無駄なスキルじゃなかったろ
「わかった、でも、無理はしないからな」
暫くして、3階層に行く出入口が見つかり、スケさんと3階層に行くか、2階層に残るか言い争い。
安全第一を主張して2階層に残って戦うことになった、スケさんに軽く舌打ちされた事は忘れない。
『明日は必ず3階層に行って貰いますからね』
そう言ったスケさんは、俺のスキルのはずなんだけど、俺が死んだらスケさんだって消滅するんじゃないのか?
ウサギの動きにと慣れて、スケさんの助けがなくても倒せる様になった。
他にもヘビが岩影から出て来たけど、影に潜んでいてもスケさんの知覚範囲内じゃバレバレなので、サッと避けてバットを振り下ろす。
ヘビの魔石も4ポイント、俺が助けなしで魔物が倒せると、スケさんはGの退治に力を回せる。
朝までダンジョンに潜って、1042ポイントを稼ぐ事が出来た。
ステータスは体力+8(80%)、魔力+4、筋力+8(61%)、知力+4になって予定通り全項目+4以上になった。
これだけ上がれば違いもはっきりと分かる、今ならフルマラソンで2時間切れるし、100m9秒台も出せそう。
これでやっと赤ん坊を卒業らしいので、異世界の人は皆化け物だと思う。
ダンジョンから出て汗を流したら、直ぐに出掛ける時間になってしまった。
コーヒーを飲む時間もなく睡眠不足なのに、ステータスのお陰で全然平気なのが助かった。
ただ、気を抜くとバスに揺られて眠りそうになってしまう。
図書館に着いて、誰もいない事務所で作業をしていても欠伸が出てくる。
睡眠不足は体力とは関係ないのを実感する、知力が上がったお陰で作業が効率よく進む。
開館前の仕事が予定していたよりも進んでるしまった、他の人が来るまでゆっくりした方がいいかな。
入口に誰かが近づいて来る足音が聴こえる、知力を上げると五感の向上、記憶力、脳の処理速度が上がるみたいだ。
「おはようございます」
事務所のドアが開くのと同時に挨拶をする、相手も笑顔で挨拶を返してくれた。
「おはようございます、佐藤さんはいつも早いですよね」
「鍵を持ってますし、朝早いバスなら苦手な混んでる時間帯を避けられるので」
「混んでるバスだと来るだけで疲れますからね」
「渡辺さんもいつも早いですよね」
「私は家が近いですから、この図書館に小学生の頃から通ってるんですよ」
「渡辺さんの家って、この近くだったんですね」
「実家暮らしは気楽ですよ、母に起こして貰えるので遅刻もしませんし」
「それは、自慢出来ないんじゃない?」
「ですよね」
そう言って2人で笑い合う、最近は他の人が来るまで渡辺さんと話す事が増えた。
皆が出勤して来て、また佐々木さんが最後に事務所に入って来た、開始1分前のギリギリの時間に来れるのも凄いと思う。
何事もなく時間は進み、図書館の新聞で吸血鬼事件に進展がないか確認する。
新聞には新しい情報はない、ネットは逆に情報が多過ぎて本当か分からない。
スケさんは、誰も使ってないパソコンでそんな情報過多なネットニュースを精査すると言っていた。
平日は利用者が少ないからバレない思うけど、後でちゃんと履歴を消しておくように頼んでおいた。
俺は事件とは別に吸血鬼について調べてみる、そもそも吸血鬼の事を詳しく知らない。
何冊か吸血鬼に関係する本を物色して、帰りに借りて帰る事にした。
帰りのバスで吸血鬼について書かれた本を流し読みして、スケさんと対策を練る。
本物の吸血鬼を想定して対策しておけば、犯人が普通の人でも遅れを取る事はない。
今日は能力値を全項目+32が目標だとスケさんは言っていた、それでやっとプラス成人の最低数値。
でも、これ以上能力値を上げても力に振り回されるだけ、新月までに向上した身体能力に慣れないといけない。
それから、吸血鬼に有効だと思うスキルを使えるようになって、犯人も探さないといけない。
俺は管理機構のミスでポイントで、ステータスも上げれるし、スキルも取れるけど、それを使いこなすのは俺の努力がいる。
犯人を探しに使えそうなスキルを見つけてある、俺では使いこなせる気がしないので、そのスキルはスケさんに取得して貰う。
ユニークだし、有能なスキルだからスケさんも納得してくれた。
それだけのポイントを稼ぐので、今日からは約束通り3階層から始める。
家に帰って寝たと思ったら、もうダンジョンの中にいる、なんで俺がとか考えてはいけない。
『能力値は余裕があるので、もっと階層を進んでいいんですけどね』
「スケさんは俺をどうしたいの、今でも普通の人じゃなくなってるんだよ?」
『マスター、大は小を兼ねるんですよ』
「俺は自分のペースでダンジョンを進んでる行きたいんだけど‥‥」
『ワタシはマスターの気持ちを尊重してもいいんですけど、犯人は待ってくれませんから。
能力値が目標に達したら、マスターにはレアの回復魔法、と聖魔法を覚えて貰います。
でも、吸血鬼に対抗するなら、回復魔法はレベル7、聖魔法はレベル5は必要なんですよね。
じゃないと、娘様の安全を守れませんね』
「回復魔法はレアスキルで取得に1000ポイント、レベル7までに63000。
聖魔法も取得に10000、レベル5まで15000、全部で98000必要だから、今の階層じゃ間に合わないって言いたいんだろ。
わかったよ、身体能力に慣れたらどんどん先に進みますよ」
『流石マスターです、この調子でダンジョンを制覇しましょう』
「それは無理だから」
やっぱり、スケさんの手のひらの上で上手く転がされてるな。
3階層にはGとネズミがいなくなって、代わりにハチとゴブリンが出るようになった。
ハチもゴブリンも魔石は5ポイントだけど、とにかく数が多かった。
お陰でポイントは貯まるし、身体を慣らすのに苦労しなかった。
4階層はウサギとヘビがいなくなって、ゴブリンを上位種のホブゴブリンが率いて襲って来るようになった。
ハチはほとんど姿を見る前に、スケさんが処理してくれて大丈夫だったけど、ホブゴブリンが指揮するゴブリンが面倒くさかった。
とにかく、俺の死角を突くように攻めて来る、スケさんが教えてくれる時はいいけど、スケさんがハチの処理に回るとバタバタしてしまう。
取りあえずバットを振り回しておけば、身体能力とリーチの差で何とかなる。
俺の戦い方はスケさんに頼り過ぎていると実感させられるけど、、戦いなんて素人なんだから仕方ないと開き直る。
そして、予定になかったコモンスキルの投擲を取得した。
一気にレベル5まで上げる、スケさんには無駄なスキルだと言われたけど、俺の中では投擲はかなり有能だと思っている。
遠距離攻撃は魔法があるから、きっと投擲の価値が低いんだと思う。
適当に小石を拾ってポケットに入れて準備した、ゴブリンの集団をスケさんが先に見つけて、俺はホブゴブリンの頭に小石をぶつける。
一撃で脳震盪を起こしたホブゴブリンは倒れて、ゴブリンが慌て出す。
そこにバット振り回して奇襲をかけて、倒れたホブゴブリンにトドメを刺して、逃げるゴブリンを小石で撃ち抜いた。
俺の身体能力なら、投げた小石が拳銃並みの威力になる、それが頭に当たって即死しないホブゴブリンは凄いと思う。
ホブゴブリンの魔石10ポイントを獲得して、投擲の有用性をアピールする。
『確かに、コモンスキルにしては優秀ですね』
「無駄なスキルじゃなかったろ」