探し出してやらないと
どうやら、この男は俺がウサギ男とは思ってないようだ、教えるつもりはないけど。
「その犯人だって、お前らが恨みを買ったんじゃないのか?
自業自得って奴だろ、野々原の事以外でも色々とやっていたんだろ」
身動きの取れない男は、俺が話易い様に屈んで視線の高さを合わせると、唾を吐きかけて来た。
「俺達は世界の為の活動をしているんだ、恨みを持つ奴の方が間違ってる。
お前も、オオカミ男も、俺達の為に働ける事を感謝するべきなのに‥‥。
ジャマしやがっで、ホズビダルは‥ゼかいの為にぃホズビダルゴゾガゼ‥ガイを‥‥」
吐きかけられた唾を避けた後、男の様子がおかしくなっていく。
「スケさん、どうなってる?」
『これは権田が使った薬と症状が似ていますね、他の場所でも眠らせたはずの人達が、起き出したようです。
薬のせいで魔力抵抗が高くなって眠らせる事も、念動の範囲外なので拘束も出来ません』
「仕方ない、兎達を召喚して応援してもらうから場所の案内だけ頼む」
『了解しました、ワタシがちゃんと鑑定視を使っていれば、薬の存在に気がついたかもしれません、すみませんでした』
「スケさんでもミスする事はあるって安心したよ、急いで捕まえて八谷君に引き渡そう」
スケさんの案内で一番近かった人から順に対処をして、兎達には2羽で協力して俺から遠い所から順に対処をしていってもらう。
俺と兎達が合流して、暴れ出そうとしていた人達のを大した被害を出さずに、捕獲し直す事が出来た。
「何で急にこんな事に?薬を使う暇なんてなかったし、予め使っていたとしても、こんなタイミングで発症するなんて使い捨てとしか思えないんだけど」
『野々原を捕まえて利用しようとしていたのに、下っ端は使い捨てにするって事ですか、なんだか矛盾してるように感じますね』
「そうだよな、一応、八谷君に引き渡す前に変な所がないか鑑定視で確認してくれ」
『はい、まだリッチの薬が残っていたら中和しましょう』
拘束した人達を1人1人調べたスケさんが、納得をしたように拘束した人達の頭を潰した。
「ちょっと、スケさん何をしてるんだよ」
『大丈夫ですよ、マスター、これはホムンクルスです、野々原と初めて会った時のマスク達と同じ方法ですよ。
あの時使っていたのは死体でしたけど、あえて魂の宿らないホムンクルスを作ったのか、ただ失敗したのか分かりませんけど。
限りなく人間に近い人形です、その証拠に』
スケさんが頭を潰した人達が、ただの血肉の塊になって崩れ、何日も放置した魚の様な悪臭を放つ。
思わず鼻を押さえて少し離れる。
「何だコレ、いきなり腐った?」
『出来損ないのホムンクルスだから、魂の代わりをする力が無くなって崩壊したんでしょう。
憑依に近い能力だと思います、本体が別にいるから使い捨てが出来るし、遠隔で暴走もさせられる。
ただ、暴走をさせると憑依させてる精神も影響を受けるから最後の手段といった所だと思います』
「精神が影響を受けても、本当に死んだりする事を考えればリスクは少ないって事か」
溶けた血肉のような物を、前に考えていると八谷君が引き取りに来て、俺を見て顔をしかめる。
「なんですかコレ?」
俺はスケさんにしてもらった説明を伝えると、八谷君は血肉の塊を見て納得してくれた。
「わざわざ、八谷君本人が来てくれたのにごめん、コレを引き渡してもいいのかな?」
「いえ、それも約束の内ですから、コレはちゃんと回収します。
全部じゃなくて、一部分だけで十分なので、残りは焼き払っておきましょう」
そういった八谷君が上着から呪符を取り出すと、ブツブツと何かを唱えて、呪符を血肉の塊に投げると青い炎が血肉を焼き尽くした。
近くにいたのに全く熱を感じなかった、それなのに血肉の塊は一瞬で灰に変わった事に驚いた。
「熱くなかったのに、凄い炎だったね」
「ははは、陰陽術の1つです、霊的な炎で燃えるって現象を起こしてるので温度はないんですよ」
「良く分からないけど、不思議な炎って事だな」
『現象と結果だけを起こす術なんて恐ろしい話なのに、幸せな頭ですね、マスター』
頭の中でスケさんに、バカにされたけど分からないものは分からないので無視だ。
「それじゃ、僕はこれで失礼します、ホムンクルスに憑依していたのが馬鹿だったお陰で、ホスピタルが絡んでるのが分かって良かったです。
ちょっと面倒な相手なので、僕も上と相談して動かないといけません」
「そんなに有名なんだ、ホスピタル」
「はい、全世界に拠点があって裏で暗躍してる世界最大の裏組織ですね。
傘下の組織もあるので、正確な規模が分からないのも厄介なんです。
日本でも、好き勝手に動いてるのは分かっているんですけど、下手に手を出すと逆に日本が裏から侵略されてしまうので」
「でも、グランって偉い奴が日本で殺されたらしいんだろ?」
「そうなんですよ、本当にアイツは‥‥」
「まさか、犯人を知ってるの?」
「あ、いえ、その、たぶんですけど、瓊の仕業だと思います」
「庭番の頭の?」
「はい、日本の裏の問題は陰陽庁の管轄なので、ホスピタルのグランの死体処理も立ち会いましたから、殺し方でなんとなく分かるんですよ。
もちろん、その事はホスピタル側には話してません、別に証拠がある訳じゃなくて、僕がなんとなく分かっただけなので」
「でも、確信してるって感じだね」
「幼馴染みなんで、なんとなく分かるんですよ。
国として陰陽庁は、ホスピタルと対立出来ないんですけど、庭番は自由ですから。
僕もホスピタルは嫌いなので、瓊みたいに自由動けるのは羨ましいですよ」
「八谷君は、陰陽庁にいる事を後悔してる?」
「いえ、僕は代々陰陽庁に仕えてる家系なので、陰陽庁に入った事はなんの不満もないんです。
陰国に属してるそれなりに大きな組織ですから、国の方針や、しがらみがあるのは分かってるんですけど、陰陽庁のやり方に納得出来ない所があるだけで」
「なるほど、大きな組織も大変だね」
「佐藤さんも、特殊な雇用形態ですけど所属してるんですけどね」
「我が儘いってごめん、本来の俺は図書館の司書が関の山の人間だから。
その場所を蔑ろにしたら、俺は今以上にダメな奴になっちゃうから」
「佐藤さんが、ダメな奴かどうかは分かりませんけど、佐藤さんは陰陽庁で一番自由に動ける人なんです、頼りにしてますよ」
「こっちも陰陽庁に色々と助けて貰ってるから、お互い様って事で」
「陰陽庁の所属ですけど、実質は僕の専属みたいになってますからね。
僕は自由に動かせる駒があって、本当に助かってるんですけど」
「駒って言うなよ、その通りなんだけどさ」
「ははは、すみません、ホスピタルの事は佐藤さんの好きに動いて下さい、出来る限りのサポートはしますから」
そういって八谷君は、ホムンクルスの一部を持って帰って行った。
俺は少しダンジョンに入った後に、ホムンクルスに憑依してた奴らを探し出してやらないと




