涼しくなるにつれ、ホットコーヒーも美味しく感じる。

 ラスティアが用意した茶菓子も食べつつ、もらった魔術書を読みながら客を待つ。すると、古電話が鳴り響く。私は古電話に受話器をとり、電話に応答する。


「もしもし?」


『あら、今日はすんなり出たわね。いつもはラスティアが出るのに』


「セシリアか。何のよう?」


 電話の相手は、セシリアだった。執行者も甚大な被害が出ているというのに、電話をかけてくるとは呑気なものだ。


『連れないわね〜。まぁ、それがあなたらしいわ』


「結構だ。それで? 今度は何?」


『ちょうど、あなたに用事あってね。これから来ていいかしら?』


 セシリアは、私に用があるらしい。どうやら、この辺に今来ているようだ。


「構わないよ。ちょうど、店には誰も来ていないし」


『助かったわ。では、数時間後、また会いましょう』


 そういうと、セシリアは電話を切った。どうやら、数時間もかかるらしい。私とラスティアは、それまでの時間を何に使うか考える。


「今日はどうするの?」


「13時で店仕舞いにするよ。どうせ、セシリアが来るまでの間も誰も来ないだろうし」


「わかったよ。12時半には、閉める準備をするね?」


 ラスティアは、茶菓子のおかわりを持って来ながら、そういう。

 かくして、私は読書の秋を堪能しながら、セシリアが来るのを待つのだった。


 数時間後


 なんだかんだで、セシリアが14時過ぎに到着した。どうやら、ロンドンから出る便が、遅延していたようだ。

 そのため、新千歳に着いたのは、13時頃だったらしい。今日はどうやら1人で来ているみたいだ。


「ごめんなさいね。押しかけちゃって」


「いつもの事でしょう。それで? 依頼は?」


 セシリアは、コーヒーを飲みながら、鞄から封筒を出す。私は、それを開けると、3通のレポートが中に入れられていた。


「これは?」


「あぁ、それ? そうね、ここ最近、魔術師の間で話題になっている噂話の実態をまとめたものよ」


「噂話? どうな話だい?」


 私の反応に、セシリアは呆れ気味に返答する。


「やっぱり、知らないのね。魔術院(こっち)では最近それで持ちきりなのに」


「そういうのは、伝わってこないからね。それで? それはどんな話だい?」


 セシリアは、その噂話をいう前に、コーヒーを飲む。


「そうね。実はここ最近、魔術師達がこぞっと小樽という街に足を運んでいるらしいのよ。共通しての理由としては、例の噂話を確かめるためって感じね。

 何でも、あの街には、魔術師が喉から手が出るほどの代物が眠っているらしいわ。理由はわからないけど、みんな高らかに小樽に行くのよ」


「へぇ〜。観光か何かかい?」


「さぁ。でも不審なことが多いのよ。まず一つは、この噂話の発信源は何なのか。誰が情報を撒いたのかわからないけど、元の話が人から人へ拡散しすぎた結果、中身がゴッチャになった噂話になったってわけ。

 そしてもう一つ、これが、今回大きい出来事ね。その噂話を聞いて小樽に向かって帰ってきた人間は誰もいないそうよ。

 そこが不審なのよね。まるで、やっていることがただのシリアルキラーか何かよ」


 セシリアの言葉に、私は資料を読み始める。資料を見ると、ついこの間まで在籍していた魔術師達の資料だ。


「状況が状況で、とても厄介だわ。これ以上増やされると、こっちのメンツが丸潰れよ」


「それで、私に依頼を?」


「あなたくらいしか頼めないわよ。って、よろしくなんて容易く言えないわね」


「当然だろう? 私は『特級魔術師(イレギュラー)』である以上、魔術院(本土)からの許可なく札幌を離れられない。それは、君も知ってるだろう?」


 セシリアはもう1通、鞄から出す。それは小さな封筒だった。


「議長から、許可書をもらったわ。旅行ついでによろしく、らしいわ」


「気安く許可を出すなんて、リリィも呑気なもんだ」


 私はセシリアからもらった封筒を開ける。どうやら、一週間後に代理の魔術師をここに派遣するようだ。その監視役として、セシリアも在籍するらしい。


「わかった。ではお言葉に甘えて、旅行をしようか」


「旅行って言っても、隣町だけどね。明日香さんも連れていくんでしょ?」


「3人での旅行も初めてか。そうだね、彼女の連れて行こう」


「あくまで建前なのも忘れで頂戴。私は戻って色々と話し合いをするわ」


 セシリアは、そういうと事務所を後にする。代行の魔術師が来るまで、一週間ほどだ。それまでに、準備を進めなければならない。

 こうして、私とラスティアは、出立の準備を進めるのだった。

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