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【一場面小説】ジョスイ物語

【一場面小説】ジョスイ物語 〜官兵衛、禍根を残すノ段

作者: 行者BUSYOU

叛旗を翻した城井鎮房に逆襲され、命かながら退却した黒田長政とその部隊。大切な家臣を数多失い、一時は長政が腹を切ると呻く程の大敗だった。

 「又兵衛はそう申したか。」


 負け戦の度に頭を丸めていては切りがない。後藤又兵衛は啖呵を切ったらしい。新領主の黒田家に歯向かった豊前の国衆、城井鎮房。これを強襲した黒田長政は返り討ちに合い、その人損を悔恨して頭を丸めたが、又兵衛はこれに反発した。


 凡そ一年前、又兵衛は先主仙石秀久の愚昧頑迷さによって、戸次川で島津に敗れ遁走した。そして再び黒田に仕えたのだったが、主の不明で命を危険に晒す戦は、これで二度目だ。官兵衛は又兵衛の肚を思い、暴言を不問とした。


 官兵衛と又兵衛との縁は古い。息子長政を織田の人質に出した後、官兵衛は程無くして少年又兵衛を預かり、妻と共に撫育した。その後、又兵衛の叔父が官兵衛の幽閉中に叛き、又兵衛は叔父共々黒田家を追われる。荒木村重の有岡城が落ちて土牢から官兵衛が救われた時、長政は官兵衛のもとに戻ってきたが、又兵衛は姫路を去っていたのだった。



 織田に楯突く別所に与した後藤家は滅んだのだが、播州に争いの種を蒔いたのは官兵衛だとも言える。織田と毛利の対決は必定、播磨の国衆は確実に巻き込まれる。であれば、皆で勢強な織田に降り、親類縁者の殺し合いを避ける。この秘策こそが播磨を救うのだと。


 が、官兵衛にはこの大戦で己が才知を世に知らしめたいという密かな願いがあった。偽らざるところだ。官兵衛が率先して織田を導き入れた結果、むしろ播州は騒然となり、織田と本願寺の相克も重なって毛利に付いた国衆たちは破れ、家名を毀した。生き残ったのは黒田だけだったと言っていい。


 官兵衛のその疚しさ、引け目が国衆の遺児、又兵衛に対する甘さに化けてしまうのだが、又兵衛はそれを己への親愛と驕り、態度の端々に滲み出す。何処か兄貴風を吹かせる又兵衛が、長政には疎ましくなっていった。

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