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本当に去っていった

 今は得体のしれない相手に警戒をして、デバフをかけていなかったのに簡単に中に入る動きは早い訳じゃないのに、追いつけなかった。


 「庭番の頭が俺の何の用だ?」


 「さっきちゃんと自己紹介したじゃないか、勾田 瓊って名乗ったんだから、名前で呼んでくれてもいいんじゃない?


 庭番に入ってくれるなら、頭って呼んでくれてもいいんだけど、兎さんは陰陽庁に入ったっていうし。


 先に目をつけたのは俺なのに、鏡也の奴に横取りされてちょっと気分が悪いんだよね」


 「それで、仲間にならなかった俺を殺しにでも来たのか?」


 「ぶっ!ぶぁっあはははははは、なんでそんな物騒な話になるのさ。」


 思いっきり盛大に笑われて、俺は少し緊張が緩んだけど、慌てて勾田に注意をする。


 「おい、アパートは壁が薄いんだから、こんな時間に大きな声で笑うなよ、隣から苦情がくるだろ」


 そんな俺の態度に、一瞬キョトンとした後に勾田はまた笑う。


 「あはははは、ごめん、あはは、壁が薄いから怒られるとか、ははは、面白いね、兎さん。


 兎さん程の力があれば、こんなアパートじゃなくてもっといい所に住めるのに」


 この時点で、勾田に対して裏組織のボスとしての扱いをするつもりはなくなった。


 「本来の俺にはここがちょうどいいアパートなんだよ、もっといい所とか、厚待遇とか分不相応だ。


 追い出されたら困るから、話があるなら静かにしるなら、お茶くらい出してやる」


 俺の態度の変化に、勾田はやっと笑い終り笑顔のまま、椅子に座った。


 台所のテーブルを挟んで座り、俺の代わりにスケさんがコーヒーを入れてくれた。、


 「へぇ、器用にコーヒーを入れるんだね、俺に能力とか隠さなくていいの?」


 「どうせ、ある程度の能力は把握してるんだろう、それにしても八谷君には、俺の事は内緒にする約束してたのに、幼馴染みとはいえ誰かに話すなんて、信用が出来ないな」


 「あ~、鏡也の事は信用してもいいよ、あいつは真面目な奴だから」


 「さっそく約束破ってるのに、信用は無理だろ、真面目な性格だって何に対して真面目かって話だし」


 「それはそうだね、鏡也は愛国者だから国の為ってなったら、兎さんは二の次だろうね。


 でも、それはあいつの育って来た環境のせいだし、鏡也自身は嘘とかつけない奴だから。


 俺が兎さんの事を知ってるのは、鏡也に聞いたんじゃなくて、剣聖の妹のお陰だよ。


 俺の魔道具も、聖女でも無理だったのに、いきなり回復したら調べるのは当然でしょ」


 「あの病室にはカメラの類いはなかったはずだけど?」


 スケさんの知覚範囲で病院全体のカメラの位置は全部確認した、どこにも俺の映像は残ってないはずだ。


 「うん、あの病室にカメラなんてないよ、でも俺達には能力があるんだから、調べる方法はいくらでもあるんだよ」


 「『過去を知る事が出来る能力か』」


 「お、なんか今の答えはさっきまでの兎さんと感じが違うね。


 剣聖や賢者が言っていたのは、この感じか、もしかして二重人格か何か?」


 「『似たようなものとだけ、それと過去を知る能力があるのは、あんたなんだな』」


 「あはは、此方の兎さんは油断が出来ないタイプなんだ。


 そうそう、俺の能力だよ、だから兎さんの事を知ってるのは俺だけ。


 剣聖には兎さんの事を内緒にされてたけど、結果を見ればそれも仕方ない、剣聖は妹の為にうちにいたんだから。


 兎さんが、剣聖の望みを叶えたなら剣聖が兎さんに義理を立てるのはどうしようもない。


 それと、蘭ちゃんを助けてくれてありがとう、俺が剣聖と約束してたのに助けられなかったから、兎さんには感謝してる」


 ニコニコしてた勾田が、ほんの一瞬だけ真剣な顔をして頭を下げた。


 「なんでお前が、俺に感謝なんかするんだよ」


 「いやいや、6年も関わっていれば剣聖にだって、その妹の蘭ちゃんにだって感情移入するさ。


 俺は仲間には優しいって有名なんだよ、他の人には甘いとも言われるけど」


 なんとも調子の狂う男だけど、剣聖がいう頭のイメージと一致する。


 「理由はわかった、感謝はありがたく受け取っておくよ、もしかして今日来たのはその為に?」


 「いつの間にか、最初の兎さんに戻ってるね、興味深いけど聞いても答えてくれないよね。


 そう、剣聖の事を感謝したかったのと、一応、指名手配するように細工したのはうちだから、謝罪をしようと思って」


 「指名手配は今となってはどっちでもいいよ、被害者もいるし、怒りのぶつけ先が必要なんだろ」


 「わかってくれてるなら良かった、陰陽庁に入ったなら、もうちょっかいはかけないから安心して。


 それじゃまた、どこかで会ったら仲良くしてね、剣聖の事も宜しく」


 そう言って、コーヒーを飲み干した勾田は一瞬で姿を消した。


 『瞬間移動か何かでしょう、本当に多能なようですね』


 「裏組織のボスって感じじゃなかったな」


 『そうですか?ワタシには危険な人物に見えましたよ、ずっと自然体で息を吸うように能力を使ってましたから』


 「どういう事?」


 『気がついてなかったんですか、色々と能力を使ってましたよ。


 本当に幾つ能力を持っているんですかね、さっきの間だけでも7つは使ってました』


 「そんなに使ってたのか、全然気がつかなかった」


 『それだけ自然体で能力を使っている証拠です、しかも複数の能力のどれも同じくらい上手く使えるなんて凄いですね」


 そんな風にスケさんに警戒をされながら、能力の使い方は褒められた勾田が座っていた椅子をしまい。


 今日のダンジョン探索は、階層ボスに挑戦するつもりだったけど、疲れたので今日も、30階層で少し身体を動かしたら帰ろう。


 スケさんがポイントを荒稼ぎしている間に、俺は巨大な虫型魔物を相手にスキルの使い方を練習して、階層ボスに向けての準備は出来てたから、部屋に戻って眠りについた。


 陰陽庁には所属したけど、毎日仕事がある訳じゃないので、メインは司書として昼間にしっかりと働いた。


 数日後、剣聖に呼び出されたので会いにいくと、剣聖が車椅子に乗った妹を連れて来ていた。


 「兎、この前はありがとう、妹がどうして直接会って御礼が言いたいっていうから、お前は嫌かもしれないけど連れて来た」


 「いや、嫌かもとか分かってるなら、ちゃんと話せよ」


 「嫌だったら会ってくれないかもしれないからな、サプライズってヤツだ」


 「サプライズの使い方が間違ってないか?」


 「間違ってない、蘭は喜んでるからな。


 やっと起きたんだ、色々とやりたい事をやらせてあげたいんだよ」


 そんなやり取りを剣聖としていると、車椅子から笑い声が聞こえる。


 「ふふふ、お兄ちゃん!あまり無理いったらだめだよ、えーっと、兎さんも本当にありがとうございました。


 なんだかよく分からないけど、いつの間にか20歳になっちゃったみたいで、もう少し落ち着いたら、これからどうするか考えないと。


 その前に、兎さんにちゃんと挨拶をしとかないいけないと思ったんですけど、無理を言ってすみませんでした」


 車椅子のまま剣聖の妹は頭を下げた、俺は手を振って気にしていない事を伝えて、用の済んだ剣聖と妹は去っていった。


 去り際に、剣聖が俺に近づいて来て。


 「今回の借りはちゃんと返すから、何か困った事があったら言えよ」


 妹には聞こえないように、そう言って今度こそ本当に去っていった。

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