【79話】雷◾️竜輝のこと
◾️◾️サンダー視点◾️◾️
【サンダー】
「・・・おい、何処まで行くんだよ?」
俺の前を歩いて行くファイヤーの背中に文句をぶつけてやる
ヴィザールを出て結構歩いたが
・・・一向に話をする気配がない
【ファイヤー】
「俺は散歩が趣味なんだよ~」
笑いながらふざけた事を答えてきた
【サンダー】
「・・・で?話ってなんだよ?」
付き合いきれないので足を止め話を振った
【ファイヤー】
「あ~・・・お前、名前なんて言うんだ?」
ファイヤーも足を止めて適当な質問を適当にしてきた
・・・こいつ
【サンダー】
「・・・どうせ用なんてないんだろ?」
不信な目線で睨みつけてやる
【ファイヤー】
「まぁまぁ、怒るなって~お詫びに俺に質問する権利をやるからさ~」
そういって俺の頭をグシグシ撫でてくる
実に不愉快だ・・・
その手を跳ね除けてやった
が、その権利はいいかも知れない
近くにあった岩に腰を下ろし、ずっと気になっていた事を尋ねてみる事にした
【サンダー】
「・・・竜輝はなんでルナの事を待ってたんだ?」
俺の言葉でさっきまでと一転しファイヤーの表情が真剣なものになった
【ファイヤー】
「・・・なんで気になるんだ?」
【サンダー】
「・・・別に、ただ気になっただけだ」
まぁ、保護者的な感情なんだろうな・・・
ルナを見ていたら竜輝の事を知りたくなったっというのが本心だ
【ファイヤー】
「話してやってもいいけど・・・条件がある」
【サンダー】
「・・・なんだよ?」
ファイヤーの低いテンションの声に少し身構えてしまう
【ファイヤー】
「ルナには言うな」
真剣な顔で真っ直ぐに俺を見ながら言ってくる
【サンダー】
「・・・なんでだよ?」
【ファイヤー】
「竜輝という人間に惹かれてほしいからだ、同情票なんて竜輝は嫌だろうからな・・・」
・・・同情票ねぇ
まぁ、いい話じゃないだろうな
【サンダー】
「・・・分かった」
素直にうなずいた
【ファイヤー】
「あ~・・・どうやって話そうかな~?」
そして、しばらく悩み
【ファイヤー】
「・・・子供の頃からルナが大好きだったって感じ?」
ニコッと笑いながらどうでもいい言葉を向けてきた
・・・考えて絞り出した言葉がコレだけだったのだろうか?
【サンダー】
「・・・それは子供の時だろ?正直子供の時の好き嫌いなんて成長の過程で忘れるもんだろ?」
こいつの言葉では聞きだせないと思ったので疑問を投げた
【ファイヤー】
「それが忘れられないくらいの思い出なんだよ~」
そう言いながら少し離れた場所にある岩に座った
【ファイヤー】
「・・・多分、竜輝に対して、心の底から純粋な笑顔を向けたのは、ルナだけだったんじゃないかな~」
言葉の意味が良く分からず黙っているとファイヤーが言葉を続けてくる
【ファイヤー】
「竜輝の父親はな~、悪い人じゃないんだけど・・・気難しい人なんだよね~、竜輝を100倍クールにした人って言ったら分かりやすいか?」
【サンダー】
「・・・なんとなく」
・・・あれ以上か
・・・クールを通り越して恐怖を感じそうだ
【ファイヤー】
「だからな~あんまり竜輝に興味を持ってない感じなんだよ、親父だけじゃなく他の人間もな・・・」
【サンダー】
「・・・母親もか?」
実際、子供に関心のない父親は多いと思う
でも、母親なら全く関心がないなんて事はないんじゃないかと思った
【ファイヤー】
「・・・アイツに母親はいない、俺も詳しくは知らないし竜輝も何も知らないらしい」
少し目線を反らしながら答えるファイヤーに感情が出ていない気がして少し怖かった
・・・なんか本当にいい話じゃないような気がする
・・・このまま聞いてしまっていいのだろうか?
【ファイヤー】
「・・・興味を持って貰って無かったからかは分からないけど、学校とかにも行かせて貰って無いし、何をするにもアイツはいつも一人だった、ずっと一人で自分に必要な事だけを吸収し、自分に必要のないものを捨てた」
【サンダー】
「・・・捨てた?」
【ファイヤー】
「そう・・・感情を捨てたんだよ」
【サンダー】
「・・・よく分からないな・・・別に親がどうとか、周りがどうだろうと、あんま関係なくないか?」
と、言うか全くわからん
・・・感情を捨てるってどういう事なんだ?
【ファイヤー】
「それはきっと、お前には分からない、もちろん俺にもな・・・」
言葉を続けるファイヤーはいつものコイツからは想像出来ないくらい辛そうな顔をしている
【ファイヤー】
「自分が笑いかけても誰も答えてくれない、自分の声を誰も聞いてくれない、すがり付いても目線すら向けて貰えない、そんな状況で育った者のしか分からないんだろう・・・」
【サンダー】
「・・・誰か居るだろう?」
【ファイヤー】
「それが誰も居ないんだよ・・・自分が存在してるのかも分からなくなるくらいにな・・・小さい頃は自分はオバケなんじゃないかって本気で悩んだらしいぜ?」
苦笑いをしながら辛そうに言った
自分は居るのに誰も見てくれない
・・・オバケか
【ファイヤー】
「ルナだけが自分の存在を感じさせたんだろうな~・・・ルナが居なくなった後はその時の思い出だけが支えだったんだろうね」
【サンダー】
「だから、ずっとルナを想ってたって訳か・・・」
【ファイヤー】
「そうそう、だから俺もさ~ルナがずっと帰って来なかったら、どうしようかと心配してたんだよ~」
そう言いながらコイツらしい笑顔でニコッと笑った
【ファイヤー】
「・・・でも、本当にルナは帰ってきた・・・実はアイツ泣きたいくらい嬉しいと思うな~」
うんうんっと自ら納得する様にうなずいている
【サンダー】
「だから、お前はルナと竜輝をくっつけようって訳か?」
【ファイヤー】
「そうだ、アイツの想いは会っても何も変わらない、むしろ燃え上がってんだよ!」
拳を握り締めテンションが上がってきたと言わんばかりに叫んでいる
【サンダー】
「・・・そうは見えないけどなぁ?」
俺が見た感じではクールでそこまでルナを想ってる様には見えなかった
【ファイヤー】
「・・・だから言ったろ?感情を捨てたってな?」
・・・あ~・・・そういう事か・・・
【ファイヤー】
「本心は自分の側にいてほしいと思ってんだよ、でも、それを言葉にする事が出来ない、考える事もしない、自分自身にすら、その感情を隠してると思うね」
・・・自分の感情を外に出しても意味はない
・・・考える事すら拒絶してるって感じか
でも、ルナの事はずっと想って来た
それが唯一の感情って訳か
【ファイヤー】
「・・・たった一つの想いを伝える事すら出来ないなんて悲しいと思わないか?」
ファイヤーが空を見上げながらつぶやいた
【サンダー】
「・・・・まぁ、な」
ずっと想って来た奴に折角会えたのに
その想いすら上手く表現出来ない
【サンダー】
「確かに・・・ 悲しいかもな」
【ファイヤー】
「だろ!ならやっぱり竜輝の思いが届くように手伝ってくれるか!?」
いきなりファイヤーが詰め寄って来た
【サンダー】
「素直にペラペラしゃべると思ったら・・・それが目的か?」
不信な目線で睨んでやる
【ファイヤー】
「まぁ、今更誤魔化さないさ!アイツの想いを知ったからには嫌だとは言わせないぜ!?」
ビシッと指を突きつけてくる
【サンダー】
「嫌だ」
しかし、ハッキリ断ってやる
【ファイヤー】
「っ!?なんでだよ!?」
苛立ったように怒鳴ってくる
【サンダー】
「昔は一人だったかも知れないが今はお前がいるだろ?」
確かに竜輝には孤独な期間があったかも知れないが
今のアイツはファイヤーが居る
【サンダー】
「俺には、竜輝はお前といて楽しそうに見えるぞ?」
【ファイヤー】
「・・・・俺じゃダメなんだよ」
寂しそうに肩を落としながらつぶやいた
【ファイヤー】
「・・・俺さ~ぶちゃけ、この前初めて見たんだよね~アイツが笑ったの」
【サンダー】
「この前?」
【ファイヤー】
「ルナと再会した時だよ」
・・・あれは
・・・笑っていたのか?
・・・気づかなかった
【ファイヤー】
「その時、思ったんだよ、竜輝には絶対ルナが必要だってな」
本当に確信を持った様に自信たっぷりに宣言している




