第1話
私、茶山桃花は中学2年生に進級した。
部活は軽音楽部で担当はベース。と言っても活気づくのは文化祭の前くらいで、あとはおしゃべりしてるほうがメインのような、そんな緩い部活である。
私は習い事で小学校1年生からバイオリンを習っている。
けれど、親から習わされているだけでやる気は正直あまりない。
でもそれなりに出来ることは多くなってきて、やめてしまうのももったいない。
だから、バイオリンは一応続けつつ、全然違うことをやりたいという理由で、軽音楽部でベースを始めた。
やっぱり、自分で始めたからか、出来ないことはまだ多いけれどバイオリンよりも楽しい!
中学生活は、ありがたいことに(私の知る限りでは)いじめも無く平和に過ごせている。
それだけで十分にありがたいこと、恵まれていることとは自覚している。
しかし、新しいクラスは落ち着きがなさすぎるようで、教科担任になった先生達から毎日1回は「うるさい」「ちょっとは静かにしないか」と言われる始末である。
「はい、席に着きなさい。あなた達は2年生なんだから、そろそろ落ち着いたらどうなの?」
今年、異動してきた新しい国語の先生。雨宮紗霧先生。
推定25~27歳(とされているが、誰も正解は知らない。でも雰囲気的に大体あってるとは思う。)
「今日はみんなの今の文章力を見たいから、自己紹介文を書いてもらうわ。テストじゃないし、私がみんなのことを知りたくて書いてもらうから、とりあえず好きなように書いてみて。一方通行じゃ不公平だし、お手本も兼ねて私の自己紹介の文章も後で配るわ。」
柔らかい表情と、優しく心地の良い話し方。
笛のような高く澄んだ声と、無駄がなくすらりとした身体。
艶やかな長い黒髪と、透き通るような白い肌。
一言でいえば、綺麗。そうとしか言いようのない自分の表現力が悲しい。
折れてしまいそうな花のようにか弱く見える彼女は、綺麗だけれど頼りない。
だが、しかし。私のこの印象はある日、とある出来事で覆されることとなる。