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揺らいでしまった

 俺と八谷君の身体も淡い光に包まれて空に向けて飛んでいき、その途中で意識を失った。


 『マスター、マスター、良かった、目を覚ましたんですね』


 頭の中に響くスケさんの声で、俺の意識がハッキリとする。


 「ここは?」


 『マスターの部屋です、ダンジョンから帰って臨死スキルを使った途端に意識を失ったんです。


 まさか本当に心臓まで止まってしまうとは思いませんでしたよ。


 ワタシが念動で、心臓を動かし続けてなかったら死んでいたかもしれません、スキルはちゃんと考えて使って下さい』


 場所を聞いただけなのに、スケさんの説教が始まってしまった、スキルを不用意に使った事からスタートして、普段の生活やその他色々とダメ出しが続く。


 俺が死にかけていたのはダンジョンを出てから約3時間、丁度真っ白な空間に監禁されていた時間と一緒だ。


 記憶が曖昧でよく覚えていない所もあるし、覚えている八谷君の顔と名前も、夢じゃなかった証拠にはならないので、夢オチかもと不安になる。


 だけど、蘇生魔法が取得可能になっているので、ステータスとスキルを使う為に、魂への認識が深まった経験が現実だったと思いたい。


 スケさんの説教が一段落した頃に、俺は蘇生魔法が取得出来る様になった事を伝える。


 スケさんもスキル一覧を確認して、俺の言った事が本当な事に驚いていた。


 『死にかけたお陰で取得可能になったんですかね』


 そんな事を言うスケさんに、俺は死にかけていた3時間の間に何があったのかをスケさんに話した。


 話を聞き終わって。


 『なるほど、そんな事があったんですか、ステータスやスキルの在るのが魂ですか‥‥。


 ワタシは初めから身体がないので、深く考えた事がなかったですが、魂ですかワタシにも在るのですかね』


 スケさんは俺の話を疑わずに信じてくれたようだ、俺ですら夢だと不安になってしまうのに。


 「信じてくれるんだな」


 『別に不思議な事はありませんから、前にも話しましたが管理機構は全ての人間を見守っていません。


 死ぬ運命になかった人の命を奪っても、管理機構が気がつく事はまずないでしょう。


 人の魂を喰らう魔物や化け物が、隠れて魂を集めていてもおかしくないです』


 「そんな化け物がいるんだな」


 『自分の空間というか結界を張って、人や人の魂を閉じ込めるような化け物の伝記や文献もあるくらいですよ。


 ただ、管理機構の存在を知っているほどなので、それなりに強力な個体だったと思います。


 ステータスとスキルがなかったら、間違いなく餌になってなっていたでしょうね』


 「半分以上の人が助けられなかった、最初から俺が戦えていたらもっと助けられたのに」


 『気にする事はないですよ、マスターがいなければ全員喰われていたでしょうし。


 それよりも、そこで会った八谷という人間の方が気になりますね、符術を使ったのなら陰陽道に関係があるのかもしれません』


 「凄かったよ、陰陽道って安倍晴明で有名なやつだよな、符術で作る結界とか格好良かった」


 「陰陽道に関わる人間が一般人なわけないと思いますよ。


 そんな人間に本名を名乗ってしまって、どうなってもしりませんよ』


 スケさんに言われてハッとなる、顔も見られてるし、名前も教えてしまった。


 「どうしよう、スケさん、そういえば最後にウサギ男だってバレてたし、俺、捕まっちゃう」


 『落ち着いて下さい、過ぎてしまった事は仕方ないので、今は接触してきたらどう対応するかを考えた方が大事です』


 「そ、それもそうか、でも接触前に指名手配とかかけられないかな?」


 『それは、兎達に頼んで、マスターの事を国が調べられないようにしましょう』


 「そんな事が出来るのか?」


 『戸籍などから、マスターの事を調べられない様にブロックするくらい、兎達には簡単ですから』


 「頼もしい」


 さっそく兎達にメッセージを送って、すぐにスマホに返事が返って来て、俺の名前を検索出来ない様になっていた。


 「仕事が早いな、もう検索が出来なくなってるし、ネットで晒される心配はなくなった」


 それでもなかなか落ち着かなくて、寝つく事が出来なくて朝起きてから少し寝不足だった。


 周りの反応がこわくて、図書館についてのからも疑心暗鬼で過ごしてきたけど、何事もなくて。


 1日が終わる頃には、過剰に心配していた自分が恥ずかしくなってしまった。


 このまま何もなけばれば良かったのに、残念だけどそんなに甘くなかった。


 図書館からの帰り道バス停に向かう途中で、俺の目の前に一緒に戦った、八谷君が立っていた。


 「や、やぁ、八谷君、昨日ぶりだね」


 「はい、昨日の夜は本当に助かりました、お陰であの顔の化け物を退治する事が出来ました。


 亡くなった方には申し訳ないですが、半分に近い人の命が救われて良かったです」


 「こっちの方こそ、最後に黒いのが迫ってきた時に助けてくれてありがとう」


 取りあえず、お互いに頭を下げあって、会話が続かないで止まってしまう。


 八谷君の方は何か用があって、来ているはずなのに、なかなか話を切り出して来ない。


 何か話たい事があるなら、早く話を切り出して欲しい、いや、やっぱり何の話か分からないけど、このまま何もなかった事にして帰って欲しい。


 そんな俺の気持ちは通じる事なく、あっさりと八谷君が話を切り出してきた。


 「佐藤さんがウサギ男なんですよね?ら」


 「いや、あ~その‥‥、」


 俺は八谷君のストレートな質問に、しどろもどろになってしまう。


 「そんなに焦らなくても大丈夫です、少なくとも僕には、佐藤さんがテロリストをするような人とは思えないですから」


 「うん、まぁ、信頼してくれてありがとう」


 「人の本性は死に際で分かるものですから、最初の方で力を使わなかったのは、僕を警戒していたからなんでしょうけど、危なくなったらちゃんと力を使ってくれました。


 佐藤さんなら1人で逃げた方が楽だったのに、残っていた人達の事も守ってくれましたし。


 そんな人が、何の罪もない人を何人も殺すはずがありません』


 最初の方は使わなかったんじゃなくて、使えなかったんだけど、今は無駄に否定する必要はない。


 「いや、もっと早く力を見せれていたら、もっと多くの人が助けられたのに」


 「それはそうかもしれませんが、相手の出方や詳細が分からない内から、こちらの情報を与えれば被害は増えていた可能性もありました。


 たらればを言っても、出てしまった結果は変わりません」


 思ったよりも冷静な態度で、八谷君がそう言ってくれ。


 「そういって貰えると、ほんの少しだけど最悪感が薄れるかな」


 「それは良かったです、それで本題なんですけど、佐藤さんは国家の為に働くつもりはありませんか?


 佐藤さんほどの人なら、かなりの厚待遇で迎え入れる事が出来ます。


 もちろん、ウサギ男に対しての指名手配を解除します」


 「八谷君ってそんな事を決められるような人だったのか」


 「佐藤さんの前で恥ずかしいですけど、一応、陰陽庁でそれなり立場にいます


 指名手配を解除させる事くらいなら、簡単ではないですけ可能です」


 俺は八谷君の言葉に少しだけ気持ちが揺らいでしまった。

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