【7話】白◾️辿り着きたい場所
・・・重い
さっき買ったばかりのリュックにはりんごがパンパンに詰まっている
「・・・疲れたぁ」
昨日怪我した膝はなぜかもう痛みはないが
・・・リュックの重みで肩がしびれる
辺りは月明かりも届かない深い森
夜の暗闇に覆われた足元は岩や木の根で少しでも気を抜けば何かにつまずいてしまいそうなくらい不安定
そして、歩いても歩いても果てしなく続く道じゃない道
でも・・・見失う訳にはいかない
・・・あきらめる事もしたくない
必死に着いて行く
「あれ!?」
突然目標がいなくなってしまった
確かに今まで私の少し前を歩いて居たはずなのに
「うそっ!?」
慌てて隠れていた体を上げて辺りを見回す
「・・・いっいない」
・・・最悪だ
・・・見失った
・・・しかもこんな山奥で
「どうしようっ・・・」
絶えていた体にドッと疲れが出て地べたにへたり込んでしまった
「・・・情けないな」
一人では前に進めない現実
・・・悔しい
「っわ!?」
いきなり肩の重みがなくなった
「・・・俺が気づいてないと思ったのか?」
男の声に振り向くと
私が1時間つけていた人が見下ろすように立っていた
手には私のリュックを持っている
・・・どうやらリュックを奪われてしまったらしい
「あはは~・・バレてましたか・・やっぱサンダーさんは凄いですね~いきなり消えたからびっくりしましたよ」
疲れて立ち上がる事が出来ずに座ったまま苦笑いで言った
【サンダー】
「あれで隠れたつもりか?体を隠しても鼻息が荒くてバレバレだ」
鼻で笑いながら見下ろされた
・・・そんなに鼻息して無いと思う
【サンダー】
「これはストーカー被害の慰謝料として貰うぞ」
私から奪ったリュックを手に歩いて行こうとする
「まっまって!お願い!私も連れて行って!」
慌てて声を上げ必死に止めた
【サンダー】
「・・・お前、俺がどこに行くのか知ってんのか?」
めんどくさそうに足を止め私を睨みつけてくる
「・・・知らないけど・・・でも連れて行って!」
【サンダー】
「断る」
私の言葉に迷う事なく返して来た
でも・・・諦められない
「っお願い!お願い!お願い!貴方しかいないのっ!!」
とにかく必死に叫んだ
・・・この人だけが最後の希望だと思うから
【サンダー】
「他のやつに頼むんだな、まだ町からそんなに離れてないだろ」
「貴方より魔力が強い人は他にいなかったのっ!」
・・・嘘だ
魔力のない私には人の魔力を感じる事はできない
【サンダー】
「護衛くらいなら魔力が多少あればできる」
「貴方以外に助けてくれそうな人居なかったの!」
・・・これも嘘
他の人を探す事はしてなかった
【サンダー】
「はぁ?俺のどこを見たら助けてくれそうな人に見えるんだ?」
「オーラ!親切オーラが出てるんだよ!」
・・・これは大嘘
むしろ近づくなオーラ全開だ
【サンダー】
「・・・うぜぇ」
「・・・貴方にしか・・貴方にしか頼みたくないの!!」
・・・これは本当
・・・この人なら・・・きっと大丈夫
「っ!?」
いきなり片手で首を強く掴まれ後ろの木に押し付けられた
【サンダー】
「俺なら何もせずに助けてくれるお人よしだと思ったのか?」
首を絞めるように掴んだまま小さく笑った
「・・・思ってませんよ」
真っ直ぐにその目を見つめて答えた
【サンダー】
「へ~?じゃあ、他の奴は嫌だけど俺になら殺されても良いって事か?」
「そんな事も思ってません」
・・・それは絶対駄目
「・・・でも・・・私の願いを叶えてくれたら・・・なんでもします、死ねと言われれば死にます」
もう一度、あの場所に辿り着けるまで
これ以上
私自身を汚したくない
「・・・だから、それまでは・・・私に何もしないでくださいっ!」
少しでもあの時のままの私でいたいから