【74話】雷◾️闇都市ヴィザール
◾️◾️サンダー視点◾️◾️
【ルナ】
「・・・すごい」
ルナが小さく驚きの声を上げた
ファイヤーの後を付いて森を抜けると高く真っ黒な防壁が張ってあった
かなりの広さを囲っている防壁の入り口をくぐると中は町だった
ルルーカとは対象的に黒を基調とした建物ばかりだ
【ファイヤー】
「ようこそ!われらが街!ヴィザールへ!」
ファイヤーが大げさにお辞儀をしてくる
【サンダー】
「ヴィザール?闇都市か?」
ルルーカと並ぶこの辺じゃ最大の闇都市
内部情勢には厳密で謎に包まれた部分が多いという話だ
その分、黒い噂も絶えない
【ルナ】
「え?なになに?どういう街なの?」
存在すら知らないのか、少し不安そうに首をかしげている
・・・まぁ、俺も詳しくは知らないが
【ファイヤー】
「サンダーの言う通り、ここは闇都市だよ~」
ファイヤーは当たり前の様な返しをしたが
・・・ルナは全く分かってないな
・・・コイツの無知は、ある意味恐ろしくも感じるくらいだ
【サンダー】
「後からちゃんと説明してやる、とりあえず飯だ」
ファイヤーを目で急かしてやる
・・・俺は本当に限界だった
【ファイヤー】
「・・・・さすがに家はマズイかもな・・・よし!良い所連れて行ってやるよ~!」
少し考えて、ぱっと明るい顔になり
何処かに向かって歩きだした
ルナとそれに続き歩いて行く
【ルナ】
「・・・ねぇねぇ、サンダー?」
【サンダー】
「あ?なんだ?」
今まで黙って歩いていたルナが小声で話しかけてきた
【ルナ】
「闇都市って言うから、怖い人が沢山いるのかと思ったけど・・・みんな普通だね?」
そう言われて周りに目を向ける
ルルーカとは違い服などに派手さはなくシンプルな感じが目立つが
それ以外はいたって普通
街の人達も笑顔で、ルルーカのように穏やかな雰囲気に包まれている
【ファイヤー】
「それは酷い偏見だな~闇都市だからって暗い、怖いって訳じゃないんだよ~?」
少し先を歩いているファイヤーが何故か答えた
【ルナ】
「あ!ごめんなさい!・・・聞こえてましたか?」
【ファイヤー】
「うん!ばっちり!」
申し訳なさそうに謝るルナに笑顔で振り向き答えた
・・・地獄耳だな
【ファイヤー】
「別に気にしなくて良いけど、ルナちゃんは暗い色は嫌い?」
【ルナ】
「そんなことないです!みんな大人っぽくて素敵です!」
ファイヤーの問いにルナは両手を振りフォローしている
【ファイヤー】
「それは良かった!そこが嫌いだったら変えるのは難しいからね~」
そう言いながら足を止め
【ファイヤー】
「さぁ、着いたよ~!」
笑顔の前には全体的に黒い外観のレストラン
【ルナ】
「ここって・・・」
【ファイヤー】
「さぁ!入りましょ~!」
ルナが何か言いかけたのもお構いなしにファイヤーが店のなかに入っていく
少し遅れて不安そうなルナと店に入った
「お!火焔さんじゃないですか!ご無沙汰してます!」
店に入るなり、威勢のいい男の声が聞こえた
【ファイヤー】
「お~!久しぶり!元気~?」
威勢のいい男とファイヤーが話出した
「おかげさまで、楽しくやらせて貰ってます!」
かぶっていた帽子を脱いで頭を下げる
【ファイヤー】
「それは良かった~!がんばれよ~!」
満面の笑顔で男の背中をバンバン叩き店の奥に進んでいく
「ありがとうございます!ゆっくりして行って下さい!」
再び深く頭を下げた威勢のいい男を横目にファイヤーの後を追う
・・・意外とファイヤーは慕われるタイプなのかも知れない
【ファイヤー】
「こっちこっち」
店の一番奥でファイヤーが手招きし、その後ろにはドアがあった
【ファイヤー】
「ここでいい?」
そう言ってドアを開けると、そこは広い個室だった
八人がけのテーブルが置いてある
【ルナ】
「うわ~!なんか凄いですね!」
ルナが驚きの声を上げる
まぁ、なんつーか高級感があるしな
・・・ファイヤーからはあまり想像出来ない店だ
【ファイヤー】
「俺、焼肉大好きなんだよね~」
【ルナ】
「え?」
ファイヤーのつぶやきにルナが困惑の声を出した
テーブルをよく見たら真ん中に肉を焼く網が設置されている
【ルナ】
「・・・レストランじゃないんだ?」
・・・やっぱりファイヤーから想像出来る店だった様だ
【ファイヤー】
「じゃ、俺ちょっと外すから座ってて良いよ~」
そう言って入ってきたばかりのドアから出て行こうとする
【ルナ】
「え?何処に行くんですか?」
【ファイヤー】
「すぐ戻って来るから~気にしないで待ってて~」
それだけ言って早々にドアから行ってしまった
【ルナ】
「何処に行ったんだろ?」
まぁ、大体予想はつくな・・・
【サンダー】
「いいから、座ろうぜ、疲れた」
そう言って適当な席に座った
【ルナ】
「・・・ねぇ、サンダー・・・焼肉ってなに?」
少し寂しそうに尋ねて来る
・・・まぁ、コイツの常識知らずに、今更驚かないけど
【サンダー】
「テーブルに網が付いてるだろ?そこに肉のっけて焼くんだよ」
【ルナ】
「まさか・・・丸焼きじゃないよね?」
苦笑い戸惑っているようだ
【サンダー】
「多分ちゃんと加工してあると思うぞ」
【ルナ】
「そっか~!良かった〜!技能者の人はみんな丸焼きばっかり食べてるのかと思った〜」
そう言いながらルナが隣に座ってきた
・・・まぁ、間違ってもないかもしれないな