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好きなヤツで試して貰おう

 ホテルの1室、倒れたサキュバスをスケさんが念動で動きを封じ込めながら話を進めた。


 「くっ、貴方は何者?私に何の用なのよ」


 動けないサキュバスが、俺を睨み付けながら敵意剥き出しで質問してくる。


 「俺は何者なんだろ?陰陽庁とか言っても分からないかもしれないけど、そういう普通じゃない事に対応する機関があって、そこに所属してるんだ」


 聞かれた質問に、どう答えていいのか悩んで、なんだか中途半端で長い返しになってしまう。


 「なにそれ、よく分かんないけど、私達みたいなのを取り締まる人達って事かしら?


 どこの国でもそういう組織がやっぱりいるのね、簡単に入国出来たから日本はチョロいと思ったのに」


 「人手不足だから、入国まで手が回ってないんだろうな。


 それでも、一般人には存在がバレない様に出来てるんだから大したもんだけど」


 俺はサキュバスの悪態に少し同調しながら、話を進めた。


 「それで私はこれからどうなるの?首輪でも付けて何処かの偉い人の慰め者?」


 「なんだそれ?別に人を殺したりしてなきゃ、厳重注意と監視対象になってもらうだけだぞ。


 精気を抜かれて死んだ人の情報は入ってないし、人は殺してないんだよな?」


 「あら、やっぱり日本人は甘‥優しいのね、確かに私は誰も殺してないわ。


 流石に死体の始末は大変だし、死体が出ると警察が動くもの。


 私の直接の戦闘能力は普通の人より少し上程度だから、訓練した警察に囲まれたら逃げ切れないわ」


 サキュバスは、自分がそんなに強くない事を説明して、自分は危険じゃない事をアピールしてくる。


 「俺にアピールしても、後の対応は変わらないぞ」


 サキュバスは俺の言葉に舌打ちをして、露骨に態度が悪くなった。


 「陰陽庁に引き渡す前に、お前に聞きたい事があるんだけど」


 「聞きたい事?」


 「簡単に入国出来たって言ってたけど、それって普通の人と見分けがつかない様に変身出来るって事だよな?」


 「そうよ、そんな事が聞きたかったの?」


 「確認だよ、本題はここからだ、人に化ける方法ってどうやるんだ?」


 俺はサキュバスが人の姿に成れる事を確認して、どうやったら人に化けられる様になるのか聞いた。


 「なんでそんな事を聞くの?貴方は人間なんだし必要ないでしょ」


 サキュバスは俺に不信感を抱いて、質問の真意を探ろうとしてくる。


 「必要なのは俺じゃない、俺の知ってる奴に教えてやりたいと思って」


 「知り合いって人じゃないのね、私のお願いを聞いてくれるなら教えてあげてもいいけど?」


 サキュバスの目が妖しく光ったような気がして、どんなお願いを言ってくるのか身構える。


 「お願いって?」


 「簡単な話よ、私を見逃して欲しいのよ、別に誰も殺してないし、ナンパしてきた男達から少しずつ精気をもらってるだけ。


 相手も気持ちよくしてあげてるし、私もお腹が満たされる、誰も損をしてないわ」


 「損得の問題じゃなくて、見逃すとか俺の一存で決める事なんて出来きないから‥‥」


 「?」


 「分かった、ちゃんと人に化ける方法を教えてくれるなら、逃がしてやってもいいぞ」


 「なに?急に意見を変えるなんて、どういうつもりよ?」


 「あ~、気にしないでいいから」


 「気にするわよ」


 「なんだよ、見逃してやるって言ってるのに、何が不満なんだ」


 「不満とかじゃなくて、簡単に意見を変える人が信用が出来ないって言ってるのよ」


 「面倒くさい、せっかく見逃してやるって言ってるんだから、それでいいじゃないか」


 「いやよ!教えた後に気が、変わったとか言って裏切られても嫌だもの」


 サキュバスの言いたい事もわかる、俺は話している途中でスケさんから、新しいガラスゴーレムを付けて監視出来るから、サキュバスの願いを聞いてもいいと言われたけど。


 確かに騙す事になるし、俺の演技力がないのも重なって、サキュバスからの不信感を買ってしまった。


 「結局はどうする?俺は引き渡した後で同じ質問をしてもいいんだけど」


 今さら信用を取り戻すなんて出来ないから、立場を利用して脅しに変える。


 サキュバスは少し考えた後で。


 「本当に見逃してくれるのよね?」


 「ちゃんと人に化ける方法を教えてくれるなら、今日は見逃すって約束する」


 「分かったわ、私の知ってる方法で良かったら教えるわ。


 ただ私の方法だから、その知り合いが人に成れなくても責任は取れないわよ」


 「それでいい、お前が使ってる人に化ける方法を教えてくれたら、俺は見逃す」


 俺はサキュバスから人に化ける方法を聞いて、サキュバスを見逃した。


 サキュバスは倒れた男達には目もくれず、ホテルから姿を消す、俺もこの場所に居る理由はないので男達を置いてさっさと退散させてもらった。


 「準備が出来たら、野々原に一度試してもらおう」


 『しかし、本当にあんな方法で人化の能力が手に入るのでしょうか?』


 「そこは種族とかによっても、色々違いがあるだろうし、試してみるしかないって」


 『確かに種族の違いはあるでしょうけど、明らかにそんな問題じゃない気がするんですけど』


 スケさんは全く信用してないみたいだけど、少しでも可能性があるなら、試せばいいと思う。


 ダメだったら、また次の方法を探せばいいんだ、ハロウィンで賑わうマチにを歩いている野々原は、本当に楽しそうだった。


 普段は人前に出られなくて、権田達だけとしか接点がない野々原だって、もっと色んな人と会ったり、好きな所に出掛けたいはずだ。


 俺や権田には、生きてるだけで運が良かったんですと、今の境遇に何の不満もないみたいな事を言っているけど、あの嬉しそうな態度は、本当にの事を言ってないのか、本人も気がつかない内に無理をしているからだと思う。


 だから、出来るなら普段はちゃんと人として、堂々と外を歩けると良いと思う。


 俺は野々原を拾って来て権田に預けただけで、何の責任も取っていなかった。


 それも、ハロウィンで野々原を見かけていなければ、今も気がつかずに自分の事で精一杯の日々を過ごしていたと思う。


 今日の見回りは終わって、夜中のダンジョンの為に急いで部屋に帰る。


 玄関のドアを開けて、部屋に入って鍵を閉めた瞬間に、俺はダンジョンに転移させられていた。


 30階層の階層ボスは倒したけど、時間が経てばまた戦う事が出来る、俺は今日は兎達を召喚しないで3体の魔物と戦ってドロップ品を手に入れた。


 そのままの足で31階層に進む、31階層は鏡の迷路だった、目的のモノが見つからないだろう事を悟って本命の階層に向かう。


 進行速度をあげたいので、ここで兎達を召喚してダンジョンの中を移動する。


 兎達は俺が兎達を呼ばずに、階層ボスと戦ったのが気にいらなかったみたいで、素直に謝って次はちゃんと召喚する事を約束した。


 29階層に戻って、島全体に覆い繁る森で目的のモノを手に入れて、戦い足りなかった兎達が満足するまで戦いを見守って俺は部屋に戻った。


 何種類かあるから、好きなヤツで試して貰おう。

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