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スケさんがそういうなら作戦を変えるしかないか

 こうして、俺達は客船制圧に動き出した。


 先ずはスケさんのゴーレムを船内の至る所に配置、俺が暴れ始めたら非戦闘員はゴーレム達に無力化してもらう。


 船を動かす人員や雑用係みたいな人達まで俺が直接手を出す必要はない。


 次にキッカとオウカを喚んで、船の情報網と駆動部を押さえてもらい、船外からの応援が出来ない様したり、制圧後に港まで操縦してもらう。


 召喚した兎達は自分達の役目を聞いて、鼻をスンスンとならして、船の中へ駆け出して行ってしまった。


 俺は最後にウサギの被り物を確認して、甲板を堂々と歩き出す。


 魔道具になったウサギの被り物は、フィット感が増して視界も違和感がない。


 取りあえずスケさんの誘導に従って客船の入り口に向かうと、同然の様に不審者にしか見えない俺を、十数人の警備員が前に立ち塞がる。


 「ウサギ男?本物か?どっちにしても、こんな所まで来たなら殺して構わん、撃て」


 警備のリーダーらしき男が、指示をすると一斉に手にした銃を撃って来た。


 「っうお、いきなり撃ってくるとか、やっぱり裏組織って危ないな」


 『陸地からかなり離れた海の上ですし、治外法権って感じじゃないですか?


 死体は海に捨てれば、ここから浜辺とか港に流れつく可能性は殆ど0ですから』


 「なるほど、そこまで考えて船の上に拠点を構えたのかな」


 飛んでくる弾をスケさんと会話をしながら避けてる間に、警備員達の制圧が完了。


 いつもながら、スケさんの手際の良さには感動を覚える。


 拘束されて身動きが取れなくなった警備のリーダーらしき男が、口を塞がれてフガフガ言ってるのを無視して船内に入る。


 通路をスケさんの案内で順調に制圧していく、通常なら鍵がかかっている扉も兎達が解除していくれて、何も問題なく船内にいたホスピタルの連中を捕縛した。


 「思った以上に簡単に捕縛出来たな」


 『キッカとオウカが、よく働いてくれたお陰ですね、船内の人の動きを扉や電灯を使って誘導していくれましたから』


 俺がスケさんと会話をしていると、捕縛した連中が身動きが取れない状態で、ギャンギャンと罵詈雑言を投げ掛けてくる。


 殆ど聞くに耐えない暴言の中で、なんとなく気になる言葉が聴こえた。


 言葉の意味は全く分からないけど、なんだか背中がゾクッとするような感覚がある。


 スケさんに確認するけど、スケさんには意味のない恨み言でしかないと返された。


 勘違いだったのだろうと意識を切り替えて、兎達に船を港に向けて移動を頼み、ゆっくりと船が動き出した瞬間、捕縛した1人から暗い影が広がり始めた。


 「やっぱり、何か変な呪文を唱えてたんじゃないのか」


 『そんなはずは・・、ワタシには意味のある言葉には聞こえませんでした』


 「じゃあ、この影はなんなんだ、こんな不自然に広がるなんて普通じゃないぞ」


 俺はスケさんに文句を言いながら、広がる影から跳んで距離を取った。


 捕縛した全員が、広がった影に沈むように呑み込まれて行く、1人を残して全員が影に沈むと、残った1人が手足を拘束されたまま、不思議な動きで立ち上がり、赤い光を灯した目で此方を見て嗤った。


 「くははは、運がいい、意識だけでさ迷っていたところに、怨念を抱いた生け贄のお掛けで現世に受肉出来るなんて」


 勝手に嗤いながら説明してくれてるけど、あれはなんなんだろか?


 「お前はなんだ?」


 「私か? 私はモロク、嘆きの王だ」


 「嘆きの王ってなんだよ、ホスピタルの親玉か?」


 『たぶん違います、モロク、モレクとも呼ばれる悪魔です』


 スケさんが俺の質問にモロクって奴の代わりに答えてくれる。


 「ホスピタル? 私の贄になった奴らの事か? 奴らにも感謝をしないとな。


 奴らがここで集めた、怒りや悲しみが私を誘ってくれたから、この幸運にありつけたのだからな」


 「受肉したってのは、身体を手に入れたって事だよな、それで悪魔のモロクさんはこれからどうするつもりなんだ?」


 「あぁ?」


 俺の質問に、モロクの雰囲気がガラッと変わる。

 

 「誰が悪魔だ? 私は嘆きの王、神だぞ、悪魔扱いをするとはなんと不敬な奴め」


 『スケさん、モロクって悪魔なんだよな?』


 『よくある宗教上の都合で、他教の神を悪魔扱いした感じでしょうね。


 神や悪魔の定義は信仰の多数決で決まるみたいですから、思想に引っ張られて存在が変化するなんて珍しくないですよ』


 『死んだのに気がついてない幽霊みたいに、自分が神から悪魔になったのに気がついてないって事か』


 『少しプライドも高そうですし、神から悪魔になったなんて認めたくないでしょうね』


 念話でスケさんと話していると、モロクの瞳が強い光を放つ、咄嗟に動いたけど右腕にものすごい熱を感じると一気に燃え上がった。


 「うぁっちぃ、なんだよ」


 黒い炎が点いた腕を熱さに耐えながらブンブンと振り回しても、炎は全然消えない。


 『マスター、少しだけ我慢して下さい』


 スケさんがそう言い終わると、同時に燃えた腕は肩から切り落とされて床に転がる。


 床の一部を焦がしながら、俺の右腕を燃やし尽くして黒い炎はやっと消えた。


 『マスター、大丈夫ですか?』


 「ありがとう、スケさんのお陰で助かったんだろうけど、すっげぇ痛い」


 俺は右肩を押さえて血を止めながら、スケさんに礼を言って、モロクを睨み付ける。


 「いきなり燃やそうとしてくるなんて、ちょっと酷すぎるんじゃないか」


 「無礼者のくせにいい動きをするじゃないか、私の炎の性質を見極めて、躊躇いもなく腕を切り落とす判断力もいいな。


 受肉したての私には配下がいない、先程の無礼は許してやるから私に従え」


 モロクが唇の端を上げて、目の笑っていない笑顔を向けて俺を勧誘してきた。


 「なんで腕を燃やされた俺が、許して貰わないといけないんだよ。


 それにコロコロと情緒不安定な上司とか、胃に穴が空きそうなんで遠慮します」


 『マスター、性格や頭は悪そうですが、悪魔は最低でもAランク以上です、元神として扱われていたくらいですから、決して油断はしないで下さい』


 俺はスケさんの注意を聞いて、真横に飛びながら右腕を治療して転がった。


 さっきまで俺がいた場所に、黒い炎が燃え上がったが、俺の腕を燃やした時とは違って、床を少し焦がしだけですぐに消えた。


 「見ただけで燃やすなんて、どっかの忍者みたいな技を使いやがって近づくのも一苦労だな」


 俺は文句を言って、モロクの周りを逃げ回る。


 「チョロチョロと上手く逃げ回るな、いつまで続くか楽しみだな」


 俺がいた場所がどんどん燃やされて、船の中が焦げ痕だらけになっていく。


 「お前の炎が使えなくなるまで逃げ回ってやる」


 俺がモロクにそう言うと、モロクは不適な笑みを浮かべて。


 「私が黒炎を使えなくなるまでか、面白い、そんな事が出来るか試してやろう」


 俺は宣言通りに動きを止めず、モロクの視界から逃げながら距離を詰める、スケさんも念動を使って魔剣で牽制するけど、モロクの黒炎は魔剣すら燃やしてしまう。


 視界から逃げ切れずに燃やされた時は、身体の一部ごと炎を切り落とす、躊躇をしていたら被害が広がるとはいえ、痛みを堪えて自分を切るのは精神的にしんどい。


 黒炎を乱発しているはずのモロクより、痛みに耐えて治癒をする俺の方が先に息が上がってきた。


 消えない炎を乱発してるのに、余裕な顔をしているモロク、俺が思ってる以上の魔力量があるのか、ハッタリなのかも分からない。


 『モロクの魔力切れを狙うのは、無理かもしれません、私の念動の手もマジックハンドも視界に入ったら剣と一緒に燃やされました。


 ワタシの考えが間違ってなければ、黒炎をいくら使わせても、マスターより先に魔力切れはしないと思います』


 モロクが黒炎がどんどん撒き散らす中、スケさんがそういうなら作戦を変えるしかないか。

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