【3話】白◾️少しだけ見えた希望
・・
・・・
・・・・
・・・なんか痛い
目を開けると木々の隙間から月が見えた
・・・どうやら私は倒れているみたいだ
ゆっくり起き上がってみたが
・・・痛い
・・・なぜか全身が痛い
足には擦り剥けたような傷ができていて
そこからは真新しい血が流れている
薄いワンピースしか着てないからか肌寒く感じた
「・・・私なにしてたっけ?」
・・・なんだか頭がぼーっとする
「・・・ここどこだろ?」
ゆっくり見渡すように周囲を確認した
でも・・・どこを向いても真っ暗な森だった
「・・・あれ?・・・わ・・たしっ!!?」
背後で物音がし反射的に振り返った
そこには2人の男の人がにこやかにこっちに向かって歩いて来ていた
【男1】
「あれ~?こんな夜に何してるの~?」
・・・どうやら私に話しかけているようだ
・・・もしかしたら
・・・助けてくれるかも
「あっあのっ!」
思い切って男の人に向かって声を発してみた
【男1】
「あれ?怪我してるじゃん、大丈夫?」
私の言葉を無視するように近づいて来た男
その手がゆっくり私の足に触れる
「っ!」
思わず後ずさるように体を避けた
【男2】
「まあまぁ~!介抱してあげるから怖がらないで~!」
笑顔のその言葉に寒気がし
・・・なんだか嫌な予感がした
「あの~・・・大丈夫なので気にしないでください・・・」
多分引きつっていると思うけど笑顔で告げた
【男2】
「そうはいかないっしょ~?こんな時間にこんな場所で女の子がいたらさ~なにもしない方が失礼だよね?」
「っや!?」
いきなり後ろから羽交い絞めにされた
「なっなにするんですか!?離してっ!!」
その腕から逃れようと必死に体をよじるがびくともしない
【男1】
「分かるでしょ?ここまできたらさぁ~」
もう一人の男の手が胸へと伸びてくる
「やっやだーっ!!」
その手を弾くように足をばたつかせた
「ひャっ!?」
が、むしろ足を掴れ
男は私の膝の上にまたがってきた
【男1】
「あんまり騒がない方がいいよ~?」
ニヤニヤしながら再び手を私へと向ける
「ヤダ!ヤダ!ヤダーっ!!」
全身に力をこめてバタつかせて必死に暴れた
「っっつ!!??」
鈍い音と共に顔に激しい痛みが走る
【男2】
「あ~あ、グーパンチなんて酷いな~」
笑ったような声が背中越しに聞こえた
【男1】
「だって、こいつマジでうるさくね?」
見下すような笑顔で私の上に乗る男が
再び握った拳を上げた
「ぐっ!!!!!」
鈍い音と傷みが顔面に広がる
「っ!!」
続けざまに殴られ激しい痛みと共に地べたへと殴り飛ばされた
「っい・・・たぃ」
地べたに顔をうずめる様に痛む顔を両手で覆った
【男1】
「大人しくする気になった~?おんまり手間かけないでね~」
そんな私に男達は再び近づき
後ろから肩を掴み
ひっくり返すように私の背中を地べたに押し付けた
【男2】
「ありゃりゃ~泣いちゃったじゃん」
【男1】
「大丈夫!怖くないでしゅよ~」
気味の悪い笑い声が聞こえる
そんな男達の顔を見ないように
深く目をつぶり顔を背けた
横に向けた顔に自分の涙が流れる感触を感じ
虫唾の走る感触を体に感じた
・・・どうして
・・・こうなるのだろう?
・・・せっかく生きてたのに
・・・こんなの
・・・やだな
【男2】
「・・・あ~?なんだよお前?」
男が苛立った声を上げ虫唾に走る感触が止まった
怯えながらゆっくり目を開けると
少し離れた暗い森の中に人影が見えた
ゆっくりこちらに向かって歩いてくる
近づいてきてはじめて確認できたのは
月明かりに照らされる綺麗なオレンジに近い金髪
長身で綺麗な顔立ちの男の人だった
そして少し離れたところから
地べたに押し付けられる私を見下ろしている
【男1】
「なに~?お前もまざりたいの?俺たちが終わった後回してやるよ~?」
その男に向かって笑いながら男は言葉を向けている
・・・どういうことだろう?
・・・この人もこの男たちの仲間なのだろか?
【金髪の男】
「・・・これは一種のプレイか?」
近づいて来た男の人は私を見下ろしながらよく分からないことを言った
・・・なにか言いたいけど
・・・怖くて声がでない
【男1】
「まぁ~そんなとこ~!邪魔だから黙って見ててくれる?冷めるんだよね~」
【金髪の男】
「誰がお前に話しかけたんだ?俺はその女に聞いてるんだ」
ニタニタ笑う男を金髪の男の人は睨みつけるように言葉を返した
【男1】
「・・・・・・」
その言葉で私に馬乗りになっていた男から笑顔が消えた
そして、ゆっくり立ち上がって金髪の男に近づいていく
【男1】
「だからさ、邪魔すんなって言ってんじゃん」
苛立ちを隠せないように睨み付けているようだ
【金髪の男】
「・・俺はお前に聞いてない、勝手に喋るな、臭くて空気が汚れる」
不愉快そうにマユをひそめ不振な目線を送っている
【男1】
「っ!ってめっ」
【金髪の男】
「もう一度聞くぞ?これは趣味か?それとも助けてほしいのか?」
男の言葉を塞ぐように金髪の男の人は私に言葉を向けた
・・・今、助けてくれるって言った?
【金髪の男】
「どちらだ?」
言葉が出ない私に再び問いかけてくる
「っ!!たすけてっ!!!」
出せないと思っていた声が無意識出た
「たすけて!たすけて!たすけてっ!!」
一度出た感情を抑えられないように
すがり付くように必死に男の人に向けて声を上げた
【男2】「ちっ!うるせーんだよ!!」
「ぐっ!!」
私の近くに居た男に蹴飛ばされ苦しい傷みが胃をおおった
「っ!!??」
苦しみから目をつぶった時
全身を吹き抜けるような強い風が辺りをつつみ
目をつぶったままの私の頬になにかが落ちてきた
・・・なんだろう?
・・・なんか滴みたいな感じ
ゆっくりそれを指でなぞり
目を開けて確認する
が、暗くてよく見えない・・・
「・・・・・・・っっっ!!!???」
顔を上げた先の光景に驚きのあまり声を出せなかった
・・・さっきまでいきがっていた男達が倒れていたのだ
体中に見るからに深い切り傷ができ
その傷口から噴き出したであろう液体の中に横たわっていた
・・・何が起こったのか全然分からないけど
・・・でも、あの金髪の男の人がなにかしたというのは間違いないと思う
【金髪の男】
「・・・大丈夫か?」
声をかけられ見上げると金髪の男の人が目の前に立っていた
「っ!?だっだだだだいじょうぶデスゥ!!」
驚きのあまり上手くしゃべれず大きな声で返事をした
【金髪の男】
「・・・お前なんの力もないのか?」
そんな私を全く気にした様子もなく問いかけてくる
・・・なんの力もないとは魔力のことかな?
「えっと・・はい・・」
とりあえず頷いた
そんな私の前に男の人はしゃがみこみ
私の全身を見渡し
【金髪の男】
「・・・怪我はたいしたことはないな」
そう言いながら私の顔で目が留まった
・・・そういえば
・・・顔
・・・殴られたんだ
頬に触ると手から熱を感じた
「・・・腫れてますか?」
目線を男の人に向け尋ねた
【金髪の男】
「・・・少しな」
「・・・はぁ・・・最悪だ」
また涙が出てきた
・・・これは安心したからなのか
傷つけられた悔しさからなのか
・・・よく分からなかった
【金髪の男】
「・・・・仕方ない・・・腫れだけ取ってやる」
ため息混じりにそう言うと私の顔に手を近づけてきた
「ぅ!?」
突然の行動に思わず体が強張る
【金髪の男】
「じっとしてろ、すぐ終わる」
めんどくさそうな男の人の言葉と共に
顔を包み込むような暖かさが包んだ
そして、とても優しい光がほわっと一瞬見え
すぐに消えた
【金髪の男】
「・・・終わったぞ」
男の人の手が離れた顔は
さっきまで疼いていた痛みが嘘のように消えていた
「・・・回復魔法?・・すごい・・あっありがとうございます!」
地面につきそうなほど頭を下げてお礼を言った
・・・回復魔法を使ってもらったの久しぶりだ
【金髪の男】
「・・・近くの町まで送ってやる」
そう言うと男の人は立ち上がり早々に歩き始める
「あっ!まっ待ってください!この人達・・あの・・大丈夫なんでしょうか?」
少し周りに目を向け尋ねた
・・・倒れてる人はとても大丈夫に見えないが
さすがに私のせいで、この人が人殺しになるのは申し訳ない
【金髪の男】
「・・・そんなやつら死んだって関係ないだろ・・・まぁ、そいつらは微量だが魔力を持っている、それくらいで死なない、ショックで気絶してるだけだ」
足を止め少し振り向き面倒くさそうに答えてくれた
・・・って事は大丈夫ってことかな?
【金髪の男】
「さっさとついて来い、俺にも用があって忙しいんだ」
そう言うとスタスタと歩きだした
「あっ!まってっ!」
慌てて立ち上がり後を追うが
膝が痛くて上手く歩けなかった
【金髪の男】
「・・・それくらいの怪我で・・・魔力の無い人間は使えないな」
少し顔を後ろに向け私を見ながら呆れたように吐き捨てた
「・・・魔力で抵抗力がある人はこんな怪我、痛くないかもですけど・・・魔力のない人はすごく痛いんですよ?」
少し反抗しながら痛みをこらえ必死についていく
【金髪の男】
「・・・まぁどうでもいい、さっさと歩け俺は忙しいんだ」
・・・本当にどうでもよさそうだ
「・・・足も魔法で治してくれたら、歩くどころか走って行きますよ・・・?」
少し小声で聞いてみた
・・・自分でも図々しい言葉だと思う
でも・・・少し疑問だった
なぜこの人は回復魔法で頬は治してくれたのに
他の傷は治してくれないのだろう?
【金髪の男】
「・・・何か勘違いしてるようだから教えてやる、回復魔法は神様の力で傷を消してるわけじゃない、あくまでも人間が本来もっている自己再生機能、傷を治そうとする力を一時的に向上させているだけだ、その程度の怪我でいちいち魔法を使っていたら、自己再生機能が低下し魔法の効果が薄れる、それどころか魔法を使わないとすり傷一つ治せない体になるんだ」
少し苛立ったような早口で説明してくれた
「・・・・・・・・・・なるほど~」
実は全く意味が分からなかったけど
とりあえず相づちを入れた
・・・でも
いい人なんだと言うのは感じた
なんだかんだ私の歩く速度に合わせて歩いてくれているし
私のこれからを心配してくれて魔法を使わないってことだと思う
・・・たぶん
【金髪の男】
「・・・脳も無い奴でも解るように説明したつもりだったが・・・時間の無駄だったようだな」
見下したような言葉をため息混じりにつぶやいた
・・・人を馬鹿にした顔というのは
こういう顔をいうんだろうなぁ
「助けてくれてありがとうございました!今度ちゃんとお礼いします!」
そういえば助けてもらったお礼は言ってなかった事に気づき改めて頭を下げた
【金髪の男】
「・・・気にする必要はない、町についたら二度と会うことはないしな、だから今日のことは忘れろ、覚えている必要はない」
少し気まずそうに目線を私から反らした
・・・やっぱり、すごくいい人だと思った
・・・私はこれからどうしたらいいんだろ?
・・・とにかく町に行けばなんとかなるかもしれない
・・・ゆっくり考えないと
・・・少しだけ希望が見えたから